275話 お裾分け
玄関で美穂が俺に問いかけてくる
「どっちからいくの?
出来たら…英雄さんところは後回しがいいと思うよ?」
「うーん みほちゃん その理由って
英雄さんところの方が長々と話し込むからと言う予想?」
「ゆきくん そうでしょ? たけしくんところは
餃子渡して終わりじゃない?
英雄さんのところは色々渡すでしょうし
依頼してあることの状況も聞きたいでしょ?」
「そうだね ぼくのこと理解してるよね みほちゃんって」
「当たり前じゃない? ずっと一緒なんだからね」
二人のやりとりを見て、さちことひまりが美穂に話しかける
「幼なじみという強みだよね みほちゃん」
「ちょっと うらやましいなぁって思っちゃった
そういう幼なじみ…いないから わたし」
ひまりがちょっと影を落として言うと
さちこがひまりを見て
「わたしもいないよ? 中学まで剣道だけしていて
男の子と関わったりもしなかったし
あ 道場では男の子相手に稽古はしていたかな」
「さちこちゃん それでも仲良くならないの?」
「歳も離れていたしねぇ」
「そうなんだね わたしの方は昔から引っ込み思案だから
みほちゃんみたいに出来るのは羨ましい」
「えっと ひまりおねえちゃん わたし
ゆきくん叩いてばかりいるけど?」
「それでも…嫌われてないでしょ?
ね? 幸正くん みほちゃんのこと好きでしょ?」
「そ、それは好きだけど…少し叩くのは控えてほしいかなと」
「な、なによ」
俺の言葉に美穂が頭を叩いてくる
「だから そうやって…叩くの 減らして」
「ふんっ」
「いいなぁ…」
ひまりが小さく呟く
「ひまりおねえちゃん?」
俺はひまりをみる
「ううん いくんだよね」
「うん ひまりおねえちゃんは場所わからないから
みんなで手をつないで移動しよ」
俺たちは手をつなぎパン屋さんの裏庭に移動して
表の入り口から店に入る
「いらっしゃいませ」
白井さんの奥さんが扉を開くのを見て挨拶をしてくる
「「「「こんにちは」」」」
「幸正くん達でしたか…見ての通り お客さんも増えました」
店内には、お客さんがかなりいて
お会計待ちをしている列になっていた
「忙しそうなので…」
「あ いえ 奧に行って下さると夫も居ますので」
「はい 少しだけ おじゃまします」
俺たちは白井さんの奥さんに断りを入れて
店の奥に向かうと白井さんとたけしくんが俺を見てやってくる
「「いらっしゃいませ」」
「「「「おじゃまします」」」」
「繁盛しているみたいですね」
俺が先ほどの店内の様子を伝える
「はい お陰様で…ジャムパンなどは人気が高いですし
あと 限定でのアップルパイも午前中には売り切れになってます」
白井さんが答える
「よかったです それで今日は…これを作ったので
お裾分けに来ました」
餃子を20個分…パックに入れた状態で
白井さんに渡すと餃子を見ながら首をかしげて聞いてくる
「これは…どういうものでしょうか?」
「餃子です 中に肉や野菜が入っている…おかずです」
「「なるほど」」
「美穂さん達が作ったのです?」
たけしが美穂を見て問いかける
「うん わたしたちの他にも相馬食堂や桜庭料亭の人も数人」
「夢子先輩達もなんですね ありがとうございます」
「味はさっき食べたので…おいしく出来てるから
ひまりおねえちゃんの教え方もよかったので」
美穂がひまりを見ながら言う
「そちらの方は…さちこさんと同じく日本から?」
「はい 佐々木ひまりです さちこちゃんと同じ高校です」
「なるほど よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「アイテムボックスに入れておいてたから
出来立てのままなので…食べるまでは
アイテムボックスにしまっておいた方がいいと思います」
俺はたけしにそう伝える
「あ はい そうですね お母さんも忙しそうだから
食べるのはまだ先ですしアイテムボックスにいれておきます」
たけしは自分のアイテムボックスに仕舞い込む
「それじゃ、ぼくたちは…もう一箇所行くところあるので」
「あ はい」
「なにもお構いもしないで…申し訳ないです」
「いえいえ」
たけしが名残惜しそうにしているが
お店の方は忙しそうなので…退却することを選ぶと
俺たちは入口から外に出ていき
裏庭付近の人気のない場所で瞬間移動をして
明智家の庭まで移動するのだった
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