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「まさかあなたが生きているとは思わなかったわ」


 弟の死体が発見された林の中で私は男と向き合っていた。


「死ぬ事ならいつでもできる。それなら、この命尽きるまで、彼女が最期まで気にかけていた貴女を見守りたかったんだ」


 男、女公爵の夫で公爵家の家令だった私の義父、弟の形式上の父親は、そう言った。


 女公爵の妹、私の生母の日記には、彼の言う通り、最期まで(わたし)を気にかけている言葉が書かれていた。自分の弱い体では出産に耐えられず、我が子の誕生は自分の死と引き換えだのに、何より、望まない行為の結果だのに、生まれてくる子には罪はないのだと、自分の分も生きてほしいのだと望んでくれていた。


「……彼女は、私の生母は、あなたを愛していなかったのに? だのに、どうして、その彼女の娘である私を最期まで守りたいと思えるの?」


 私の生母は、娘である私と姉である女公爵を愛していた。


 けれど、義父の事は、姉の想い人で公爵家の家令としか見ていなかった。


 私の容姿は生母に似ているという。ならば、彼女もまた平凡な容姿で、日記を読む限り、自分に男をけしかけ子を孕ませ、出産(その)せいで自分を死なせると分かっている姉を最期まで愛していたのを除けば、ごく普通の女性だった。


 私から見れば、男性が惹かれる要素などまるでない女性なのだ。


 何の魅力もなく自分を何とも思っていない女をなぜ愛せたのだろう?


 しかも、彼は彼女の願いだからと憎んでいた彼女の姉と結婚し、彼女を死なせた娘を見守ってきたのだ。


 なぜ、そこまでできたのか、私には理解できない。


「それでも、()()愛していたんだ。貴女にも誰にも理解できなくていい。この想いは、私だけのものだから」


「……そうね。他人があれこれ言う事ではないわね」


 義父の言う通り、彼の想いは彼だけのものだ。私があれこれ口を挟む事ではなかった。



次話で完結します。

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