9話 携帯電話機能
俺は美穂と一緒に自分の部屋に入ると
お互いに向かい合いながら話し始める
「来年度から義務教育はじまるみたいだね」
「学校ねぇ お金とかかかるのかなぁ」
美穂が首をかしげながら言う
「完全無償化はさすがにないと思うけど
平民にも習学させようとするんだし安くしてくれるんじゃないのかな」
「そ、そうよねぇ わたしのお父さん達 畑仕事してるし
そんなに余裕あるとは思えないし」
「それは…ぼくの家も同じだからねぇ はぁ
習学も計算もある程度出来てるから…そんなに必要性が」
「うん それに冒険者とかハンター稼業も
ダメージ無効装備をつけているしねぇ」
美穂は苦笑いをしながら言う
「ハンターとしてのルールとか
そう言う勉強は習っておきたいとは思うけどね」
「その辺は そうだよね うん」
学校の話が一段落すると俺は違う話を美穂に話す
「それで…みほちゃん お互いに別行動することもあるし
連絡手段必要だと思うけど…いい?」
俺がそう言うと美穂は驚いた様子だった
「別行動ある?」
「学校が始まったらクラスも別々になるかもしれないし
昨日の夜にお父さん達の話を聞いたあと
みほちゃんと話そうとしても夜だったし…」
「あ、あぁ…さすがに夜とか会いに来るのも難しいものね」
「だから…お互いに部屋にいても会話できるように」
「それって…ゆきくんの前世の方で当たり前にあったものだよね
電話自体はこの国にもあるようだけど…
わたしはみたことないし」
「うん 電話 と言うかビデオ通話もあるけど
指輪にはすでに機能としては組み込まれていたりはするんだけど」
「えっ? どうして教えてくれなかったの? むぅ」
少しむっとした表情になってしまう美穂を見て
やばいと思って即座に謝る
「ごめんなさい」
「そ、それで…どうするの? やり方」
謝る俺を見て仕方ないなぁって表情になりながら
やり方を聞いてくる美穂にやり方を説明する
「基本的に指輪は念じれば色々出来るから
とりあえず、試しに部屋の外にぼくが行くから」
「うん」
「ぼくが出たら指輪にぼく宛に通話もしくはビデオ通話と念じてみて」
「うん わかった」
俺は説明を終えると部屋から出ていく
すると美穂から通話が届く
「ゆきくん 聞こえる? これでいい?」
「うん 聞こえる それが通話ね」
「うん ちゃんと聞こえる」
「切るときは通話切断と念じて」
「うん わかった」
「今度はぼくからビデオ通話送るから受け取って」
「うん じゃあ、切るね」
美穂が通話切断を行ったあと
俺は美穂にビデオ通話をリクエスト送る
「ゆきくん リクエスト受け取るとウインドウにゆきくんの姿見えるよ」
美穂はビデオ通話に驚いている
「それがビデオ通話ね みほちゃんの驚いてる顔もみえるよ」
「も、もう…でもこれ…日本では魔法を使わなくても出来てるんだよね」
「うん 前世ではこういう電話が普及していたから」
「ほんと いろいろとすごいよねぇ あと100年かぁ いいなぁ」
「100年はぼくたち生きていない時代だもんね」
「そうよね ゆきくんの能力なら死なないことも出来そうだけどね」
「それすると…みほちゃんとぼく 世の中から離れないと」
「うん ずっと生きているなんて…だもんね」
「みほちゃんがいいなら…人間やめてずっと一緒にいたいけど」
「もう…わたしと永遠にいたいの?」
「いや?」
「ううん ありがと ゆきくんとこれからも一緒ね」
「うん」
俺はビデオ通話を切ってから部屋に戻ると
お互いの顔を見つめ合いお互いに赤くなる
しばらくしてから美穂は話を変える
「ゆきくん おしえてほしいことあるんだけどいい?」
「うん?」
「わたし 時々 わたしじゃない誰かの感情とか
その誰かから見てるシーンとかみえるんだけど
これってどういうこと?」
美穂がそう尋ねてきた
誰かの感情が流れてくるって双子ならありそうだが
彼女は双子なのか
「うーん 思いつくことはあるんだけど…」
俺は遠慮しがちに言う
美穂はそんな俺を見て微笑む
「確証がないのね?」
「うん あってるかどうかはわからない」
「それでもいいから聞かせて」
美穂が真剣に言うのを見て話すことにする
「前世で科学的に実証されているかどうかはわからないけど
双子にはお互いに共鳴し合う不思議な力があるらしいとか
そういうのが情報としてあったの」
美穂は俺の話を聞きながら考え込んでいる
「そうなると…わたしじゃない その人はわたしと双子ってこと?」
「みほちゃん…姉妹とかいないよね」
「うん 一人っ子のはずなんだけど…ね?」
「うーん そうなると…わからないよねぇ」
「うん でも、お父さん達がなにか隠している可能性もあるし」
「そっか ぼくたちだって親に隠し事多いもんね」
「うん 色々隠してるもんね だから隠し事あっても不思議ではないから」
「とりあえず、なにかあっても驚かないことにしよう」
「そうだね」
美穂との会話も終わると美穂は自宅に帰っていく
(双子の可能性かぁ)
俺はその可能性を頭の片隅におくことにした