40話 芽衣との会話 1
俺たちは芽衣の案内で芽衣の家までやってくる
呉服店と聞いていたが結構大きなお店だった
お店を眺めていると芽衣が俺を見て
「今日はお店の方じゃなくて裏にある居住区のほうに」
「あ…はい」
芽衣に案内され俺たちは裏口から家に入っていく
「お父様達はお店に出ていると思うので
こっちには誰もいないから…」
芽衣がそう言いつつ俺たちを案内して自分の部屋に連れて行くと
「えっと…未来様にお出しできるような高級なものがないのですけど
飲み物とお菓子をお持ちしますので
未来様達は部屋でおくつろぎください」
芽衣が丁寧な言葉で俺たちに言うと未来が
芽衣に首を振りつつ
「公式の場ならいざ知らず…こういう場では
砕けた言葉遣いで大丈夫なので楽にしてくれませんか?」
「えっ? その…あの」
「芽衣さん お姉ちゃんもこう言ってるし
気にしなくて平気だから わたしもゆきくんもだけど」
「あ…ありがとうございます それでは普通に喋りますね
飲み物を持ってきますので」
芽衣は足早に台所に向かう
「みほちゃん 芽衣さん 一人だと飲み物あぶなくない?」
「あ そうだよね まだ7歳だもん」
「ぼくたちも手伝いに行った方が」
「うん そうしよう おねえちゃんは…さすがに控えておいて」
「うん わたくしは大人しく待っています」
俺と美穂は芽衣の後を追いかけていき
「「芽衣さん 運ぶの手伝うから」」
「えっ? 幸正くんとみほさん…ありがとうございます」
一瞬 遠慮しそうになった芽衣だが
持ち運ぶのが大変なのが自覚していたのか
俺たちの申し出を受けてくれた
飲み物とお菓子を持ってすぐ部屋に戻ると
それぞれ畳の上に座り話をはじめる
「それで…芽衣さん ぼくとみほちゃんが着ている服についてですよね?」
「はい 朝からずっと気になってまして
もしかして…お父様に依頼された服のサンプル品になるの?」
「はい そうです これ以外にも色々サンプルとして渡しましたが」
芽衣の問いかけに未来が答える
「あの…どうして ゆきくん達が着ているのでしょうか?」
芽衣が首をかしげて俺たちを見ると
未来が俺を見てから
「そもそも、この服を持ちだしたのがゆきくんなので」
「えっ? どういうこと? 7歳よね」
芽衣が俺をじっと見ながら意味わかんないと言う表情をする
「驚くのも無理もありません わたくしだって知ったときは驚きました」
未来がため息交じりで言い続けて問いかける
「芽衣さんは新聞やテレビは?」
「あ はい お父様は読まれています テレビは…まだないです 高いですもん」
「テレビはまだまだ一般国民には手が出せないものですね
それでなにか聞いてませんか 魔の森の結界について」
芽衣は未来の言葉に考え込みながら斜め上を見ると
思い出したように「あっ」と小さく言ったあと
「英雄のこと 言ってました …もしかして ゆきくんとみほさんがそれなんです?」
俺と美穂の顔を見ながら驚きを隠せてない芽衣に
俺と美穂が頷く
「そうです」
「うん そして ゆきくんは特殊能力持ちです」
「特殊 それが服に関係してるんですね?」
「はい ぼくは前世持ちの転生者 前世の記憶を元にこういう服を」
「前世…この世界じゃなくて別の世界…なの?」
「はい」
「その世界では着物じゃない服が色々あるの?」
「はい」
「お父様からは新しい服としかだけ聞いてなくて
どういう服なのか見ることも出来なくて
朝 はじめて 幸正くん達を見て…胸躍る感じでした」
「芽衣さんは…もっと色々知りたい?」
未来が芽衣に聞いてくる
「出来たら…しりたいです でも、幸正くんの秘密 いいんですか?
わたしに教えて貰って」
芽衣が少し青くなりつつ俺たちを見ると
美穂が芽衣に
「あー うん 芽衣さん 教室で
わたしたち側に引き込むって言ったよね」
「うん それって幸正くんの秘密を共有する側という意味?」
「うん そう ゆきくんのことは
皇室とわたしたち二人の家族だけになるの 今のところ
でも、服のこととか一般普及を無理難題頼んだし
あとね おねえちゃんと会話してるところ
教室でみんな見てたでしょ?」
「うん 怖かった…」
「おねえちゃんに嫉妬してたりして芽衣さんが危険になるのも
いやだから安全策として…ね」
美穂がそこまで言うと俺を見て頷く
「芽衣さん 手を出して」
「こうですか?」
芽衣が俺に右手を差し出すと俺は彼女の中指に指輪をはめ込む
「どうして? 指輪?」
俺を見て聞いてくると美穂と未来が芽衣に念話を送る
「その指輪 ダメージ無効と状態異常無効機能もついているから
指輪を付けている限りは安全なの」
「えっ? みほさん 口開いてないのに…頭の中に声が」
芽衣がオロオロして美穂を見ながら声を出して言う
「念話 これも指輪の機能の一つです」
「未来様」
今度は未来を見て…
俺は普通に会話をして説明する
念話 通話 ビデオ通話 瞬間移動 完全防御
一通り説明する
「こんな…こんなものをわたしに? いいんですか
わたし ただの呉服店の娘なのに」
「うん その代わりに洋服の普及に貢献して貰えたら」
「洋服と言うんですね 服に間しては はい
興味もありますから」
「あと みほちゃん みくちゃんもだけど
指輪の所有者認証機能も付け足したから
未来ちゃんに言われていたことだし」
「よかったです この指輪が他人のものになると色々と危険ですからね」
「お母さん達のはどうなの?」
「それも全部アップテートしておいた」
美穂の疑問にも答えて
再び芽衣を見て
「ただ、芽衣さんの指輪の機能に少し制限付けさせて貰ったけどいい?」
「制限ですか? どんなものなんです?」
「えっと 前世の世界にある日本のネットワークへの接続を
ぼくやみほちゃんやみくちゃんに承認要求出して貰わない限り自由に
アクセス出来なくなってます」
そう言われましても
ネットワークとはなに?という表情をして首をかしげる芽衣をみて
俺は32インチディスプレイサイズのウインドウを空中に展開するのだった