206話 試食 丼物
机に上に人数分の小皿を出していくと
侍女さん達含めて6人でそれぞれにマグロ丼をよそっていく
「わぁ…マグロ丼」
あやこが嬉しそうに呟いている
他の面々はそれを見ながら食べ始める
「生で魚を食べること自体…はじめてだから抵抗あるわ」
かおりがぽつりと言う
「そちらの女の子が嬉しそうに食べているから
おいしいのはわかるよね」
うどん屋さんの奥さんがあやこを見ながら言う
「そうね 食べ始めましょうか」
そば屋さんの奥さんも続けていうと
それぞれ食べ始める
「………思っていたのと違うわね」
「えぇ…こんなにおいしいの? 生の魚?」
うどん屋の奥さんの呟きに
かおりも思わず反応してしまう
「しかも…色の違うのは?」
そば屋の店主さんが問いかけてくると
母親が説明を始める
「そちらのマグロ丼はギガントトゥーナスの
赤身、中トロ、大トロといった部分を使ってます
大トロが1番脂がのっている部分です」
「なるほど 赤身はさっぱりしているが
ピンクの方は脂がのっていると言うことなんですね」
「一つのどんぶりで3種類の味が楽しめるのは
食べている側としても嬉しいな」
うどん屋さんの店主さんとそば屋さんの店主さんが
相次いで述べている
俺は和菓子屋さんの職人さんが
ここまで一言も言葉にしてないのを気になって
声をかけてみることにした
「和菓子屋さんは…どうですか?」
「ん? あぁ…どれもこれもめずらしい料理だったので
黙っていたけど…おいしく食べてるぞ」
「それはよかったです もう少し後になったら
お菓子類も色々試食して貰う予定なので
そのときに意見をいただければ」
「和菓子とは別のおかしだよな」
「はい」
「そこの娘っ子から話を聞いていて
気にはなっていたので」
和菓子屋さんの職人さんが芽衣を見ながらそう言う
「もうしばらく お待ちください」
「あぁ…」
和菓子屋さんの職人さんと会話をしているうちに
マグロ丼の試食が終わると母親達が牛丼をそれぞれに配っていた
「次は牛丼です 今回は出汁に昆布出汁を用いたものにしてます」
母親が説明すると
桜庭の人がすかさず質問してくる
「昆布出汁とは?」
それを受けてぼたんがアイテムボックスから昆布をとりだして
各自に見せながら説明をする
「海に生えている海草です
これは55階層の海の階層を探していてみつけたものですが
普通に海に生えていると思います」
「なるほど」
「出汁にとる以外では利用は?」
うどん屋さんの店主さんが続いて質問してくる
「煮物として食べたり佃煮としてもおいしいと言われてます」
ぼたんが答える
「なるほど いくらか わけて貰えることは?」
「はい 帰りに お渡ししますので」
「ありがとうございます」
ぼたんの言葉に、うどん屋さんの店主さんがお礼を言いながら頭を下げる
質問も一段落すると、それぞれ牛丼を食べ始める
「「「「「「………うまい」」」」」」
男性陣や子ども達が呟く
「甘塩っぱいタレもそうだけど
牛肉は…やっぱりうまいな」
桜庭の人がそう呟く
「マグロ丼もおいしいけど…これもおいしい」
あやこも口にする
「「「「うん」」」」
夢子 たけし 健二 かおりは頷いてる
「問題は牛肉の入手性か」
うどん屋さんの店主さんが難しい顔して言う
俺はそこで問いかけてみる
「農家の人はまだまだ牛の家畜は少ないのです?」
「そうだなぁ 少ない上に高額だし
牛乳用の牛の方が今のところは主だな」
うどん屋さんの店主さんがそう答える
「すみれさん達 42階層や32階層にも行ったんだよね?」
「はい 32階層は暴れ大猪がメイン
42階層がブラックホーンがメインになってました」
「わたしたちなら大した相手ではないですが
まだまだ普通の冒険者だと…狩るのもそうですが
持ち帰る方が大変ですね」
すみれとかえでがそう答えてくる
「レベル上がった冒険者でも数人がかりです?」
「そうですねぇ そもそもがでかい魔物ですから」
「なるほど そうすると冒険者6人で1日あたりに数頭として
買い取り価格を6人で割る感じですかね」
「現実的には…そうだと思います」
俺の言葉にすみれが答える
「みなさん ブラックホーン 1頭あたりの価格と
農家から購入する牛の価格で
かなり差が開くとしたら購入しますか?」
俺はそこにいる面々に聞いてみる
「それは もちろん 一般国民に提供可能な価格ならば
気楽に購入します」
「そうだな ブラックホーン 1頭あたりでも
相当の肉がとれるんですよね?」
「はい 相当ありますから」
「それなら…購入する価値もありますし」
「だな」
俺はゆかり様を見て
「全国各地でブラックホーンと暴れ大猪狩ってくれるなら
供給過多になりますよね?」
「そうですね 買い取りする人がいないならあまりますね」
「牛丼などは早めに一般化させた方が
冒険者もがんばれるよね?」
「そうね 問題は農家の人の方だね
ブラックホーンが安くて農家で育てる牛が売れなくなる」
「高級牛は高級牛で需要はあると思いますけど
ブラックホーンよりもおいしい霜降り肉を
生産してくれれば棲み分けは出来ると思います」
俺はそう答える
「農家の人にも助成金出さないとですね」
ゆかり様がメモをとりながら言う
牛丼の試食が終えると母親達がカツ丼を各自に配っていく
それをみて最初に口を開いたのが
桜庭の人だった
「先ほどのとんかつを卵でとじた感じですか?」
「はい 玉ねぎを炒めたあとで醤油、酒、みりん、砂糖、水を使った
調味料でとんかつを煮ていき溶き卵を最後に入れて
卵が固まりかけたらできあがりです」
母親が質問に答えていく
「なるほど…」
回答を聞き超えると桜庭の人がカツ丼を口に運ぶ
「先ほどのはサクサクしていたけど煮たことで
衣がしっとりしていて…卵と醤油が相まっていて
とんかつとは印象が変わりますね」
「柔らかいね」
「「うん」」
「とんかつだけを食べるのもおいしいし
でも、この食べ方もおいしい どっちも好き」
あやこが無邪気に食べながら呟いてる
みんなが食べ終えたのを見て母親が
「以上で丼関係は終わりです
続きまして…焼き鳥、唐揚げ、ハンバーグに移ります」
「あ それから…わたし、お味噌汁も持って来てますのでどうぞ
わかめと豆腐のお味噌汁です」
母親の言葉に続けて
ぼたんが…味噌汁をとりだしていき各自に配っていくのだった
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