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第1話 拾い物は腹を満たす魔道具

割とありそうな設定ですが思わず書き始めてしまいました。。。

エタラないようがんばります!

岩壁に反響する轟音と、金属がぶつかり合う甲高い音が交錯していた。

巨大な岩甲竜が最後の抵抗とばかりに尾を振り回し、石床を砕く。粉塵が舞い、視界が白く霞む。


「リーダー、右から来る!」


エルフの弓使いが短く叫び、矢をつがえる。

その声に応じて、赤毛を後ろで束ねた女剣士――クランリーダーが剣を構え直した。


「分かってる! 僧侶、前に!」

「はーい」


のんびりとした返事と共に、がっしりした体格の僧侶兼盾役が前に出る。大盾が尾の一撃を受け止め、鈍い衝撃音が響いた。

魔法使いが詠唱を終え、青白い雷光が竜の首筋を貫く。


「今だ!」


リーダーの剣が閃き、岩甲竜の動きが止まった。

数秒の静寂の後、巨体が地面に崩れ落ちる。


「ふぅ……やっと倒れたか」


シーフが額の汗を拭い、軽く伸びをする。

魔法使いは杖を下ろし、周囲を見回した。


「……宝箱、出るはずよね」

「そうだな。あのサイズの魔物だ、何かしら置き土産はあるだろう」


リーダーが剣を肩に担ぎ、瓦礫の向こうを覗き込む。

やがて、崩れた岩の陰から石造りの台座が現れ、その上に古びた宝箱が鎮座していた。


「お、あったあった」


シーフが駆け寄り、罠を確認する。

「……よし、開けても平気」


ギギギ……と軋む音と共に蓋が開く。中には金貨や宝石ではなく、黒く平たい板状の物体が一つ。

「……何これ?」


僧侶が首をかしげる。

表面はつるつるで、中央に小さな魔石をはめ込むスロットのような窪みがある。


「武器でも防具でもないな。魔道具か?」


魔法使いが手に取り、光にかざす。


「魔力の流れは感じるけど……用途が分からない」

「面白そうじゃない。セーフエリアで試してみようぜ」

シーフが笑い、宝箱の中身を袋にしまった。


ダンジョンの奥、魔物が入れない無人のセーフエリア。

壁には淡く光る鉱石が埋め込まれ、空気はひんやりとしている。


5人は荷物を下ろし、簡易の腰掛けに座った。

「さて……これ、どうやって使うんだ?」


リーダーが黒い板をテーブル代わりの岩に置く。

魔法使いが魔力を流し込むと、板の表面に光が走り、見慣れない文字と料理の絵が浮かび上がった。


「……食べ物の絵?」

エルフが眉をひそめる。


「“注文”“支払い”……って書いてあるな」

魔法使いが指で文字をなぞる。


「支払いは……魔石?」

僧侶が袋から竜の討伐で得た魔石を取り出す。


「試してみようか」

魔石をスロットに入れると、ふわりと光が包み込み、画面の端に数字が現れた。


「……なんだ、この数字は」

シーフが首をかしげる。


「魔石が……数に変わった?」

魔法使いも不思議そうに画面を覗き込む。


「価値を数で表してるのかもな」

リーダーが腕を組む。


画面には料理名と数字が並んでいる。

「カツ丼……ラーメン……オムライス……聞いたことないな」

エルフが首をかしげる。


「お腹空いたし、どれでもいいよ〜」と僧侶。

「じゃあ……これだ!」

リーダーが“カツ丼”を選び、注文ボタンを押した。


数分後。

空間がゆらりと揺れ、淡い光が集まって人影を形作る。


現れたのは、見慣れない服装の青年だった。

背中には不思議な箱を背負っている。


「……誰だ?」

リーダーが剣に手をかける。


「ルーベルイーツでーす!」

軽い調子の声に、5人は一瞬きょとんとした。


「何者だ。どこから来た」

魔法使いが警戒の視線を向ける。


「えっと……料理をお届けに参りました」

青年は背中の箱を軽く叩く。


「注文を受けて、ここまで」

リーダーは目を細め、低い声で言った。


「もし毒が入ってても無駄だぞ。私たちには効かない」

青年は苦笑し、「そんな物騒なもん入れませんって」と返す。


彼はゆっくりと箱を開け、中から湯気の立つ丼を取り出した。

香ばしい匂いがセーフエリアに広がる。


「……いい匂い」

エルフの表情がわずかに緩む。


一口食べたリーダーが目を見開き、「なにこれ……うまっ!」と叫ぶ。

魔法使いは「魔力効率がいい……いや、これはただ美味しいだけか」と苦笑。

僧侶は「これ、毎日食べたい〜」と頬を緩め、シーフは「他のも頼めるのか?」と端末を覗き込む。


セーフエリアの片隅で、簡易宴会が始まった。

青年は呼び出しから24時間以内しか滞在できないと説明し、短い時間ながらも5人と談笑する。

食事が進むにつれ、警戒心は薄れ、笑い声が響く。


「また頼もうな」

リーダーの言葉に、青年は笑顔で頷いた。


やがて光に包まれ、その姿は消える。

残された5人は端末を見つめる。


魔法使いが静かに呟いた。

「これは……ただの配達じゃない。もっと調べる価値がある」


こうして、彼女たちと“特別な配達人”との物語が始まった。


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