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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第13話:初めての従魔具作り

「……ア、アドバイスをお願いします! セリシャ様!」


 やる気満々ではあるが、作り方など分かりはしない。

 大声でそう口にした楓に対して、セリシャは苦笑しながらもアドバイスを口にする。


「安心してください、カエデさん。頭の中で作りたい従魔具を思い浮かべたら、その作り方が自然と浮かび上がってくるはずです」

「そうなんですか?」


 どうにも抽象的過ぎるアドバイスだったが、それでどうにかなるのがスキルなのだろうと考え、言われた通りにすることにした。


(ラッシュ君が速く走れるようになる従魔具を作りたい! お願い、作り方を教えてちょうだい、〈従魔具職人EX〉!)


 楓がそう強く願うと、セリシャが説明したように、彼女の頭の中には自動的に従魔具の作り方が浮かび上がってきた。

 それは目の前にある材料で作れるものであり、どうやって作ればいいのか、その工程も明確になっている。


「……すごいですね、〈従魔具職人EX〉は」

「作り方が浮かび上がってきたのね?」


 思わず呟いた楓に対して、セリシャが満足気に問い掛けた。


「は、はい! これならラッシュ君が満足できる走りを提供できると思います!」

「アオーン!」

「うふふ。ラッシュも嬉しそうね」


 楓の言葉を聞いたラッシュが楽しそうに鳴き、その声を聞いたセリシャはとても嬉しそうだ。


「それでは早速、作っていきたいと思います!」


 腕まくりをした楓がそう口にすると、テーブルに広げられていた素材を手に取っていく。

 その迷いのない動きを見て、セリシャは満足気に頷いている。


「材料はこんなもんかな」


 楓が選んだ材料のほとんどは、とても高価なものばかりだったが、当然だが彼女がそのことを知るすべはない。

 知っているのはセリシャだけなのだが、彼女は楓を信じているのか、そのことに言及することはしなかった。


「まずはこの二つを一つにして……ん? 一つにする?」


 ここで困惑顔を浮かべながら首を傾げた楓を見て、セリシャが再びアドバイスを送る。


「材料に魔力を込めると、その材料の融合点が分かるはずよ。その魔力量を維持しながら、融合するもう一つの材料にも魔力を込めていき、それぞれが融合点に達したら、重ね合わせればいいわ」

「……ま、魔力を込める、ですか? どうやって?」


 日本では当然だが、魔法とは縁もゆかりもなかった楓である。

 魔力の使い方を知るはずもなく、困惑顔で問い返した。


「カエデさんは魔力を使ったことがないの?」

「は、はい」

「〈従魔具職人EX〉を使っている時も、魔力は使っているはずなのだけれど?」

「え? そうなんですか?」


 魔力を使っている感覚がなかった楓は、驚きの声を上げながら自分の体を見る。


(……そういえば、なんだか体の中がポカポカしているような?)


 楓は体の中に感じたポカポカが大事だと考え、それを魔力だと頭の中で仮定する。

 そして、そのポカポカが体の中を通り、腕を通り、手に持っている材料へ移動するイメージを作り出す。


「……あ。できたかも」


 そう思った直後、頭の中にはそれぞれの材料の融合点が浮かび上がってきた。


(融合点って、水を沸かす時の沸点みたいなものなんだな)


 そんなことを考えながら魔力を込めていき、二つの材料が融合点に達したところで、セリシャに言われた通りそれぞれを重ね合わせてみた。


「おぉっ!」


 すると素材同士がぶつかると同時にぐにゃりと形を変え、二つが一つになってしまった。

 思わず声を上げた楓だったが、従魔具作りはこれで終わりではない。

 魔力を込める方法を知ったからか、楓の頭の中には次の工程が浮かび上がっていた。


「ラッシュ君! 足のサイズを確認させてちょうだい!」

「ガウッ!」


 同意の鳴きだと判断した楓は、すぐにラッシュの足に触れてサイズを確認していく。


「ガウゥ~! ガウゥ~!(まだかな~! まだかな~!)」


 楽しそうに鳴いているラッシュに思わず微笑みながら、楓は融合させた材料をラッシュの足のサイズに合わせて加工していく。

 魔力を込めている間は自分の手で自由自在に形を変えることができるようで、楓は手際よくデザインも決めてしまう。


「よし、形はできた! あとは最後の仕上げだよ!」


 汗を拭いながらそう口にした楓は、最後に選んだ材料を手に取った。


「それは魔石ね。必要な属性の魔力を込めることで、特別な力を発揮させることができるわ。必要な属性があれば、言ってくれればこちらで――」

「いいえ! 大丈夫です、セリシャ様! 私だけで、作らないといけないので!」


 魔力に備わっている属性は、生まれながらに決まっていることがほとんどだ。

 稀に後天的に別の属性を手に入れることもあるが、それはほんの一握りの特別な運命の下にある者か、特別な道具を手にしたものくらいだろう。

 故に、セリシャは魔石の加工だけは手伝おうと内心で考えていたのだが、楓は手伝いを断った――否、必要としなかった。


「この魔石に込める属性は、風だわ! 大地を誰よりも速く駆けることができる従魔具を、ラッシュ君に作ってあげるんだから!」


 楓はそう口にしながら、両手で魔石を包み込み、魔力を込め始めた。

 すると魔石からは強烈な緑色の光が放たれ、その光が指の隙間から漏れ出ているのが確認できた。


(嘘、冗談でしょう!? この子、いったい何者なの?)


 魔石に魔力を込めるには、相応の魔力量が必要になってくる。

 楓は既に〈従魔具職人EX〉で魔力を使用し続けており、材料同士を融合させる時にも同様に魔力を使っていた。

 それも、高価な材料であればあるほど、融合点に達するまでに必要となる魔力量も多くなるのだが、それをしてもなお、楓の魔力は底を尽いていない。

 楓はいったい何者なのか、そしてこれから何が起きるのか、その瞬間を目に焼き付けるべく、セリシャは自然と興奮で笑みを浮かべていた。


「いっけええええぇぇええぇぇっ!!」


 楓がそう叫んだ直後、魔石は今日一番の強烈な光を放ち、彼女が注ぎ込んだ全ての魔力を吸収した。

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