第140話:緊張からの解放と鈴音の提案
謁見の間を出た楓たちは、ドッと息を吐き出した。
「き、緊張したよおおぉぉ~!!」
この場にいるのは楓たち異世界組と、ティアナとヴィオン、そして従魔たちだ。
アッシュやレイス、護衛騎士のケイルやミリアは謁見の間に残っている。
だからだろう。楓は見知った者ばかりの中でガクガクと体を震わせていた。
「よく頑張ったね、カエデ!」
「まあ、俺たちは王族がカエデさんを連れて行こうとしたら、実力行使に出るつもりだったがな」
「こ、怖いこと言わないでくださいよ、ヴィオンさん!?」
ヴィオンの言葉に楓は大慌てで両手を横に振っていたが、ヴィオンもだがティアナも本気で実力行使に出るつもりだった。
「私にとって、カエデは姉妹みたいなものだもの! 姉妹を助けるためなら、相手が王族でも関係ないわ!」
「俺にとっては仲間だな。仲間を見捨てるような真似はしたくない」
「うぅぅ。ティアナさん、ヴィオンさん、ありがとうございます!」
二人の言葉が心に染み、楓は瞳に涙を溜める。
「犬っち! カッコよかったよー!」
そこへアリスが楓の背中へ抱きついてきた。
「アリスちゃん!」
「あーしも犬っちに賛成! これからどーしよっかなー!」
楽し気に話すアリスを見て、楓は自分があそこで本音を語れてよかったと思うことができた。
「犬山さん! すごかったです!」
「ご無事でよかったです」
続いて声を掛けてきたのは、鈴音と道長だった。
「有明さんと神道さんも、お疲れ様でした」
「あの、犬山さん! これから少しお話しできませんか?」
「え? 私と? アリスちゃんじゃなくて?」
鈴音の言葉は楓にとって予想外だった。
なんせ楓は、アリスや道長を含めて、彼女らとは召喚された時に初めて顔を合わせたのだから。
「お城を出て外の世界を見てきた犬山さんのお話を聞きたいんです!」
「あ、だったら俺も話を――」
「女子会だから、道長君は遠慮してね?」
楓の話を聞きたいと道長も乗っかろうとしたのだが、彼の言葉を遮るようにして鈴音が口を開いた。
「な! そ、それはないだろう!」
「女性同士でしか話せない内容もあるんだから、当然だよ!」
「ん~? 鈴っちもみっちーも、どーしたの?」
アリスも何が起きているのか理解できず、首を傾げながら口を開いた。
「なんでもないよ、アリスちゃん! さあ、いきましょう!」
「あ、待って! ……ティアナさんも一緒にどうですか?」
本当はヴィオンにも声を掛けたかったが、鈴音が女子会と言った手前、声を掛けることができなかった。
そのことをヴィオンも理解していたのだろう、彼はティアナを見ながら一つ頷く。
「私も参加していいのかしら?」
「ご迷惑でなければ、お願いしてもいいですか?」
「鈴音!」
ついに道長が声を大きくしたが、そこへヴィオンが声を掛ける。
「ミチナガさん、だったか?」
「あなたは確か……ヴィオンさん?」
「覚えていてくれたんだな」
ライゴウのイメージが強かったヴィオンのことを、薬草採取の時に一緒にいた道長も覚えていた。
「こう言ってはなんだが……こうと決めた女性の決意は固いものだ。もしよければ、彼女たちの話が終わるまでは、男同士で話をしないか?」
ヴィオンの提案は、道長にとってもありがたいものだった。
というのも、道長も王城の外の世界に興味を抱いていた。
だが、王城には鈴音がおり、さらに言えば先日見かけた気になる女性の存在もある。
王侯貴族ではないものの、Sランク冒険者という肩書を持つヴィオンとの話は、道長にとっては貴重な情報になるものだ。
「……分かりました。鈴音、アリス。そっちの話し合いが終わったら、こっちに声を掛けてくれるか?」
「分かったわ」
「はいはーい!」
それから女性陣と男性陣は別行動になった。
本来なら王城の中を勝手に歩き回ることはできないが、謁見の前を退出する際にエルデクスからお互いの部屋の行き来は許すと言われている。
ティアナとヴィオンからすれば驚きの内容だったが、鈴音の態度を見るに、彼女や道長のための処置だったのではないかと思えていた。
「それじゃあ改めて、いきましょう!」
元気よくそう口にした鈴音に案内されて、楓たちは彼女に割り当てられている部屋へ移動した。
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