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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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152/165

第152話:参加に向けて

 翌日。

 楓は一度従魔具店に顔を出すと、オルダナに商業ギルドへ向かうことを告げた。


「おう! 行ってこい! なんならゆっくりして来てもいいからな!」

「ありがとうございます! 行ってきます!」


 オルダナに見送られて、楓は商業ギルドへ向かう。

 通りを歩いていると、人と従魔が共に歩いている光景は変わりないのだが、どこか気合いの入った表情をしているように見える。

 これも従魔大運動会の影響なのかと、楓も何故か楽しい気持ちになっていた。


「あ! おはようございます、カエデ様!」


 商業ギルドに入ると、すぐに受付嬢であるエリンが声を掛けてくれた。


「おはようございます、エリンさん。あの、商業ギルドで従魔大運動会の受付ができるって聞いたんですけど、できますか?」


 楓はそう声を掛けると、エリンは満面の笑みを浮かべて答えてくれる。


「もちろんです! カエデ様とピース君も出られるんですね!」

「実は昨日、従魔大運動会の話を耳にしまして。それで、せっかくだから出てみたいなって」

「小型従魔が参加できる競技もありますので、是非! あ、昨日耳にしたってことは、参加は初めてですよね?」


 エリンの言葉に楓は頷く。


「それでしたら詳しくご説明させてください!」

「でも、お仕事は?」

「他の者に引き継ぎますので、少々お待ちください!」


 そう口にしたエリンはすぐに裏の方へ向かうと、一分と掛からずに戻ってきた。


「それではあちらの部屋へどうぞ!」

「ありがとうございます」


 楓はエリンと、彼女が引継ぎをした職員に会釈をしてから移動する。

 場所は商業ギルドが商談のために開放している部屋の一つで、二人だからか三畳ほどの大きさだった。


「それではまず、参加されるのはピース君でお間違えないですか?」

「キュン!(うん!)」

「そうです」


 ピースの反応だけでも間違いないと分かったが、楓もしっかりと答えた。

 エリンは微笑みながら頷き、三枚の書類をテーブルに広げる。


「開催日は三日後の早朝からになります。その日で小型、中型、大型まで競技を行いますので、場合によっては並行して競技を進めることもあります」

「三日後……意外とすぐなんですね」


 エリンの説明に、楓は頷きながら答えていく。


「小型従魔の競技は三つあるのですが、原則として一匹の従魔が参加できる競技は二つまでとなっております」

「そうなんですね」

「はい。従魔大運動会は従魔のためのイベントですが、思いのほか主の方が盛り上がってしまうことがありまして、多くの競技に参加させたあまりに従魔が倒れることが過去にありました。そのような事態を避けるために、参加競技は二つまでと定めております」


 従魔のためのイベントで、従魔が倒れてしまった。

 これはイベントを主催している者としても本意ではないだろう。

 制限を掛けたくないというのは本音だろうが、従魔のためを思えば制限があった方がいいと楓も納得する。


「分かりました」

「それで、小型従魔の競技内容ですが――」


 小型従魔の参加できる三つの競技。

 一つ目がかけっこ部門。

 名前の通り、従魔の速さを競う部門で、定められたコースをどれだけ速く駆け抜けられるかを競うものになっている。

 二つ目がかわいい部門。

 小型従魔の多くがかわいさを重視した見た目をしていることが多く、その特徴を活かすための部門になっている。

 三つ目が飛行部門。

 かけっこ部門の飛行版で、空に作られたコースをどれだけ速く飛んでいけるかを競うものになっている。


「……空にコースを作るんですか?」

「はい。従魔大運動会に参加しない、飛行ができる従魔に協力してもらってコースを作ります。まあ、紐を飛ばすだけなんですけどね」

「それでもすごいですよ。でもそれなら、ピースが参加できるのは、かけっこ部門とかわいい部門になりますね」


 ピースはリスに似た従魔で、空を飛ぶことはできない。

 自ずと参加部門はかけっこ部門とかわいい部門に限られてくる。


「そうですね。こちらは両方にエントリーなさいますか?」

「どうする、ピース?」

「……」

「……ピース?」


 楓がピースに声を掛けるが、何故か彼は返事をしない。

 どうしたのかと顔を覗き込むと、ピースは頬を膨らませていた。


「どうしたの?」

「……キャッキキギラン!(……カッコいい部門がいい!)」

「あ、そういうことか」

「どうしたんですか?」


 ピースの言葉が分からないエリンは、心配そうに声を掛けた。


「ピースはカッコいい部門がいいみたいです」

「あー、なるほど」


 楓がピースの要望を伝えると、エリンは納得顔のあと、申し訳なさそうに口を開く。


「ごめんね、ピース君。でも、ピース君はカッコよくて、かわいくもあるから、絶対にいい勝負ができると思う! もしかしたら、優勝できるかもよ?」

「……キュウ?(……そう?)」

「私もそう思うな。参加してみない、ピース?」


 エリンの言葉に気持ち良くなったのか、ピースはその気になりながら返事をした。

 そこへ楓も声を掛けると、ピースは腕組みをしながら大きく頷く。


「……キュキュン!(いいよ!)」

「ありがとう、ピース」

「うふふ。それでは、ピース君はかけっこ部門とかわいい部門、こちらの二つへエントリーいたしますね」

「お願いします」


 こうして楓とピースは、従魔大運動会への参加が決定した。

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