295話 うな重
美海視点です
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───美海視点
幸正様と美幸さんに連れられて
わたしとくみこちゃんのふたりはお店の中に入りました
甘いようなしょっぱいような香りが鼻に届いてきて
思わず、お腹が鳴ってしまいました
「あ…」
恥ずかしくなり赤くなってしまいます
それを見て美幸さんが優しく、声をかけてきてくれました
「いい香りだものね おいしそうな匂い」
「ぼくも楽しみですよ 前世でなんて…
こんな高級店で食べたことなんてないから」
「幸正 ここでそれを言うと周りの人に怪しまれるからやめなさい」
「あ…はい」
幸正様が美幸さんに注意されて…「しまった」という表情になってます
そういえば…幸正様って転生者?みたいで
日本人だったと言う話でした
わたしがそんなことを考えていると
店員さんがわたしたちを観て「いらっしゃいませ」と丁寧に挨拶してきて
店内を案内してくれました
「カウンターと座敷とございますが、どちらが御希望でしょうか?」
「座敷で…お願いします」
店員さんの質問に美幸さんが答えると
店員さんが座敷の方へ案内してくれます
お品書きが書かれている紙をわたしたちに渡してくれます
「ご注文がお決まりましたら…お呼びください」
店員さんが一礼をして向こうに行こうとすると
美幸さんが店員さんに話しかけます
「特上うな重4人前で」
「特上うな重 4人分でございますね かしこまりました」
店員さんがメモをとりながら向こうに行きます
わたしとくみこちゃん、幸正様と美幸さんという具合に
机を挟んで座って待つことになります
待ってる間、美幸さんがわたしたちに話しかけてきました
「みなみちゃんとくみこちゃん 料理は慣れた?」
「まだ3日…ですから…全部は覚えていないかも」
「わたしも…そうかも みなみちゃんは焼き鳥担当でしたよね?」
「うん 初日は全部見て回ったけど…翌日からは焼き鳥
そう言う…くみこちゃんは…とんかつだよね」
「うん 拓郎さんのところで」
わたしたちが会話をしていると幸正様が美幸さんに話しかけました
「お母さん おばさん 拓郎さん 美沙さん
あとローテーションの4人の侍女さんだったよね
それぞれわかれてるの?」
「えぇ くみこちゃんが今言ったように
拓郎さんが揚げ物担当 とんかつや唐揚げね
わたしが牛丼、絵美さんが焼き鳥、美沙さんにプリン作りして貰って
ハンバーグをすみれさん達に…と言う具合に」
「なるほど ふたりとも本職の方はどれくらい経つの?」
幸正様がわたしたちをみて聞いてきました
「わたしもくみこちゃんも4月からだから半年ぐらいかな」
「うん わたしたちは4月から見習いに受かったから」
「くみこちゃん達って…エリートなの?」
美幸さんも気になったみたいで…こんな質問が飛んできました
「エリートと言っていいのかどうかは?」
「皇室の侍女は憧れの職業ではありますけど合格者も少ないです」
「そうなのね」
「せっかく合格したのに…料理人みたいなこと頼んじゃって
ごめんなさい」
幸正様がわたしたちを見ながら謝ってきたので
わたしもくみこちゃんも慌てて「「だ、大丈夫ですから…」」と言います
「それに…さくら先輩達を見ると
侍女だけじゃなくて色々出来る方がいいなと思います」
「こんな風に知らない食べものを食べたりも出来たし
わたしは逆に運がよかったなと感じますね」
ニコッと笑いながら答えるくみこちゃんを見て
わたしも頷きながら
「そうです 貴重な体験だもの」
「そう言ってもらえると巻き込んだ側としては嬉しいです」
「「はい」」
こんな会話をしていると店員さんがやってきて
「お待たせしました 特上うな重でございます」
机の上にお盆を置いてくれます
「さ、食べましょ」
美幸さんがわたしたちに、そう言ってきましたので
うな重の蓋を開けていきます
香りがふわりと…食欲が注がれます
うな重に飛びつきたい気持ちを抑えながら「いただきます」をして
お吸い物から口にすることにしました
醤油ベースなので飲みやすいと思います
そして…うな重を見ながら顔がほころんでしまいます
うなぎと一緒にご飯をすくって口にすると
口の中でうなぎがとろけていきました
「うぅぅぅ………とろけました こんなに柔らかいの?」
横にいる、くみこちゃんも同じように幸せそうな顔になってます
うなぎって…わたしたちの世界でいるのかな?
こんなにおいしいなら…みんなに食べて貰いたい
そう思っちゃいました
目の前にいる幸正様や美幸さんも幸せそうに食べています
幸正様が、わたしの顔をみて嬉しそうに話しかけてきました
「みなみさんもくみこさんも幸せそうに食べているのを見て
企画した甲斐がありました よかったです」
「はい とってもとってもおいしいです
うなぎ…わたしたちの世界でもいるのでしょうか?」
「存在はしているとは予想はしてます
どこにいるかはわからないですが…」
「そうなのですね
もし、みつけられたら…うなぎも?」
「広めたいですね ただ、うなぎは職人さん育てるのが難しいと言われているみたい」
「そうなんですね」
「うなぎをみつけてからですね
それにしても…今まで食べた中で1番おいしいです このうなぎ
今までは…こんな高いのは食べたことないですから」
「そんなになのですか くみこちゃん じっくり味わって食べなきゃ」
「うん 次に食べること出来るかわからないもの じっくり食べましょ」
わたしたちは、うな重を心ゆくまでゆっくりと食べていくことにしました




