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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第101話:王城での会話⑥

 ◇◆◇◆


「――か、完成しました!」


 王城の薬師がそう声を上げると、壁際で薬の完成を今か今かと待っていたアッシュとレイスが壁から背を離す。


「すぐに母上へ!」

「お願いします!」

「かしこまりました!」


 アッシュの声とレイスの願いを聞き、薬師たちは薬を大事に抱えながら調合部屋を飛び出していく。

 何があるか分からないと、薬師たちには近衛騎士がついていった。


「……はあぁぁ~。ひとまずはこれで安心なのか?」

「そうだと思いたいですね」


 大きく息を吐き出したアッシュの言葉に、レイスは苦笑しながら答えた。

 今回調合された薬は、万病を治すと言われている妙薬だ。

 もしもこれで治らなければ、王妃の病を治す術がなくなったと言わざるを得ない。

 王妃の部屋には王子である二人も入ることができない。これは陛下の命でもある。

 今の陛下は、誰を信じ、誰を疑えばいいのか、分からなくなっていた。


「しかし、あのザッシュとかいう冒険者は、なんだったんだ?」


 少しでも気を紛らわしたかったのか、アッシュは急に話題を変えてきた。

 この話題にはアッシュの護衛であるケイルが、せきを切ったかのように口を開く。


「全くですよ、殿下! あの場で打ち首にしてもよかったのではないですか!」

「声を荒らげるな、ケイル。俺だってそうしたかったが、冒険者たちの手前、そうできなかったのは理解しているだろう」

「それは、そうですが……」


 ザッシュは最初、王家の依頼を聞いて即座に抜けると騒ぎだした。

 それはまるで最初から受けるつもりがなかったかのような、即断だった。

 もちろん、アッシュたちとしても詳細を伝えて断られることも覚悟の上だったのだが、相手はSランク冒険者だ。実力は疑いようもない。

 故に、なんとか参加してもらえないかと頼み込んだ。

 するとザッシュは、アッシュたちの足元を見るかのように報酬額を釣り上げてきた。

 しかし、一人の報酬額を上げれば、他の冒険者たちの額も上げなければ不満が出てきてしまう。

 そう考えていたところに、ヴィオンが間に入ってくれていた。


「あの場はなんとか収まったが、まさか夜になってヴィオンに斬りかかるとはな」

「冒険者同士のいざこざでしょう。ですが、我らが王国の騎士を斬ったのだけは許せません!」


 最初の騒ぎでは打ち首はもちろん、捕らえることも難しかっただろう。

 しかし、騎士を斬られたのであれば話は別だ。

 幸いなことに、背後から斬りかかられたヴィオンも従魔であるライゴウのおかげで無傷であり、その後はザッシュを制圧しようと奮闘してくれた。

 だが、逃げられてしまった。まるでこの場にいなかったかのように、ザッシュは目の前から消えてしまった。


「……奴のスキルなのか?」

「分かりません。ですが、王国内には手配書を配らさせておりますので、しばらくすれば見つかるかと」

「だといいんだがな」


 そこまで話をしたアッシュは椅子に深く腰掛けて目を閉じる。

 今日にいたるまでの疲労を思えば、当然の行動だろう。


「……ザッシュが、ヴィオンに逆恨みしなければいいんですが」


 するとここで、レイスがおもむろにそう口に開いた。


「ですがレイス殿下。あれは冒険者同士のいざこざですよ?」

「そのいざこざを招いてしまったのは、僕たちだろう? ならば、心配するのは当然じゃないかな?」

「それは……はい」


 どうにもケイルの冒険者に対する態度が気になってしまうが、レイスは話を進めていく。


「今までの話を聞いていると、ザッシュはヴィオンより自分の方が強いと思っていました。そして、結果は違った」

「あの態度です。ザッシュは鍛錬を怠り、ヴィオンは自らを高めていたのでしょう」

「それだけならいいんだけど、加えて今回は従魔具を新しくしていたはずだよ」

「ふむ……レイスはザッシュが、ヴィオンを追い掛けてバルフェムへ向かったと考えているのか?」


 レイスが何を言いたいのか察したアッシュがそう口にした。


「はい。ヴィオンだけではなく、従魔具を作った従魔具職人がもしも狙われるようなことがあれば、王国にとっては大きな損失になってしまいます」

「確かにな。ボルト・アマニール子爵の老ドラゴンに翼を与えた従魔具職人と同じ人物であれば、なおのこと守らねばならんか」


 アッシュの言葉を聞いたレイスは、ニコリと笑いながら立ち上がる。


「その件に関して、僕が動いてもいいでしょうか?」

「構わんが、いいのか?」

「はい。それに、バルフェムにはカエデ様もいらっしゃいますし、近況を確認するにはちょうど良いかと」


 レイスの言葉にアッシュは思案顔を浮かべるが、すぐに一つ頷いてから口を開く。


「なるほどな。……分かった、任せる」

「ありがとうございます。行こう、ミリア」

「はっ!」


 こうしてレイスは、大義名分を得て楓の近況を調べることが可能となった。


(アマニール子爵の老ドラゴンに、ヴィオンの従魔ライゴウ。この二匹に従魔具を作ったのがカエデ様だとすれば、お礼を伝えなければならないな)


 そんなことを考えながら、レイスとミリアは調合部屋をあとにした。

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