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190話 試食

11月の最初の日曜日

今週は火曜にぶどうの木を移動させたりしたが

水曜から土曜は俺たちからすれば

大人しく過ごしていた日々だったと思う

もちろん、水曜から金曜はダンジョンに籠もって

肉や魚や金属や糸を採取しているが

月曜に62階層へ降りたきりそれ以降の階層には

降りてはいなかった


水曜日は母親と父親、そして由美が

ゆかり様と一緒に役場に向かい由美の戸籍を作る手続きなどを

していたようだった

さちこの方は俺たちと一緒にダンジョンに籠もり

最後の15分間をバトルロイヤルで汗を流すという感じになっていた


土曜に学校で、たけし…パン屋さんの息子だが

休み時間に教室までやってきて俺たちに日曜日来て欲しいと

頼んできたのでいくことになっての今日と言うことだ


俺 由美 母親にくわえて

美穂 絵美 ミアさんの樹家の女性陣

未来 侍女さん4人、そして芽衣やさちこもくわわって

かなりの人数になっているのだが

パン屋さん…白井さんは俺たちを見て驚いたものも

笑顔で店内に迎え入れてくれたようだ


「今日はおいで下さいましてありがとうございます」


白井さんが頭を下げながら俺たちにそう言うと

母親が手を振りながら返事を返す


「こちらの方こそ、こんなに大勢になってしまって

 ご迷惑じゃありませんか?」

「いえいえ 試食していただける人が多い方が

 我々としては助かりますので」

「それならいいのですけど…」


相手側にそう言われてしまうと

仕方ないと言った具合で母親が言う


「早速ですが、皆様に食べて貰いたいパンを色々用意していますので」


白井さんが店の奥から試作品と思われるパンを

奥さんやお弟子さん達と一緒に持って来たようだ

カウンターの上に並べられていて小さく切り分けられていた


「まずは、幸正様からこ提案いただいたりんごジャムのパンです」


俺たちは、りんごジャムパンを手に取ると食べる

りんごを砂糖で煮詰めたので甘さもある

りんごジュースの時と比べて酸味が減っただけ

俺としては食べやすいと思った

由美とさちこが、まず感想を述べるようだ

ふたりとも日本で色々食べているだけに

こちらの人間よりは舌が肥えているだろう


「りんごの酸味が減ってるし甘さがあって食べやすいね」

「うん 個人的にはりんごの果肉をもう少し入れてくれると

 好きかも」


さちこが果肉があるといいという提案をする

白井さんはそれをメモに記する


「そういえば…さちこちゃん

 日本だとまるごとりんごパイとかあったよね」

「あ、あぁ…あったあった パイ生地はパンとは違うし

 それを教えないとパイを作るのも…」

「確かに で、まるごとりんごパンはどう?」

「大きくなりそうだけど数人でわけて食べるならよさそうね」


ふたりが色々と感想を言ってるのを

きっちりとメモすると白井さんがふたりに聞いてくる


「パイというのはどういうものでしょうか?」


それを聞いた由美がウインドウを空中に展開させて

みんなに見えるような形でアップルパイの写真を表示させる


「こんな感じです 見ての通りパンとは違うのはおわかりでしょうか?」

「はい 生地の感じが違います

 この世界にある材料でも可能なのでしょうか?」


白井さんの問いかけに由美が検索しながら

考え込む


「お母さん こちらの世界に強力粉と薄力粉はあるのです?」


由美が母親に問いかけてみると


「普通に売ってるわ」

「あるのね 店長さん 今あります?」

「あ はい あります」


白井さんがそう答えると由美はさちこと相談を始める


「さちこちゃん アップルパイ 作りでもしない?」

「えっ? わたし お菓子作りはしたことないよ?」


由美の提案にさちこが困ったように答える


「そっかぁ さちこちゃん 清楚系イメージあるし

 そう言う男の子が憧れるような趣味も持ってると思ったのに」

「わたしって…そんなに見た目ほど女の子してないよ?」

「そうなのね そうすると…試行錯誤でする?」

「うん それでいいなら」


ふたりの会話が終わり話がまとまったようだ

さちこって…清楚系容姿なのは俺も思っていたし

おんなのこしてそうと思いきや…活発な子なんだな


「みほちゃんたちもいい?」


由美が美穂達を見て問いかけると全員頷く


「アップルパイ作り…よろしいでしょうか?」


由美が白井さんに問いかけると頷きながら了承してくれた


「と…その前に試食ですね」

「はい 桃ジャムのパンとか…サンドイッチも色々試作してみましたので」


カウンターに置かれている試作品に目を向けながら

白井さんが言う


「あ ごめんなさい」


白井さんの言葉に由美が申し訳なさそうに謝る


「いえいえ」


気を取り直して俺たちは桃のジャムパンを試食する

りんごにくらべて甘さもかなりあるし

前世からりんごより桃の方が好きだった俺としては

好きな感じになっていた


「ぼくはおいしいと思う」

「「「うん おいしいね」」」

「「甘みはりんごよりあるね」」

「「「「うん」」」」


美穂 未来 芽衣

由美 さちこ 侍女さんたち…と感想を述べる


「好評みたいでよかったです」


白井さんもホッとした様子だ


次にサンドイッチ類に目を向ける

レタスとトマトと肉のサンド

ゆで卵ときゅうり レタス トマトのサンドという感じだった


「うーん お母さん この世界だとマヨネーズは?」


俺は食べながら母親に聞いてみた


「マヨネーズはまだないわよ」

「やっぱり 冷蔵庫が普及しないことには

 マヨネーズは難しいか」


俺の呟きに由美が反応して口を開く


「常温でおくわけにもいかないからね マヨネーズって」

「すぐ悪くなりそうだもんね」


さちちこも由美の言葉に続ける

俺たちの会話を聞いて白井さんが気になったのか聞いてきた


「マヨネーズというのはどういうものですか?」


それを受けて母親がアイテムボックスからマヨネーズをとりだして

説明を始める


「卵と油を混ぜて作られていると思うのだけど

 この国…他の国でも冷蔵庫がなければの話ですが

 冷蔵庫に入れておかないと鮮度も落ちますし

 今のところはまだ一般化は難しいものだと思います」

「なるほど…味見しても?」

「はい どうぞ」


母親からマヨネーズを受け取り

野菜サンドにつけて食べてみる白井さん


「………野菜だけの時よりおいしく感じます」

「ぼく 生野菜とか嫌いなんで…マヨネーズある方が

 食べやすいんです」

「あー ゆきくん それ 自分で言う?」


美穂が俺にツッコミを入れる


「みほちゃんもハンバーガーとか食べたとき感じなかった?」

「ハンバーガー あ うん そうよね」

「わたくしもわかります はい」

「野菜サンド…野菜だけだと野菜食べてる感じが強いし

 ぼくとしては…マヨネーズや何かソースがある方が食べやすいかなと」

「「確かに」」


俺たちの会話を黙って白井さんは聞き入っていた

会話が終わるタイミングで母親に問いかけてきた


「冷蔵庫というものは…どういうものなのです?」

「一定温度以下…10度以下を保った大きな箱という感じですね

 詳しくは幸正に」


母親が俺に目を向けて言う


「冷蔵庫は主に冷やすのを目的とした箱です

 そして…もう一つ冷凍庫と言うのももあり

 こちらは凍らせるのが目的の箱になり

 おそらく12月頭には販売開始されるとは

 予想はしてますが…問題は価格ですね」

「高価なものになるのです?」


白井さんが冷や汗を垂らしそうに問いかけてくる


「初ものでしょうし…量産体制が整ってないなら

 高くなるのは仕方ないのかなと

 こればかりは会社次第…ですね

 で、マヨネーズですが…さっきお母さんが言ったように

 卵と油、それから酢、砂糖、塩などを混ぜて作ることは可能です

 ただ、鮮度を考えると常温でおいておくのは

 難しいから冷蔵庫が普及してからですね」

「なるほど その冷蔵庫を

 購入できたら…マヨネーズも?」

「はい そもそも、マヨネーズも製造会社を

 確保して大量生産して貰いたいのだけど

 みくちゃんいい?」

「はい お爺様達に進言しておきます」

「いつもありがとう」

「いえいえ」


マヨネーズや冷蔵庫の話を終えたあと

試食も一段落する

そして由美が白井さんに広い場所がないか尋ねると

店の裏庭をかしてくれることになった

俺たちはそちらへ移動する

ここまで読んでいただいた方ありがとうございます

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