6話 学校
俺はミアさんとの交信後に寝転ぶと
そのまま寝てしまったようだ
眠り着いているとまどろみの中で母親の声が聞こえてくる
「………さ こんな………で…………か…ひ…よ」
「うぅ…」
「ほら 寝ぼけてないで起きなさい」
母親がゆさゆさと身体を揺らしながら声をかけてくる
次第に意識がはっきりしてくると俺は母親に返事を返す
「お母さん おかえり」
「ただいま 幸正に話があるからご飯食べたらね」
「うん」
話ってなんだろう? 役場に行ったことに関係してるとは
推測できるのだがはたして…
そのあと家族3人で夕ご飯を食べる
今夜は煮物と味噌汁と白米だったりする
この世界は昭和初期の文明レベルとは言え
別に戦争をしているわけでもなく
人々の暮らしは比較的安定はしているのだ
食糧不足などもそんなに深刻にはない
ただし国民の習学レベル等は
さすがに前世に比べれば劣るところだが
幸い母親も父親も読み書きや簡単な計算は出来ている様子だった
食事を終えたあと俺は父親と母親の迎に座りながら話を聞く
「お父さん達 さっき役場に行ってきたのは理解はしているよな」
「はい それに関係していることですか?」
「そうだ 俺も美幸もびっくりしていて少し戸惑っている」
「えぇ…そうですね いつかはこうなる社会になるとは思ってましたけど」
「そうだな いつかは…と思っていたな 俺も」
二人の会話を聞く限り社会システムの変更の話のようだが
どんな話なんだろう? 俺は首をかしげてしまう
「あ ごめん 俺たちが混乱していてちゃんと話せてなくて」
「それで…お父さんもお母さんもなにに対して?」
しびれを切らして俺は二人に聞いてみると
母親の美幸の方が落ち着きを取り戻しつつ話を始める
「来年から7歳から15歳までの子ども達は
義務教育にかわるみたいなの」
「そうですか 学校ですか はぁ」
義務教育がスタートだったのか
めんどくさいなと思ってしまいため息を漏らしてしまう
「幸正 あなた いま めんどくさいと思ったでしょ?」
母親が俺を睨みながらそう言う
「えっ? その はい ごめんなさい」
「まぁ、いいわ 国としては読み書きや計算出来る国民の比率を
増やしたいみたい それと魔法の使い方
迷宮で生き残る術など将来の仕事に関わるようなことも
教えていきたいという方針みたい」
「わかりました そうすると畑仕事等の手伝いは
放課後になると思うのですが」
「そうだな 幸正が学校に行ってる間は手伝いは
学校から帰ってきてからになるだろう」
父親の正太がそう答える
「わかりました 朝と夕にお手伝いします」
俺がそう答えると二人とも嬉しそう羅しつつも
思うところがあるのだろうか正太が俺の顔を見ながら
話し始める
「その…まぁ…お前に俺たちの家業…農家だが…継いでほしいとは
思ってないから…お前の人生だからな」
父親のその言葉を聞いて泣きそうになる
前世では親に迷惑かけていたから今世では親孝行したいとは思ってる
「お父さん お母さん…もし、農家でなくお金が稼げる仕事に就けるなら
喜んでくれますか?」
俺のこの言葉を聞いて二人とも心配そうに言葉を返す
「幸正 あなた 危ない仕事も考えているの? 冒険者やハンターは
国からの支援もあるしエリート部隊に所属できれば
稼ぎはあるでしょうけど…わたしはそこまで望んでないから
元気でいてくれたらいいからね」
「美幸の言うとおりだぞ 俺も美幸も才能がなくて
農業に就いたけどハンターのこともある程度は知っているつもりだ
国からの支援はあるにしても危険と隣り合わせの仕事になる
それにな…俺たち20代後半でやっと授かること出来た子どもなんだから
危険なことはして欲しくはないんだよ」
二人の気持ちもわかる
はじめての子どもで、しかもこの国にしちゃ遅めの出産だったわけだから
なおさら大切にされているのは痛いほどわかる
「ぼくはお父さん達にも楽させてあげたいと思っているから
親が生きているうちに親孝行しないと後悔するから」
「「幸正」」
二人ともちょっと驚いて俺を見る
あ、やばいか 7歳の子どもが言うことじゃなかったか
俺がそんなことを考えていると
母親が優しく微笑みながら
「わたしたちもまだまだ元気だからね ありがとうね」
「その…なんだ…親孝行したいというお前の気持ちはありがたいけど
危ないことはしないでほしい」
「はい 気をつけます」
両親と会話を終えて風呂に入り床につくのだった