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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第162話:打ち上げと嬉しい交流

 楓の最優秀賞の発表後、従魔大運動会は閉幕を迎えた。

 その後、それぞれで解散になるのかと思っていた楓だが、そうではなかった。


「えぇっ!? 子爵様のお屋敷で、打ち上げですか!!」


 ボルトは自らの屋敷のダンスホールを開放し、そこへ従魔大運動会の参加者を招いての打ち上げを行うのだとか。

 聞けばこの打ち上げは毎年行われているようで、去年も参加したセリシャは笑顔で頷いている。


「おそらくだけれど、カエデさんの周りにはたくさんの人が集まると思うから、気を引き締めた方がいいわよ?」

「……やっぱり、ですか?」


 嫌そうに楓が言葉を返すと、セリシャだけではなく、ティアナとヴィオン、エリンまでもが大きく頷く。


「オーダーメイドについて色々と聞かれると思うけれど、私も一緒にいた方がいいかしら?」

「お、おおおお、お願いします! だって、従魔具店に移動してからのオーダーメイドは、冒険者ギルドのバルバスさんにしか作っていないんですよ~!」


 バルバスのオーダーメイドも、基本的にはオルダナが金額を決めてくれた。

 この場にオルダナがいないことが、楓には非常に悔やまれてしまう。


「分かったわ。みんなもお願いできるかしら?」

「もちろんです、ギルマス!」

「カエデにたかってくる奴らを跳ね返してやるわ!」

「俺も構わない」

「皆さん……ありがとうございますううううっ!!」


 セリシャたちと一緒に行動することを約束し、楓はリディとミリーとは別れてボルトの屋敷へと向かった。


 ボルトの屋敷には既に多くの参加者が集まっており、上位を総なめした楓たちが姿を見せると、彼女たちに視線が集まる。


「よく来てくれたね、カエデ殿! それに、皆様も!」


 楓に声を掛ける機会を窺っていただろう参加者に先んじて、屋敷の主であるボルトが声を掛けてきた。


「先ほどはありがとうございました、子爵様」

「何を仰いますか。今年の従魔大運動会は、過去一の盛り上がりになってくれました。それもカエデ殿のおかげです。こちらこそ、ありがとう」


 お互いにお礼を言い合いながら、ボルトは楓に右手を差し出す。


「私に今年の最優秀賞者をエスコートさせていただけますでしょうか?」


 ボルトの提案に、楓はどうしたらいいのか分からず、横目にセリシャを見る。

 セリシャは笑顔で頷いたので、楓はボルトの手を取った。


「お、お願いいたします」


 ボルトがエスコートを提案したのには、理由がある。

 楓が姿を見せた途端、参加者の視線が向いたように、この場にいる誰もが楓と縁を結びたがっていた。

 セリシャたちがいるとはいえ、中には貴族もいるかもしれない。

 そうなると、彼女たちだけでは楓を守ることが難しくなる。

 そこで、子爵であるボルトの出番だ。

 主催者でもあり、貴族でもあるボルトが楓を守る側にいてくれれば、相手が貴族であっても対抗することができる。

 爵位が上の相手では対応に苦慮する場面も出てくるだろうが、参加者名簿にはボルトよりも高い爵位を持つ者はいない。

 だからこそ、ボルトは自分が楓の盾になるべきだと判断して、入場と同時に声を掛けたのだ。


「最優秀者には打ち上げも楽しんでもらいたいからね」

「ありがとうございます、子爵様」


 ボルトはウインクをしながらそう口にすると、楓も彼の意図が分かり、笑顔でお礼を口にした。

 それからの楓は豪華な料理に舌鼓を打ち、商業ギルドの職員たちと顔を合わせて話に花を咲かせる。


「あ、あの! 少しだけお話をよろしいでしょうか!」


 そんな中でも勇気を出して楓に声を掛けてくれた人もいて、楓も同じ従魔持ちとして交流を深めたいという想いも心の隅にあり、話をすることもあった。

 中にはセリシャたちが楓に行きつく前に追い払ってしまう者もいたが、彼らの多くが素行に問題のある者たちだった。


「従魔大運動会は参加自由ですからね。稀に、ああいった人たちもいるんですよ」


 そう教えてくれたのはエリンだった。

 エリンはセリシャと同じで、何度も従魔大運動会に参加していた。

 だからこそ色々な情報を持っており、常に楓の側にいて色々なことを教えてくれた。


「従魔具店の警備も、今後本格的に考える必要が出てくるんじゃないですか?」

「警備かぁ……そうかもしれませんね」


 エリンの言葉に楓は思案顔になりながらも、大きく頷く。

 自分だけであればピースもいるので大丈夫かもしれないが、店舗には子供であるリディとミリーもいる。

 オルダナがいるとはいえ、彼も腕っぷしが強いわけではないし、荒事になれば彼が怪我をする恐れだってあるのだ。

 そうならないよう、警備については本気で考えなければならないと楓は一向する。


「……ティアナさんとヴィオンさんに、相談してみようかな」


 二人はSランク冒険者なので、ひとところに留めさせるわけにはいかない。

 楓が考えているのは、信頼できる冒険者を紹介してもらえないか、というものだった。


「引退された上のランクの元冒険者なんか、いるかもしれませんね」

「あぁ! そういうの、いいですね!」


 エリンの提案に楓も声を上げ、二人は盛り上がり始める。


「何々、どうしたの?」

「ちょうどいいところに、ティアナさん!」


 そこへティアナが声を掛けると、楓は従魔具店の警備について相談を始める。

 この日、従魔大運動会の打ち上げという場ではあったが、結局は従魔具店についてのことばかりを考えていた楓なのだった。

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