99話 刀術
俺は皇室に飛んで近くにいた侍女さんに声をかける
「あのぉ…」
「あら 幸正様 いらっしゃいませ
未来様と一緒ではないのですか?」
「あ みくちゃんなら今 家で唐揚げ作りをしていると思います」
「唐揚げですか? どのような料理なのでしょう?」
侍女さんが首をかしげて聞いてくる
「鶏肉に片栗粉をまぶして油で揚げたものです」
俺はウインドウを表示させて
唐揚げの写真を見せながら説明する
「なるほど もしかして今晩のおかずになられます?」
「はい おそらく 侍女さん達と護衛さん達の分もふくめて
持ち帰ってくるとは思います
足りなかった場合はみくちゃんに作り方
教わってください」
「えっ? いいのですか? ありがとうございます」
「一応100串は作る予定になってるので」
「そ、そんなに?」
侍女さんがびっくりした様子で言う
「それで足りるかどうかはわかりませんが」
「何家族分なのです?」
「えっと ほくとみほちゃんの家で7人と
めいちゃん…呉服店の子だけど3人分
あとはこちらにも…だと思います」
「なるほど 楽しみにしてますね」
「はい それでちょっとお願いがあるのですが」
「なんでしょうか?」
「どなたか…護衛の人で刀を扱える人
紹介して貰えませんか?」
「刀ですか 一応 陛下やゆかり様にも報告しますが
よろしいですか?」
「はい」
「少々 お待ちください」
侍女さんが俺に一礼をして足早に報告しにむかってくれた
しばらくすると…ゆかり妃殿下と
腰に刀を挿している護衛の方がやってくる
「幸正 いらっしゃい 未来の方は唐揚げ作りなのですね」
「おじゃましてます はい みくちゃんは家の台所で
お母さんとめいちゃんと一緒に唐揚げ作りしていると思います」
「なるほど それで刀の扱い方ですか?」
「はい 56階層で刀を入手しまして
ぼくが持つことになりまして…扱い方を
習いたくて…」
「そうなのですね 刀なんて持たなくても十分強いと思いますが…」
俺は炎刀をアイテムボックスから取り出す
「こちらです」
「これは…炎の刀ですか」
「はい 火属性の攻撃力30パーセントアップもあります
装備しているだけでも十分恩恵はありますけど
せっかくなら使ってみたいと思いまして」
「なるほど 剣斗 あなた 確か…樹一刀流でしたよね」
「はっ、わが一族の流派は身につけております」
剣斗と呼ばれた護衛の方
樹一刀流…樹? 宗人の血筋のひと?
「あの…もしかして宗人おじさんとは兄弟かなにかですか?」
「はい あれは自分の弟に当たります」
「そうなのですね 樹一刀流というのは?」
「自分の家の本家に当たる家が師範を務めている流派です」
「なるほど 剣斗さんは部外者に教えても?」
「幸正様は部外者ではないと思いますし
なにより…ゆかり様の御命令ですので
本家も了承すると思います」
「わかりました ぼくは全くの素人です
前世でも両手は使えなかったし運動はなにもしてないので
経験はなにもないので」
「と言いましても基本的な体力等は備わっているのでは?」
「そこは…はい」
「なら、問題ございません」
「ありがとうございます」
剣斗との話がまとまったのを見て
ゆかり妃殿下は口を開く
「話がまとまったみたいですね
わたくしは部屋に戻りますので剣斗 後はお願いね」
「はっ」
剣斗がゆかり妃殿下に一礼をする
それを見てから部屋に戻っていくゆかり妃殿下を
見送った後あらためて剣斗と話をする
「急なことで申し訳ありません」
「いえいえ こないだの55階層の幸正様達の戦い方を見ているものとしては
接近戦の必要性がないのでは?と思いますが」
「あはは 離れたところから始末していることの方が
多いですからね ぼくたち」
「はい なのに刀…ですか」
「せっかく持ち歩くわけですから使いたいなと」
「確かに 飾りだともったいないですね」
「それで…どこか広い場所に移動した方がいいと思うのですが」
「そうですね 訓練場が屋敷の裏側にありますので
そちらに」
「はい」
俺は剣斗に案内され練習場に移動する
そこは学校の校庭ほどの広さがあり
練習用の刃落ちした刀などがおかれていた
「練習用の刀をお持ちください」
「はい」
俺は14歳の姿になり刀を受け取り腰に挿す
「握り方から教えますので…」
剣斗は刀の持ち方と握り方を細かく教えてくる
「まず、反りになってる方を下に向くように腰に挿します」
「はい」
「左手は鯉口にあわせるように握り親指を刀の鍔に斜めに当てる」
「はい」
「右手は親指と人差し指の間を下から柄にあて
小指に力を入れて他の指は軽く握る」
「基本的な握り方はこんなところです」
俺は教わりながら握っていく
「あの 反りを身体側に向けるのは?」
「抜刀するときはその場合もあると思います」
「なるほど 抜刀時に右足を踏み込むんですよね?」
「はい そうですね」
このあとも細かい指導を受ける
「とりあえず、真剣を持って用意した竹の束を切る練習をして見ましょうか?」
「はい」
「まずは基本的な切り方から…上から下
斜め上から下へ左右、斜め下から上への左右
右から左、左から右 下から上と言った9方向の切り方で」
「はい」
俺は9方向の切り方を何回も繰り返していく
約2時間以上…この繰り返しをしていた
剣斗はそれにつきっきりで時々振り下ろし方の指摘をしつつ
俺に指導してくれていた
「長い時間 ありがとうございます」
「いえいえ やはり上達は早いみたいですね」
「はい スキルによるものですが」
成長倍増スキルによるものだろう
しっかりと刀術スキルも手に入ったようだ
「時間も時間なのでそろそろお開きにしますが
毎日 ここには誰か彼かいると思いますので
気楽に練習なさってください」
「ありがとうございます 4時から6時まで
使わせて貰います」
「はい 最後に竹の束置きますので…どうぞ」
剣斗が竹の束を設置すると俺にそう言う
「ありがとうございます 抜刀からでいきます」
俺は腰を低くして前屈みになり
左足を前に出して右足をやや後ろにすると
右足を前に踏み出すと同時に左足で後ろに蹴り付け
竹の束めがけて移動していき
竹の束手前で抜刀して
左斜め下から右斜め上へ振り抜く
ズバッと音が鳴ると同時に
竹の束が斜めにずれ落ちる
「ふぅ…うまくできた?」
「問題ないですね 足の踏み込み方とか
教えてなかったのですが…」
「あ これは前世で好きだった漫画の記憶から参考にしました」
俺はそう言いながらウインドウに
その漫画を表示させる
幕末を舞台にした…それ
「こういう漫画?も色々あるんですね
服装見ると…今の我々に近い服装ですよね」
「はい そうですね だから
この国も色々変われると思うのです」
「なるほど 幸正様方がなにをもたらしてくれるのか
今後も楽しみにしてます」
「今日はありがとうございました」
「いえいえ それではわたしはこれで」
「はい ぼくもこのまま戻ります」
俺は剣斗と別れて帰宅するのだった
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