プロローグ
『賞』に初めて応募してみました。
その為にノクターンノベルズで投稿してたR18版『悪を斬る女神の淫らな夜』をR15版で再構成しています。
作者は同じなので、盗作では無いです。
何とか書きすすめますので、宜しくお願いします。
ルヴェンディア近郊、霧のかかる森ダークウッド。その入口にほど近い小村『レインフォルス』は、薄明かりの中でも穏やかな生活感を漂わせていた。その村の中心に佇む酒場『ランタン亭』。今宵も山仕事帰りの男たちが喧噪を響かせ、粗野な笑い声と酒の匂いが渦巻いていた。
だが、その場の空気はひとりの女の登場で、凍りついた。革のロングブーツが床を鳴らし、妖艶に揺れ曲線美を強調するビキニアーマー。黒曜石のような髪は腰まで流れ、露出した肌は戦場の女神のように艶めいていた。彼女の名はアリシアン。
「ふふっ、随分と賑やかねぇ……。いい香りもしてきたし、悪くない場所だわ」
その美貌に、場の全員が一瞬、呼吸を忘れる。
「おい、お嬢さん。こんなとこで迷子かい? ひとりなら……俺があっためてやろうか?」
下卑た笑みと共に現れたのは、酔った中年の男。脂ぎった顔に歪んだ歯、手には既に空になったジョッキ。だが、アリシアンは、一瞥さえくれなかった。
「……ごめんなさいね。男には興味ないの。特に、下品で臭うタイプは嫌いなのよ」
「なっ……!」
男の顔が真っ赤に染まる。笑い声が酒場に広がる中、アリシアンはカウンターへ歩み寄る。
「看板娘さん、何か食べられるものをお願いできるかしら?」
声をかけた相手、若い女給が目を見開いたまま頷く。透き通るような肌に、柔らかな栗色の髪。おそらくこの村一番の美女だっただろう。だが、目の前の傭兵に圧倒され、視線を逸らせない。
「す、すぐに……温かいシチューと、焼きたてのパンをご用意します……っ!」
「ありがとう。優しそうな子ね。ふふっ、可愛いわぁ」
頬を赤らめる看板娘。だがその柔らかな空気は、再び破られる。
「てめえ……いい気になってんじゃねえぞ……!」
さきほどの男が、今度は二人の仲間を連れて戻ってきた。
「俺を恥かかせやがって……この女、ぶん殴ってやらねえと気がすまねえ!」
アリシアンは、シチューの香りをくんくんと嗅ぎながら、呆れたように言った。
「……これだから男は嫌いなのよ。話が通じないんだもの」
その瞬間、ひとりがアリシアンの肩に手をかけた。
刹那、空気が変わった。
次の瞬間には、彼の身体は天井すれすれまで宙を舞い、派手な音を立てて背中から床に落ちた。
「いっ……たぁぁ……!」
酒場の空気が凍りつく。
「な、なんだコイツ……! 殺してやるっ!」
刃が閃いた。男たちはナイフを抜き、アリシアンに襲いかかろうとした。
だが、アリシアンはそっと唇を動かす。
「ディメンション・ゲート」
空中に漆黒の裂け目が生まれた。そこから、血のように紅い光を放つ巨大なハルバードが姿を現す。
「紹介するわ……ブラッド・ハーヴェスター。触れたら最後、あなたの武器なんて、飴細工よ」
男たちは一瞬、怯んだ。だが酔いの勢いが、それを打ち消す。
アリシアンは動かない。ただ、ハルバードを一閃。
「ッ……!? う、嘘だろ……っ!?」
ナイフの刃だけが、三本、空中で煌めきながら斬り裂かれていた。その一撃で、男たちの武器は根本から両断され、地面にカランと転がった。
「……泣きながら逃げる準備はできてる?」
数秒の沈黙の後、男たちは叫び声を上げ、酒場の戸を蹴破って逃げていった。
「ひっ……助けてくれぇぇっ!」
静寂。その中で、アリシアンはふぅとため息をつき、看板娘の方へ向き直る。
「ごめんなさいね、料理の前にこんな騒がしくしちゃって。冷めてなければいいけど」
「あっ……だ、大丈夫です! あの……すごかったです……」
「ふふっ、ありがとう。……あなた、名前は?」
「リーナ……です」
「いい名前ね、リーナ。……私、アリシアン。少しの間、この辺りで仕事する予定なの。よろしくね」
女神のような微笑みに、リーナは胸の鼓動が速くなるのを感じた。そして、アリシアンは席につきゆっくりと、食事を始めた。