エルフと不老不死の少女2
エルフ…自然と豊かさを司る小神族
エルフはその見る者が呼吸を忘れてしまうほどの美しさや自然との相性の良さから人間族から異常なほど執着されてしまうが、エルフは人間族を拒んだそのため当時のエルフの長の娘が人間族にさらわれてしまった。
それが今から約3000年ほど前の話だ。
「すまなかったの…」
カガチは前にいるエルフから口初めにそう言われた。
カガチは自身を射ってきたエルフに自身が『不老不死の少女』であることを伝えると、すぐにこの部屋に連れられてきた。
部屋は全て木や蔦でできており自然と豊かさを司る小神族らしい作りになっていた。
「はぁ…いや別に気にしてませんよ。私は不老不死ですから。」
カガチの目の前にいるエルフをチラ見する。見た目は人間の年で表すと60〜70代ほどのご老人のような見た目をしている。
(まぁ、エルフだからそれの倍なんだろうけど。前来たとき見た長じゃないから最大で3000歳か…)
カガチは出されたお茶をすすりながら、そんなことを考える。
「それで本題に入りたいんじゃけど、ええかのぉカガチ様」
本題そう言われカガチはお茶をテーブルに置き姿勢を整える。
「はい、大丈夫です。」
カガチは返事をし話を続ける
「前長の娘のお話ですね。居場所と警備の配置そして長の娘の存在を知っている者の確認は3000年のうちにすべて済ませています。」
カガチは羽織っているコートの中から1枚の折りたたんである紙をだし現長であるペルドタスに差し出す。
「すまんのぅ、カガチ様やエルフはこの森から出られんばかりに貴方様にご足労していただき…」
ペルドタスはカガチに謝罪もとい、言い訳のようなものを口にする。
「いいえ、大丈夫です。それにこの約束は前長のから共通通貨をいただいたしっかりとした依頼なので。」
「………ですが」
カガチはペルドタスに渡そうとした紙を自分の方に寄せた。
そして…
「とぼけたフリをしなくても結構ですよ、ペルドタス様。」
「……」
カガチの冷たい一声で部屋の空気が氷点下にまで下がった。
「……はて、なんのことですかねぇ?」
それでもペルドタスはとぼけたフリを続ける。
「とぼけたフリを続けるのも別にかまいませんが、」
「………」
ペルドタスは微かに唇を動かす。
「本当はお気づきになっているんですよね?」
「…っ……」
ペルドタスの体が微かにこわばった。
「前長の娘を取り返してもメリットはなく…」
「…………れ」
ペルドタスはカガチの方を見ながらやめてくれとそんな表情を浮かべ
「むしろデメリットしかないことは…」
「黙れっっッッッ!!!!」
ペルドタスの怒鳴り声が部屋全体に響く。
「いえ、黙りません。約束をしてきたのはそちらですよね?なのに今になって都合の良い言葉しかいらないというのはどうかと思いますよ。ペルドタス様」
カガチは淡々とただ思ったことを言った。
そう、デメリットしかないこの発言はペルドタスの核心をついたそして彼が怒った理由だ。
前長の娘を取り返しても起こるのはどうせ戦争だ。人間族とエルフの戦争。
それがデメリットだ。
「それでも…、ワシは、オレはッ!!…妹を……、イクレラをッッ…、」
そう、現長ペルドタスの妹こそが攫われた娘なのだ。
カガチはそれを知っていながら現実を突きつけた。お前の妹が戻ってくると戦争になるぞと…
「…私が得た情報は以上です。」
カガチはペルドタスの妹、イクレラが攫われ今いる場所、警備の配置を記述した紙を机の上に置き、椅子から立ち上がる。
ペルドタスは魂が籠もってるのかさえも怪しい表情をしていた。
(言い過ぎたとは思わないけど、同情はしてしまうな…)
カガチは3000年前の約束はすべて果たしたため退室しようドアに指をかけた。
「…あっ、これ」
カガチは何かを思い出したようにコートの中から手紙を一通ペルドタスに差し出す。
「……これは…」
先程まで、なんの感情も籠もっていなかったペルドタスが問いてきた。
「ペルドタス様宛の手紙です。」
端的にアホでも分かるように説明し、カガチはエルフの住処であるこの森から早く出た。




