80話 美穂との念話 ゆかり妃殿下との会話
蟹とマグロのかぶと煮の鍋が完成して
母親達がおわんに入れて配っていくのを見ながら
俺は美穂に念話を入れてみてた
「陛下となにを話してたの?」
「うん 浄化魔法と除菌魔法があれば
お刺身も食べれるようになるのにとか
冒険者の質の話かな」
「冒険者かぁ ぼくたちは論外として
強い人って少ないの?」
「強い人は護衛の仕事とかに就いてること多いみたいで
ダンジョンに籠もる人は…そんなに強くないみたい」
「そうなんだ…」
「さすがにステータスドーピングはダメだと思うけど
どうにかならない?」
美穂がそう言ってくる
「経験値倍増だけ冒険者ライセンスに組み込むぐらいかなぁ」
「冒険者協会が発行しているカードに?」
「そう言うのが無難かなと思う」
「なるほど カードにするのも手間かかるよ?」
「うん どうするのがいいのかな
ダンジョンもここだけじゃないよね
全国に散らばっているし」
「だよね ゆきくんの能力なら解決策思いつかない?」
美穂はなんとかして冒険者全体を
レベルアップさせたいみたいだ
「うーん ダンジョンの入口に
経験値倍増付与ゲートでも設置させると言うとかは?」
「効果時間は?」
「ダンジョンから出るまで…かなぁ
ただ、レベルアップした人間が悪党だったら
それも困るから悪業…盗み、殺人、詐欺などを行った場合
ステータスはすべて1に下がるという裏効果もつけたいね」
「ゆきくん 悪党どもには容赦ないよね」
「きらいだし…」
「そうなのね それですぐ作れるよね その門」
「うん」
「みくちゃんにつたえてね やるなら」
「うん わかった」
美穂と念話をしているうちに
母親達が各自に鍋を配り終えていた
俺は母親に
「お母さん 刺身 まだあるよね?」
「うん まだまだあるけど…食べたいの?」
「ご飯はいらないから刺身だけ」
「わかったわ すぐ用意するね」
「ありがと あとマグロでカツでも試してみて
赤身だともさもさするだろうから
中トロ辺りで」
「そういえばフライ 試してなかったね
マグロの他には? 蟹も出来る?」
「蟹の足でも出来ると思う」
「じゃあ、早速作るね」
「うん」
俺は刺身を待ちながら辺りを見る
みんな 思い思いに蟹鍋を食べていた
俺が眺めていると
ゆかり妃殿下が俺の近くにやってきて
「隣 いいかしら?」
「はい」
「マグロ丼もおいしかったけど
この鍋もおいしいわね
マグロの目玉ってこんな味なのね
蟹も食べ応えのある大きさだったわ
この蟹 3匹を瞬殺する
娘達には…なんて言っていいかわからないけど」
「気に入って貰えて嬉しいです
陛下もマグロ丼を食べて叫んでいたようですし
連れてきてよかったと思います」
「そうね ダンジョンは危険がいっぱいというイメージがあるから
不安でしたけど…未来達の結界や強さを見ると
あの子達がいるなら大丈夫だろうと思えます」
「ゆかり様は…刺身の普及はどうお考えですか?」
「うーん おいしいし食べたいとは思うわよ
ただ、これをどうやって捕るか…ですね?」
「はい ぼくたちは論外として普通の冒険者に
どうやって…ですね」
「そうです ギガントトゥーナスといかなくても
下位のマグロを危なくないレベルで
定期的に収穫出来る冒険者が必要ですね?」
「みほちゃんにもさっき念話で似たような内容を
話されてました」
「美穂もですか…お義父様も刺身を気に入られましたし
なんとかしたいとは思いますけど
冒険者が少ないのが実情ですし
冒険者になるより農業、鉄鋼業、普通に暮らせる
社会になってますからね
命を張ってダンジョンに入るのは一部ですし」
「なるほど 収入はいいんですよね?」
「そうみたいですね 幸正みたいにおかしい強さなら
一日で何千万も稼げるでしょ」
「まぁ…マグロとかブラックホーンとか金になりますし」
「その辺じゃなくても魔物の素材等も高値で取引されるからね」
「でも、罠とか魔物の強さで命を落とす人も?」
「えぇ、そう」
「さっき みほちゃんと話していて
経験値倍増付与が出来る門をダンジョンの入口に
設置するとかは?と考えてました」
ゆかり妃殿下はそれを聞いて
「この子はまた」という表情になりつつも
「やってくれるならありがたいけど
レベルアップした冒険者の質というか人間性が
悪かったら犯罪にも繋がりますよね」
「はい 殺人 詐欺 窃盗 脅迫 その他いろいろ
普段見えないステータスをチェックして
悪党はレベル1 ステータスオール1に下がるように
裏機能も付けるべきかなと考えてました」
「あなたって…容赦ないよね 敵には」
「前世 日本 日本人のお人好しのバカさ加減に呆れてましたし
侵略してくる敵国を留学生として受け入れるバカな政府
敵国に電気等のインフラを任せるとかバカな政府
バカしかいなかった」
「はぁ…そんな国だったんですね 日本」
「だから政治家も信用してなかったです ぼくは」
「この国にも私欲をむさぼるクズ政治家はちらほらいるみたいですし
わたくしたちがしっかり監視しなきゃと思うのです」
「表向きは政治に口出ししないですよね 皇室」
「表向きにはね」
「前世の話になるけど…こういう異世界転生を題材とした
小説等でだいたいは王族がゴミクズばかりでして
それを考えたら月宮の人たちはいい人だなと感じてます」
「あら 物語でそんなのばかりなのね
でも、この国にも悪党はいるから油断はダメよ?」
「はい 敵には容赦しません もし
みく様 みほちゃんに手を出すならば即刻殺しますよ」
「あなた…ねぇ そんな即始末とか極端です」
「だって…」
俺を見て呆れているゆかり妃殿下
俺は対話対話で解決しないのもいやと言うほど見てる
約束を反故にする隣国などもあった
対話で解決するなら苦労しない
悪党はなおさらだ
「さて、そろそろ行くわね」
「はい」
ゆかり妃殿下が去って行くのを見てから
母親が刺身を持ってきてくれた
「ゆかり様となに話されていたの?」
「いろいろですね 政治のこととか冒険者のこととか」
「そうなのね はい お刺身」
「ありがと」
俺は母親から刺身を受け取り
お腹いっぱいになるまで刺身を食べる
そのあとも
マグロのカツや蟹のフライなどを
陛下達が食べて喜んでいたようだった
そんなこんなで4時間
55階層で食べた後
皇宮の玄関に全員で戻るのだった