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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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154/168

第154話:従魔大運動会・開幕式

 それから楓はピースの身だしなみを整えたり、彼の故郷であるフェザリカの森へ出かけてかけっこの練習をしてみたりと、準備を行っていた。

 そしてついに――従魔大運動会の当日になった。


「うわー! すごい、こんな会場が出来上がるんだ!」


 従魔大運動会の会場は、北の街道を少し外れた拓けた場所に作られていた。

 小型従魔のかわいい部門や他のビジュアル部門が執り行われる舞台に、速度を競うレース会場、中型や大型になると力を競う会場まで作られている。

 さらに会場の周囲には稼ぎ時だと屋台がたくさん並んでおり、至る所から香ばしい匂いが漂ってきていた。


「うおー! すっげーな!」

「遠くからしか見たことなかったけど、本当にすごいですね!」

「え? リディ君とミリーちゃんは来たことなかったの?」


 従魔大運動会は毎年開催されているようで、リディとミリーが初めて見に来たのだと分かり楓は驚いていた。


「来ても金がないから何も買えなかったからさー。食べたいのに食べれないとか、地獄じゃね?」

「私は孤児院のお手伝いで忙しかったので」

「そうなんだ……よし! それじゃあ今日はみんなで、思う存分従魔大運動会を楽しみましょう!」

「「おー!」」


 リディとミリーには楓からお小遣いを渡している。

 給料とは別で、楓のポケットマネーからだ。

 最初こそ二人とも遠慮していたが、一緒に回れないからという理由でリディが受け取ると、ミリーも感謝しながら受け取ってくれた。


「あ! でも最初は小型従魔部門からだろ? それが終わってからにしようぜ!」

「もちろんだよ、リディ君!」

「うふふ。二人ともありがとう」


 二人の言葉にお礼を伝えた楓は、そのまま一緒に小型従魔の会場へ向かう。

 とはいえ、すぐに競技が始まるわけではない。

 最初のプログラムは開会式だ。


『――あーあー、聞こえるだろうか?』


 するとここで、聞き覚えのある男性の声が拡声器から聞こえてきた。


「この声ってもしかして!」


 小型、中型、大型の会場で三ヶ所あり、それぞれが三角形の四隅に作られている。

 その中央に位置する大きな舞台に、声の主が現れた。


『――今年も従魔大運動会を開催することができ、主催者として嬉しく思う。知らない人もいるかもしれないので自己紹介を。私はボルト・アマニールだ』

「ボルト様!」


 楓は以前、ボルトの従魔である老ドラゴンのカリーナに新たな翼として従魔具を作っている。

 ボルトは楓にとても感謝しており、カリーナは新たな翼で飛び上がり、彼女に空の散歩をプレゼントしたほどだ。


『――多くの従魔が参加し、楽しんでくれるとありがたく思う。それと、今回は新たな翼を手に入れた私の従魔、カリーナも参戦する。大型部門の者たちは、覚悟するようにな! 以上だ!』


 最後に爆弾発言を残して舞台を下りたボルト。


「すごい! カリーナ様も参加するんだ! ……あれ? ってことは大型部門では、カリーナ様とライゴウさんが競うってこと!?」


 大型部門は従魔大運動会の大トリだ。

 これは盛り上がると楓は大興奮で声を上げた。


「リディ君! ミリーちゃん! 私の競技が終わったら、最後の大型部門は一緒に見ましょう!」

「おう!」

「それ以外も是非ご一緒させてください!」

「ありがとう!」


 こうして開会式は終わり、早いところからプログラムが開始されていく。


『――これより、小型従魔のかけっこ部門が始まります。エントリーされている方は、会場へお集まりください』


 拡声器からプログラムの案内が行われ、ピースが参加するかけっこ部門の案内が始まった。


「あ! 二人とも、私たちは行くね!」

「キャキュギル!(頑張る!)」

「姉ちゃんもピースも頑張れよ!」

「応援してます!」


 楓とピースは手を振りながらリディとミリーと別れ、小型従魔のかけっこ部門が行われる会場へ向かった。

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