18話 月皇陛下との謁見
俺たち加賀家3人と美穂たち樹家3人は
月宮の敷地内に設けられた一軒家にそれぞれ引っ越しを済ませると
月皇陛下や皇太子殿下との謁見を命じられ
6人は緊張をしながらひれ伏して
陛下達がお見えになるのを待っていた
しばらくすると陛下、皇后、皇太子殿下夫妻、未来が登場して
目の前に設けられている豪華な椅子にそれぞれ腰をかけると
陛下が俺たちに向けて声をかけてくる
「一同の者 面を上げよ」
「「「「「「はっ」」」」」」
俺たちは青くなりながら面を上げる
皇太子殿下夫妻は美穂の方を見つめながら
なにかを言いたげな表情をしつつも我慢している様子だった
「此度の結界強化の件について報告は受けておる
美穂ならびに幸正と申したか…誠に大儀である」
「「ありがたきお言葉でございます」」
俺も美穂も言葉遣いなんてまったく出来てない
どう言えばいいのかわからないまま答える
「数年後に結界の効力が弱まるのは
我らとて把握はしておった
一族で結界強化を使用可能のものを全員
もちろん われとてその責務を行うつもりだったが
その方の働きにより数年どころか
数百年は結界の効力は持つという観測結果が出ておる」
俺たちがやらかしたことで
数百年は問題ない状態になったのか
なら邪神のことは気にしないでよさそうだな
俺は陛下の言葉を聞きながらそう考えていた
「数百年…」
美穂がつぶやきながら自身がやらかしたことを
今更ながら思い知ったという表情をする
「結界ということで根本的には解決にはならないが
魔の森の脅威はひとまず落ち着くだろう
この功績をたたえて褒美を取らそうと思うのだが
美穂 幸正 その方達 希望を申してみよ」
陛下がそう言い終わると俺たちをじっと見つめる
まずは美穂の方から口を開く
「はい、寛大なお言葉になんと申したらいいのか…」
美穂がしどろもどろに語り始めるのを見て
陛下はいったん美穂を制し
「ごほん 美穂 言葉遣いなど気にせずともよい
この場にいる者達はごく限られた者達だ
皆の者 これより先は非公式でよいか?」
陛下がそう周りに問いかけると
全員が陛下に賛同する
「さて 美穂 大きくなったな 生まれた直後から
樹の者に預けてしまってすまなかった」
「いえいえ お父さんもお母さんも優しくしてくれたから」
そこで皇太子殿下夫妻が宗人と絵美に話しかける
「宗人 絵美 この子を育ててくれてありがとう」
「殿下 ありがたきお言葉」
そして皇太子妃が絵美に話しかける
「報告を聞く限りおてんばに育ってるようですが」
「はい わたしたちとしても頭が痛くなるほどで」
「お母さん!!」
そこで美穂が絵美に言うと
絵美は美穂を睨み付けながら
「おてんばじゃなければ…こんなやらかししてないはずですよね?」
「えっと…そうだね あはは」
ばつの悪そうに答える
美穂は我に帰って陛下の方を見返す
「月皇陛下…褒美ですが…なんでもいいのでょうか?」
「もちろんじゃ…何なりと申せ」
「それでは…わたしはこのまま樹としていたいと思います」
美穂が強くそう言うと
皇太子殿下夫妻と樹夫妻が思わず
「「「「美穂 あなた」」」」
陛下も残念がるような顔をしつつ
「そうか…仕方あるまい」
「ありがとうございます」
「ただ、美穂よ それでも我らはお前の肉親であるのだから
なにかあれば頼ってほしいのじゃ」
「わかりました えっと…お爺さま、おばあさま
本当のお父さん、お母さん ごめんなさい ありがとうございます」
「美穂 いつでも会いに来ていいからね」
皇太子妃が美穂に涙ながらに言う
「はい たまに顔出しに来ますので…」
しばらくすると陛下が俺の方に向いてくる
「幸正はなにか褒美に希望するものはあるか?」
俺は陛下の問いかけに数秒間考え込む
国防、科学力の発展、色々望みたいことはあるが
ひとまずは大人しくしておこうと思う
「いいえ とくには…」
「ふむ…功績は功績じゃからのぅ
褒美がなにもなしというのもいかぬのじゃ…」
俺は両親を見る
「お父さんとお母さんは敷地内で仕事でしょうか?」
「そのようにする予定となっておる」
「それでは…お父さん達へのお給料を多めにで
お願い出来ますでしょうか?」
俺がそう提案すると両親が困ったよう顔をしてしまう
「わかった よかろう ひとまずはそのようにしよう」
「ありがとうございます」
陛下がここでため息を漏らして俺を見る
「ふぅ…まったく欲がない子どもだな」
「えっと…欲というか夢ならあることはあります」
「なんじゃ? もうしてみよ?」
「はい 親孝行と好きな人と結婚…です」
俺がそう言うと
美穂と未来が思わず反応する
「「えっ」」
それをみた陛下、皇太子殿下夫妻は
二人を見る そして陛下が二人に問いかける
「美穂 未来 どうして驚く?」
「そ、それは…」
「わたくしも…」
「二人とも幸正のこと好いておるようだな」
「「……っ」」
二人とも赤くなる
「困ったのぉ…美穂は樹を名乗るとしても月宮の血筋
未来は言うに及ばず…おぬしが平民でいるのは
都合が悪いと思わぬか? 幸正」
陛下が俺にそう言って脅してくるのを聞いて
諦める事にした
「はい…お二人に見合う地位が必要と言うことでしょうか」
「そうじゃな…理解が早くて助かるわい」
「ぼくはどうしたらいいのでしょうか?」
「プロテクトアクセラレートを美穂とともに発動せし
英雄として勲章を受けよ 加賀家を月宮と釣り合う家柄まで
引き上げるのが目的だが…どうじゃ?」
美穂と結婚するにはこの要求を受けないとダメになった
「はい 謹んでお受け致します」
「「ゆきくん」」
俺の返答を聞いた陛下はにやりと笑い
「孫娘のこと よろしく頼んだぞ」
「はい」
このあとも
美穂は皇太子殿下夫妻と会話をしばらく続けているが
陛下は職務があるようで退席となり
俺と両親も家の方に戻るのだった




