85話 記者会見 1
夕方まで皇室関係者は慌ただしく動いていた
そして屋敷内に設けられた会見の場に
俺たち4人と
陛下、皇太子殿下夫妻、母親の美幸、美穂の育ての親の絵美が
並ぶように座り向かい側に数台のカメラと
新聞記者などがずらりと並ぶ
内閣総理大臣と官房長官も脇の方に立っていた
時間になり官房長官が司会進行役となり会見が始まった
「このたびは本日正午過ぎに上空で起こった
現象について月皇陛下から直々にご説明があるとのことで
このような場を設けさせていただきました
記者の方々の質問については後半にて
時間を割いておりますのでくれぐれも
ご無礼のないようにお願いします
それでは…月皇陛下にマイクをお渡しいたします」
官房長官がマイクを陛下に手渡すと
陛下は咳払いをしてから一同をみたあと
「此度の件についてだが…結界魔法については知っておられるか?」
陛下がそう記者達に問いかけると
一人の記者が代表として答える
「はい 魔の森の結界もそれに当たると存じております」
「うむ 魔の森の結界も結界魔法
そしてその効力を維持させるために我が一族が
結界強化を数年単位で行っていることも周知の通り」
記者達は無言で頷く
「ならば…聖魔法を使うことが可能なら
結界魔法は任意で使えることになるのはわかるな?」
「はい やはりあの虹色の光は結界が発動したと言うことなのでしょうか?」
「うむ ただし、この国全土から目撃情報があると言うこと
その意味は理解出来るか?」
「それは…この国全域を覆う結界でしょうか
それではあまりにも無茶苦茶で…いくらなんでも…あり得ないと
わたしたちは考えました」
そこで陛下は予想どおりだなと言う表情をして
ため息をつく
「本当なのですか?」
陛下のため息に一人の記者が口を開く
「信じられないのも無理もない
普通じゃあり得ぬことなのだから
普通じゃ…な ただし、普通じゃなければどうだ?」
陛下が俺たちを見る
「先の結界強化をやってのけている
加賀幸正ならびに樹美穂の両名の存在がここにいる」
記者達が俺たちを見て信じられないように見つめてくる
「先の模擬戦の結果でもまだ信じられぬということだろう」
記者達が俺たちを見る目を見て陛下がそう呟く
「ならば 幸正 おぬし 一昨日のダンジョン55階層の様子は
録画しておるだろう? おぬしならその辺は抜かりないだろう」
「はい ミアさんには録画もしておいて貰ってますので
ちょっとミアさんに聞いてみます」
俺はミアさんに念話を送る
「ミアさん 今どこにいます?」
「あら 悠 いま 家に戻ってるけど誰もいないのね」
「お昼にやらかしたことでいろいろ…それでこちらに来て貰えます?」
「わかったわ」
ミアさんが返事を返してくるとすぐ部屋に瞬間移動でやってくると
「きたわよ どうしたの?」
それを見た記者達
総理と官房長官も驚いていたが気にせず
「一昨日 ぼくたちの戦闘シーンとか録画あるよね」
「ありますよ それをどうするの?」
「この場にいる記者さん達に見せて欲しいんだけどいい?」
「はーい 行きますね」
ミアさんはウインドウを空中に展開させると
一昨日のぼくたちの戦闘シーンを再生させる
記者達はそれを食い入るように見ていて
すべてを見終わったあと
全員が沈黙してしまった
しかし仕事だと思い沈黙を破り口をひらく記者
「この映像に映っているのは…そちらの4人でしょうか
年が違うようにみえます」
当たり前の質問だ
変身した状態での戦闘だったわけだから
「幸正 美穂 未来 芽衣 ここで変身してくれぬか?」
陛下がそう尋ねてくるとぼくたちは更衣室を
アイテムボックスから取り出して中に入り数秒
記者からはカーテンの中が光っただけしか見えてないだろうが
変身し終わり更衣室から出てくると
記者達が信じられないようなものを見てるような顔になる
「ご覧の通りじゃ 見ての通り美穂と未来は
わが一族の血筋だ
そして二人が聖魔法で結界を発動させたと言うことになる」
「悠 お昼のやらかしなら…わたしも録画してあるから
それも再生させようか?」
「えっ? ミアさん 近くにいたんです?」
「悠の居場所ならどこにいても録画出来るから わたし」
それを聞いた未来 美穂 芽衣の3人はミアさんを見て
驚いてしまっていた
「そ、そうなんですね 録画してあるなら助かりました
再生お願いします」
「深愛様 助かりました」
「いえいえ」
ミアさんはお昼の聖なる結界発動シーンを
ウインドウに再生させていく
記者達はそれを見てますます言葉を失う
「見ての通り 結界魔法である」
記者の一人がそれでも言葉を振り絞るように声を出す
「この結界はどんな意味で張られたのでしょうか」
俺は記者の質問に答える
「大きな目的は海の魔物を追いやるためです」
「と…言いますと…この結界の範囲は海まであるのですか」
「はい 西は魔の森の結界近くまで張りました
そして東 海の方ですが…こちらも数千キロ先まで張りました」
「………」
「そして海の安全を確保するためです
海にいる魚を捕って食材として使うためでもあります
現状 魚は川魚は食べることはあるようですが
海の方は漁が出来るほど安全ではないと思います」
「確かに…ダンジョンにも水の階層はありますが
そちらはどうなのでしょう」
「ダンジョンも陛下からお聞きした限りだと
冒険者のレベルも低いようですしとてもじゃないけど
気楽に食材としてダンジョンで捕るのは
難しいと言われました
そこも改善させるつもりではありますが
それはぼくから言及することではないので
担当者にお聞き下さい
脱線しましたが海が安全になれば
普通の魚も捕れるようになるはずだと思います」
「なるほど わかりました
しかし 魚料理と言われましても
焼き魚や煮魚ぐらいしか思い浮かべることが出来ないのですが…」
記者が魚を思い浮かべてもピンとこないようだった
そこで俺は母親と絵美とゆかり妃殿下を見る
「ここからは…わたくしが話させていただきます」
ゆかり妃殿下が口を開くと記者達がそちらを見る
「ゆかり様がなぜここで?」
「幸正が魚にこだわっている理由について説明するためです
その前に皆様方には今からお出しするものを
試食して貰います よろしいですか?」
記者達が頷くと
母親と絵美がマグロカツやえびやイカフライ
そしてマグロ丼を記者達に渡していく
「これは?」
「それはマグロを揚げたものです 他にもえびやいかもですが
ただし、ここにある材料は55階層でとれた
ギガントトゥーナスやダイオウイカ
ギガントロブスターになりますが
普通のマグロやえびやいかでも同じです
まずは食してみてください」
ゆかり妃殿下が促すと記者達は一斉に食べ始める
「「「「「………」」」」」
「こんな料理 はじめて
焼いたり煮たりする以外にも料理方法あったのか
そして…このどんぶりは…生でしょうか?」
「そうです しかし 生をそのまま食すのは危険です」
「はい だから焼いたり煮たりが基本に」
「ここでも聖魔法が使われてます」
「「「「「えっ?」」」」」
記者達が驚いてしまう
そりゃそうだろう 普通 こんな使い方しない
「浄化 除菌 除毒と言った聖魔法を使い
生で食べれるようにしたのがそれです」
「「「「なるほど」」」」」
そこで陛下がたまらず口を開く
「マグロ丼はうまかった 赤身のさっぱり感
トロの脂 そしてトロの中でも最高級の大トロは格別
わしは思った ギガントトゥーナスを狩れるような冒険者を
育てることと聖魔法を使える聖職者を増やし
聖職者以外にも職業として確立させることも出来ないかと」
「それは…生で食べることを考えた場合
浄化 除菌 除毒と言った工程を行えるものが
魚屋にいれば生も提供可能になるだろう?」
「腐るのはいかがするのでしょうか」
「腐敗対策は氷魔法を使えるものがいれば冷凍出来るはず
いずれは魔法を使わず冷蔵と冷凍を行える
道具も開発されることを期待しておる」
俺は前世の記憶を辿り陛下に話しかける
「陛下 失礼します 普通の魚であれば
寄生虫は60℃もしくはマイナス20℃での冷凍で1日凍らせれば
死滅されると言われていますので
冷凍庫が実用化されれば…普通の魚なら…
魔物の方は聖魔法のほうが安全でしょう」
「ふむ ならば海で安定して漁が出来るまでに
それらの道具開発も急がさねばならぬな
それと同時に冒険者の育成、聖魔法使用者の育成も先決じゃな
内閣総理大臣 いいな?」
「はい…」
ゆかり妃殿下がそこで再び口を開き
「ごほん、マグロ丼につきましては
当面の間は美幸、絵美が経営するお店のみとしますが
とんかつ…猪肉を使うならばとんかつもどき
マグロカツ えびフライ いかフライなどの揚げ物に間しては
作り方を研修期間を経て学習して貰い
看板分けという方式で広げたいと思いますので
近次か募集させていただきます
記者さん方 きちんと 宣伝お願いしますね」
ゆかり妃殿下が記者達を睨みながらそう言う
記者達は今食べたフライやマグロ丼をもう一度見つつ頷く
ここで官房長官が
「これより質問の時間に入ります
記者の方は一人一人 手をあげて指名をされたあとで
質問されるように」
昨日 はじめて 300/日PV超えました
どういうこと?と思ってしまってます
ありがとうございます
夕方は後半になります