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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第111話:まさかの珍客登場

「――ありがとうございましたー!」


 従魔具店を訪れた客を見送った楓は、元気よく声を上げた。

 バルバスの従魔、ピーチに従魔具を作って以降、最初は冒険者の客が一気に増えた。

 それから数日が経つと、冒険者を通じて楓たちの従魔具店の噂が広がり、冒険者以外の客も増え始めた。


「リディ君から休憩に入ってね! その次にミリーちゃん、お願いできるかな?」

「「はーい!」」


 忙しくなる前は同時に入れていた休憩も、今では交互に入ってもらっている。

 残業なし、休憩中に急な対応もなし、そう決めているからこそ、楓は休憩の順番や人数には気を遣っていた。


「それにしても、急にお客様が増えましたね、カエデさん」

「バルバスさんや冒険者の人たちには感謝だね」

「まあ、これはこれでカエデの予定とは違っちまうんじゃねえか?」


 ミリーの質問に答えた楓だったが、そこへオルダナが声を掛けた。


「オーダーメイドができるよう、なるべく目立たないようにって言っていたが、今ではバルフェムで一番の注目を浴びている従魔具店になっちまったからな?」

「あははー。まあ、一番の注目を浴びているかは分かりませんが、それで従魔たちが喜んでくれているなら、それはそれで正解じゃないですか?」

「全く。お前は本当に、従魔ファーストって奴なんだな」

「当然ですよ! オルダナさんの大事な従魔具店を、そのために改装したんですからね!」


 胸を張ってそう口にした楓に、オルダナは嬉しそうに笑った。


「さて。それじゃあ、ミリーちゃん。カウンターはオルダナさんに任せて、私たちは少しだけ店内の掃き掃除を――」


 ――カランコロンカラン。


 楓が掃除を始めようとしたタイミングで、従魔具店の扉が開いた。


「いらっしゃいませ! 従魔具をお探しでしょうか?」


 入ってきたのは年若い男女の客だ。

 だが、目深にフードを被っており、目元が見えない。

 少し怪しい感じもあったため、ミリーに任せるわけにはいかないと思った楓が接客に立つと、男性客の方が答えてくれる。


「はい、そうなんです」

「従魔はお連れではないんですか? 店内は従魔のために広く作っておりますので、大型でなければご一緒しても大丈夫ですよ?」


 即座にそう答えた楓だったが、男性客は困ったように女性客の方へ振り返る。


「……あの、どうかいたしましたか?」


 何か粗相をしただろうかと思った楓だったが、男女の客の口元が何故か微笑んでいるのに気がつく。


(あれ? なんだろう。どこかで見たことがあるような?)


 そう思ったのは、男性客だけではなく、女性客に対してもだ。

 ここで「お会いしたことは?」と聞いてみたい気持ちもあったが、楓にとってここは異世界だ。昔の知り合いなどいるはずがない。

 気のせいだと思い直し、接客を続けようとした――その時だ。


 ――カランコロンカラン。


「ちーっす! 来ちゃったー、犬っちー!」

「…………ええええぇぇええぇぇっ!? お、大嶺さああああん!!」


 異世界へ召喚された時、その場には四人が召喚されていた。

 その中の三人は知り合いで、楓だけが他人だった。

 故に、楓は自分が巻き込まれた側だと思い、王城から一人で出てきたのだが、その三人の中の一人である大嶺アリスが、突然目の前に現れた。

 それはもう、驚くしかなかった。


「どどどど、どうしてここにいるんですか! え? 神道君と有明さんは!」

「二人は来てないよー! あーしだけ来ちゃったー!」

「……だだだだ、大丈夫なの? え? 本当に大丈夫なの?」

「だいじょーぶい! だってー、ここに保護者がいるしねー! えい!」

「こ、こら!」


 楓の質問に答えながら、アリスは目にも止まらぬ身のこなしで男性客の背後に回ると、目深にかぶっていたフードを外してしまった。

 そこに現れたのは、美しい金髪が特徴的な童顔の男性――レイス・フォルブラウンだった。


「……………………ええええええええぇぇぇぇええぇぇっ!?」

「……や、やあ、カエデ様。お久しぶりです」

「お久しぶりでございます、カエデ様」

「……え? あの、えっと、その……え、えぇぇ~?」


 あまりの驚きに何も言えなくなってしまった楓。

 レイスに続いて挨拶をしてくれた女性客もフードを取ると、そちらはレイスの護衛騎士であるミリア・カリサレスだった。


「ねえねえ、犬っち! すっごいお店だね! 色々教えてよー!」

「……えっと、ごめんね、大嶺さん。私、今めちゃくちゃ混乱してるわ」

「本当に申し訳ない、カエデ様。できればどこか静かなところで話がしたいのですが、いいでしょうか?」


 グイグイと来るアリスとは違い、レイスは本当に申し訳なさそうに声を掛けた。

 王族なのだからもっと堂々としていればいいと思いつつも、オルダナたちに迷惑は掛けられない。

 どうしたものかと考えていると、そこへオルダナから声が掛かる。


「リディには別のところで休憩を取ってもらって、作業場を使ったらどうだ?」

「でも、オルダナさん……」

「何か訳アリなんだろう? だったら、目立つ店内にいてもらうわけにはいかんだろう」

「わ、私、リディ君に話してきます!」


 オルダナの提案を受けて、ミリーが作業場へ走って行く。

 するとすぐにリディも出てきてくれ、作業場を使うよう言ってくれた。


「休憩中って言っても、一人だとやることもないしな。その代わり、働いた分はお給料を上げてくれよ!」

「……うん、分かった。ありがとう、リディ君」


 こうして楓は、突然の来客であるレイス、ミリア、そしてアリスと共に作業場へと向かった。

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