5話 交信
家に入っていくと母親の美幸が俺の姿を見るなり
やってく来て声をかけてくる
「おかえり 幸正」
「ただいま」
「お母さんとお父さん ちょっと役場まで出かけなきゃならなくなったの」
美幸が困り顔をしつつそう言う
「留守番しておくから」
「できるだけ遅くならないうちに帰ってくるから
あ 知らない人が来ても家に入れちゃダメだからね?」
「うん 行ってらっしゃい」
「じゃあ、行くね あなた 準備出来た?」
美幸の呼びかけに部屋から急いで出てくる正太
「あ、あぁ…幸正 行ってくるから大人しく留守番な」
「うん」
二人は慌てて家を出て行き役場の方にむかうのを見送ったあと
玄関の扉を閉めて部屋に入ると指輪に念じる
この世界に転生して7年経つがミアさんとは滅多に交信はしてない
管理者が世界に干渉するのはあまりよくないだろうし遠慮していた
「ミアさん 聞こえますか?」
「聞こえてますよ お久しぶりね 悠
それとも幸正とよんだ方がいいかしら?」
「前世の名前でも今世の名前でもどちらでも…」
「そうですか…悠にしますね」
「はい」
「一応 わたしはあなたの様子は見ているので
だいたいのことは把握してます
さっき 初めて戦闘を行ったようですね」
「はい 戦闘と呼べるかどうかは…」
「安全なところからの狙撃ですしね
幼なじみの子もちゃんと魔法などを使いこなせていたようですね」
「はい このまま一生傍にいて貰えたらとは思います」
「その辺は大丈夫でしょう
ただ、悠がいる場所 魔の森の結界が弱くなってるようにみえます」
「えっ? それって高レベルの魔物が?」
「結界自体がなくなるわけではないので
そこまで高レベルの魔物が結界外へ出てくることはないはすですが
うーん レベルで言えば…そうですね 30~40の
魔物が外に出てくる可能性があるようですね」
それって俺らの街が危険なのでは
俺と美穂でどうにかするとしてもやらかしてしまえば
注目されてしまう
「俺と美穂で対処可能な数ですか?」
「そこまではなんとも言えませんね 結界の効力を強めるのは
あの国の皇族の役割みたいですが」
「はぁ…天皇の血筋がやってくるという感じですか」
「日本で言えば…そうですね」
「それで…猶予期間は?」
「うーん…数年は大丈夫だと思いますね」
数年か それまでにレベルを上げておけば
「悠 あなたの能力なら結界をはりなおすのも容易でしょう」
「あ そうか 空想を現実に出来るならなんでもあり」
「そうですよ」
「教えていただいてありがとうございます」
「いえいえ」
「それで…魔の森の中になにがあるんです?
封印結界を施さないとダメなくらいやばいものなんですか?」
ミアは少しトーンを落とすと話し始める
「そうですね 悠がいる世界の人間には難しい相手になりますね
邪神とよばれる類いのものです」
「邪神…そんなものが…」
俺はミアの説明に冷や汗をしてのどをゴクリと鳴らしてしまう
「悠のチートなら…ううん」
「俺なら倒せると?」
「出来なくはないと思いますね たとえば死を念じただけで
殺せる能力とか考えたらどうなりますか?」
「あ…それは…簡単に終わりますよね そんなのを作ると」
「とは言え…そんなのを作っちゃダメですよ?」
「はい さすがに…」
「それにですね あの結界の中にいるものは
別に悠が倒さなくても良いものですよ」
「でも、自分たちの街に危害が及ぶとなれば」
「結界から出てくる魔物は問答無用で始末していいと思います
レベル30~40の魔物ですし」
「数年後までに俺と美穂のレベルがそれくらいまであげておきます」
「本気を出すならばすぐにでもレベルなんてあがるでしょ?」
確かに経験値倍増スキルの倍率をいじれば簡単だ
この国の偉い人たちに目を付けられるリスクがあることを無視するなら
すぐにでもレベルは上がる
「そのレベルの魔物が街を襲うまで
数年はあるんですよね?」
「わたしの見立てではそう感じてます」
「焦らずにレベル上げします 下手にあげて
面倒な事に巻き込まれるのもいやなので」
「力あるものは巻き込まれる宿命にあると言うことも
覚えておいてくださいね」
「はい それでは 今日はこの辺で」
「また 話しかけてくれること楽しみにしてますね」
「また連絡します」
俺はミアさんとの交信を終えた後
ため息をついて、その場で寝転ぶのだった