61話 それぞれの食卓
幸正 美穂 芽衣 未来の順で視点が変わります
ブラックホーン4頭の解体が終わると
俺たちはアイテムボックスにそれぞれしまいこんで
皇宮を後にする
「悠 またね」
「うん ミアさん みほちゃん 芽衣さん また」
「「またね」」
それぞれ瞬間移動で帰宅する
家に帰ると俺は母親に
「お母さん これ」
「うん? 肉? どうしたの?」
「さっき ブラックホーン狩ってきて
みくちゃんのところで解体して貰った」
「ほぇ? あなたね…」
「みくちゃん みほちゃん あと呉服店の娘さんも一緒で
それぞれ1頭ずつ」
「はぁ…それで 肉は大量にあるじゃない?」
「うん 一頭分だからかなりあるから
お母さんのアイテムボックスに入れておいて」
「わかったわ 当分はお肉に困らないわね」
俺は母親に解体して貰った肉をわたす
母親は小言は言うけど嬉しそうにしてくれた
「こんな高価なお肉なんて…わたしたちはじめてだわ」
「そんなにおいしいの?」
「そう言われてるらしいの ただ、レベル40超えてるから
倒せる冒険者が数える程度なの」
「なるほど…」
「頑張って料理するからね 楽しみにしてて」
「うん」
そして夕ご飯になると
肩ロースのステーキが食卓に出されていた
「今日は普通にステーキにしたわ ニンニクソースで」
「なぁ、美幸 この肉どうした?」
「幸正が狩ってきたらしいのよ」
「え? またか それで肉は何の肉だ?」
「ブラックホーン」
父親が俺を見て頭を抱えてしまうが諦めたようにして
「ごちそうになるからな こんな肉 食べたことないし ありがとう」
「ううん 一頭分あるから」
「えっ? あの牛?」
「うん」
「心ゆくまで食べれるのか ありがとう」
父親がそう言いながら泣き出していた
「あなたも泣かないで…」
「あぁ…」
「幸正はやらかしてばかりいるけど
わたしたちの子どもでよかったよね」
「そうだな…深愛様にも感謝だな」
「えぇ…」
両親が喜んでくれててよかった
ステーキの方も柔らかかったしおいしかった
前世でなんて高級和牛は食べたことないから
比較は出来ないが
やっぱり牛肉は好きだなってあらためて思った
───美穂視点
わたしと深愛様は家に帰宅すると
わたしはお母さんの元に行きブラックホーンを
アイテムボックスから取り出す
「美穂 どうしたの? この肉?」
「さっき ゆきくん達と魔の森で狩ってきて
おねえちゃんのところで解体して貰ったの」
「えっ? それにしては多いよね?」
「うん それぞれ1頭ずつだから」
「あなたねぇ はぁ…でも、こんな高級肉
滅多に食べれないから嬉しいわ」
「お母さん達はレベル40の魔物 倒せる?」
「うーん 大勢でなんとかかなぁ」
「そんなに大変なんだ」
「そうよ だからこの肉は滅多に手に入らないの」
「そうなのね じゃあ、当分 足りるよね これだけあるし」
「うん 今日はなに作ろうかしら」
お母さんが嬉しそうに考え出している
「深愛様はなに食べたい?」
「そうですね 牛タンとかおいしいと思いますね」
「タン わかりました 今晩は牛タンの塩焼きにしますね」
「楽しみにしてますね」
「はい」
お母さんと深愛様の会話も微笑ましい
ゆきくんと幼なじみでよかった
そりゃ、おねえちゃんや芽衣さんもいて
ライバルになるのは嫌だけど
それでもこれからも4人で一緒にいたいな
夜ご飯にはお父さんが泣き出していて
ちょっと困ったけど
ブラックホーンってこんなにおいしかったのね
たまに食べたいなぁ
そう思っちゃった
───芽衣視点
幸正くん達と別れて瞬間移動で帰宅したわたしは
部屋で変身を解いたあと、お母様のところにむかう
「ただいま」
「芽衣 どこに行ってたの?」
「皇女様達といたの」
「そうなんだね 皇女様とは仲良く出来てる?」
「うん 問題ないかな
でも、さっき皇太子妃殿下様ともお会いしてしまって
こわかった」
「あらあら…粗相はなかった?」
「それは大丈夫だった それで
その…皇女様だけじゃなくて仲良くして貰ってる
男の子と一緒に狩りをしてきたの」
「えっ? もしかして…ニュースになっていた加賀さん?」
「うん 幸正くん あとみほさん…未来様の双子の妹」
「そんなメンバーに芽衣が一緒って…」
「服のこととか 巻き込まれていたもん 家も」
「そうね」
「それで…お土産あるんだけど」
わたしはアイテムボックスから
肩ロースをひとかたまり取りだして
お母さんに渡す
「お肉…」
「うん わたし アイテムボックス使えるようになったから
時間経過気にせずしまっておけるから」
「アイテムボックス? なにもないところから
お肉取りだしていたけど…魔法なの?」
「うん 魔法」
「すごい…これも加賀さん達のおかげなの?」
「うん そう」
「芽衣 いい人に知り合えたよね」
「うん アイテムボックスとかは秘密ね」
「わかってるわ こんなのを知られたら狙われてしまうもの」
「うん」
「お肉 ありがとうね ステーキにするね」
「うん 楽しみにしてる」
そして夕ご飯時に
お父様もびっくりしていたようだった
ステーキは今まで食べたことのないくらいおいしくて
思わず涙が出ちゃったのを
お母様もお父様もみて心配してくれた
「どうしたの?」
「どうした?」
「ううん おいしくて…こんなお肉…食べたことないから」
「そうね」
「あぁ…未来様には感謝しないと いろいろと」
「うん あなたのいうとおりだわ
新しい服のこととかもそう」
「そうだな どれだけ金になるのか計り知れないからな
未来様に会ったらお礼頼むな」
「はい」
本当は幸正くんが色々とやらかしてくれてるおかげだけど
それは言わないでおくことにします
───未来視点
夕ご飯時
お爺様 お婆様 お父様 お母様と一同が集まって
食事を始めましたが
目の前に並べられているブラックホーンの
肉料理を目にお爺様達がため息をついてます
「「「「はぁ」」」」」
「ブラックホーンをいとも簡単に仕留めてくる
孫娘達…喜ぶべきなのか呆れるべきなのか
わからぬなぁ」
お爺様がそう呟くと
お婆様達も頷きながら
再びため息をついてしまいました
「あの…その…そういえばダンジョンに入る際の
許可証などはあるんでしょうか?」
わたくしは気になっていたことを聞いてみることにしました
「許可証は冒険者協会が発行しておるが
当日渡されると思う それと未来ら5人は
ステータスを見ても天井者であるのは明白だ
階級などはもう無視させることにした」
「そうですか…階級というのはランク銅~白金までのことでしょうか」
一応は授業で習った覚えはあるので
冒険者階級はそうなっているのは知ってはいたのですが
わたくしたちは規格外なのでしょう
「うむ 通常なら昇級試験などもあるが
幸正のあれは…試験などやる必要性が疑問に感じるわけだ」
お爺様の言葉にわたくしは顔をひきつってしまいます
ステータス見れば確かにそうです
わたくしたちは通常であればレベル300オーバーのステータス
レベルがどこまで上がるのか
文献にも載ってないので実際わかりませんが…
成長倍増×10というドーピングをしているからこそ
こんなステータスになってしまうのです
「放課後の4時間程度になりますので
毎日1階層ずつ降りていくことになると思います」
4時間でどれくらい進むかわかりませんし
とりあえずは1階層ずつでよさそうです
「そうか 怪我…心配はしてないが気をつけるのじゃぞ」
「はい はやめにミスリルを持ち帰って
術式の実験を進めさせようとは思いますので」
「急いでおらぬから無理せぬように
むしろ明智…あの家系の者達がちと心配だ」
お爺様がそう言うと
わたくしは思い当たる
あれだけ何十年先の技術を渡されて
それを解析して作れというのは並大抵のことじゃないと思います
「ゆきくんの無茶振りに英雄さん達も大変ですね」
「なので 明智を筆頭に紺菱 他 各所
有力技術者には援助をするようには政府に働きかけている」
「ありがとうございます」
そこで侍女達が
「冷めないうちにお召し上がりください
せっかく めずらしいブラックホーンなのですから」
「そ、そうじゃな」
「「えぇ」」
「あぁ」
侍女の言葉にお爺様達もうなずき食事をはじめます
ブラックホーンのステーキ
こんなに美味しいものだったなんて…
「おいしい…」
思わず呟く
肉も柔らかくナイフで簡単に切れるほど
肉汁もじわーっとあふれ出て
口に入れると溶けていくような感じで
「普通の牛に比べて肉質も違いますね」
お婆様がそう呟く
「そうですね この牛を家畜として育てることできれば」
「おいしい肉がもっと流通できるというのに」
お母様とお婆様が言葉を交わしていた
「魔の森と西の街の間にある土地に
ブラックホーンの牧場でも作って結界で
放し飼いしても?」
わたくしがふと思ったことを口にする
「それは可能かも知れないが倒す奴が限られるぞ」
「いわれてみれば…」
そこでお母様がわたくしを見て
「未来も幸正の影響受けすぎです
あなたなら一瞬で仕留めること出来るでしょうが
普通の人間には難しいのです」
「そ、そうですね」
お母様が頭痛そうにこめかみを押さえる
わたくしも強さがおかしいこと
もっと自覚しなきゃなりません