エルフと不老不死の少女
そこは森であった
ただの森ではなく、木は近づく者を包み込むように、草は己を踏む者を傷つけないように、陽の光は暖かくも優しく…まるでその地に入ってきた者を癒やすような森であった。
「………」
その森に、一人の少女がいた。
己の体躯よりも大きな灰色なコートを着用し、フードを被っている。
フードのせいで顔自体は見えないがコートからちらりと見える細い手首は白皙でありそれでいて傷一つすらない。
足元は少し見てる程度で靴は履き潰されてはいないがかなり土で汚れている。
「………」
その少女の名は………杼商 加月
加月と書いて『カガチ』なかなかに変な名前だがいまの世界には『漢字』を使う国は両手で数えれる程度しかない。
「ザッ、ザッッ」
カガチは知ったふうに森の中をひたすらに歩く。
まるで何度もこの森に出入りしたようにだ。
しかし、それは不思議な話だこの森はなんの目印もないただの木と草と優しい光と虫と鳥と川しかない。
「っ、……」
その刹那カガチは地面を蹴り左へと移動し、即座に木の陰に己の体を隠れ守った。
そして、先程までいたところから少し右にある木を盗み見る。
「………チッ、」
カガチが木の陰に隠れたことに対しての苛立ちからきた舌打ちか、それとも不意打ちの攻撃を当てたのに即座に反応したカガチにもう一度攻撃しようと己を奮いだたせるための舌打ちか。
(エルフが、2人…いや3人か……)
木の上からカガチを矢で攻撃してきたのは、エルフである。
(やっぱエルフなんて長寿のくせに恩を忘れ恩を仇で返すクソ種族だな…)
カガチは己の右腕に刺さった矢を左手で無理矢理引っこ抜く。
「…………」
(さすが自然を司る妖精ことエルフだな…クソだけど、いや本当にクソだけど、さてと)
カガチはこの森の中で己を矢で射ったことに称賛するが恩を忘れたクソエルフに対しての腹を立てながら右腕から引っこ抜いた矢を持ったまま木の陰から姿を表した。
そして
「私は、貴方達の敵じゃなくって3000年前にした約束を果たしに来たんだよ。」
そう言い放った。




