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たった六ヶ月のラプソディ  作者: ライトさん
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女の子開始

子ども頃から物語を読むのが好きで、何時か自分自身の物語も書いてみたい。そんな思いを抱いて早幾年。書き始めるのももの凄く難しいけれども、それよりももっと書き続けることは難しい。そしてそれよりももっともっととんでもなく終わらせることは難しい。

多くの方々が見事に物語を書き上げ、そして終わらせ切っておられること、本当に尊敬してしまいます。適うなら何時かそんな皆さんの仲間入りが出来たなら、そして誰かの心を満たすことが出来たなら、その時は私にとって最高の一時になる…なりますように!


 さてそれからのウイークデーは、本当に十年一日のごとくで、当たり前の日々が続いた。

いや、その週だけじゃない。その後約一月間に渡って極々平穏なしかしながら地獄のような日々が続いた。

その忙しさの性なのか?或いはもしかすると女の子になったと言うショッキングな経験のせいもあったのかも知れない。僕はいつの間にかすっかりと心の痛みを忘れることが出来て居た。


 そう考えるとあの短い女の子の期間もまんざらではなかったのかも知れない。

でも今となってみるとはたして僕は女の子になっていたのだろうか?今でも全てが夢のような気がしてしまう。


 やがてその一月の終わりの頃、馬鹿みたいに忙しい月末の仕事を終えた僕は、へろへろになって家に帰ってきた。

 明日は土曜日。ようやっとのことだ、今週一週間は長かった。


 風呂から上がった僕はせっかくの金曜日のこの時間、そのまま寝てしまうのがなんだかもったいなくて、何とか少しでも起きていようとあがいていた。


「このまま寝てしまうのも何だか悔しいなあ。とにかく熱いお茶でも入れてみるか」


 そう考えていた僕は、あの時のことをすっかり忘れてしまって居た。

そして、ただ目を覚ますことだけを考えて母のお茶を入れようとしていた。


 急須の中に入れられた葉に、湯を注ぐと何とも芳しい香りがする。

これだけ様々なものが溢れている世の中なのに、この香りだけは嗅いだことがないというのも不思議なことだ。


 お気に入りのカップにゆっくりとお茶を注ぐ。最後の一滴までも残さないように丁寧にお茶を振り切ると、湯気の立つその液体をカップから静にすすり込んだ。


「う・・・ん、美味い」


 体中の感覚が冴え渡っていくような感じがすると言ったら大げさだろうか?鼻腔を通じて脳の隅々まで染み渡るような香気を存分に楽しむ。


 そうこうする内に勝手にまぶたが下がってきた。

残念ながらお茶の力で覚醒することは無理なようだった。

読みたい本を手に持ちながらも、その本のページを開いていることすら出来なかった。


 仕方なく僕は本を放り出すとベッドの上に身を横たえた。それこそあっという間に睡魔に降伏。何も心配のない安らかな眠りだった。


 翌朝目が覚めた僕は、しっかり睡眠を取った後の爽快感を感じていた。

綺麗に身体の疲れが取れて、まるで生まれ変わったかのような気分だった。

 思いっきり伸びをする。なんて気持ちの良い朝なんだ。

今日はちょっとどこかに出かけてみるか?そんな思いすらする。


 おもむろにベッドから降り、歯を磨きに洗面所に向かう。


「ええええええ?」


 そこの鏡にはびっくり仰天、ドングリ眼をした例の女の子が居た。

そ、そんな馬鹿な。でも、そうか、やっぱりこの間のことは夢じゃなかったんだ。

でも一体また何で?


 そこで僕はとうとう思い当たったんだ、その原因らしきことに。

僕は飛ぶようにキッチンに行くと


「こいつか?」


 そう言いながらお茶の葉の入った小さな壷を持ち上げた。

考えてみたら以前女の子になった時も、前日にこのお茶を飲んでいる。

 ああ、母さん。あなたはなんて言うお茶を息子に残していったんだ。


 僕は思わず天を仰ぎ見た。しかし二回目ともなると前回よりは少し余裕らしきものがあった。


「待てよ、確か前回は金曜の夜にお茶を飲んで、月曜の朝に男に戻っていた。と言うことはあのお茶の効力は二日間なのじゃないかな?」


 前例とは言ってもたった一回のことでしかなかったから、それが百パーセント正しいとは言い切れない。

 でも今はそれを信じてみるしかなかった。月曜の朝に戻っていたなら、いや、戻るに違いない。僕は自分自身にそう言い聞かせることにした。


 戻れると言う思いがあると、前回よりもほんの少し落ち着いて居ることが出来た。

そのせいだろうか?せっかくの休みにこのまま家にばかり居るのももったいないし、女の子の格好のままでもかまわないから少し出かけてみたいと思った。


 桜はもうとっくの昔に咲き終えてしまったけれども、春のこの時期、見る花は沢山ある。


 僕はデジカメを引っ張り出すとバッテリーがちゃんと充電されているのを確認した。

僕は何気ない花やなんかを写真にするのが大好きなのだった。


 例によってだぶだぶのズボンや服は仕方がない。細々としたものをポケットに入れられるのが便利なのでジャケットも羽織ることにした。


 家を出るとまさに好天、部屋の中になんかじっとしていられないくらい良い天気だった。


 カメラの紐を肩からかけ、靴を相変わらずかぱかぱさせながら、(靴だけはいつか買っておくかな?)僕は歩き始めた。


 家の近くにある大きな緑地公園に向かうのだけれど、未だ少し早い時間と言うこともあって行き交う人の数も少ない。


 だから見られても時々だったし、慣れもあったから前のように焦ることはなかった。やがて更に慣れてくると、割と自信をもって彼らの視線を受け止めることが出来た。

おかしなものでこちらを見ていても、逆にこちらが見返すと人は視線をそらしてしまうものらしい。


 僕はだんだんとそのこつを掴みながら、ふとあることに気がついた。みんなの視線が顔だけじゃなくて、時折?胸にも行くのだ。何で?


 そう思って自分の胸を見た僕は、思わすしゃがみ込んでしまった。

そんなに豊満ともいえない僕の?胸なのだったけれど、大きめのティーシャツの下で、その・・・バストの先がつんと膨らんで見えている。


 僕は慌ててジャケットの前を閉めた。そうか、時々みんな妙な表情をしていたのはこのせいだったんだ。


 僕は思わず真っ赤になってしまった。これでは公園に行くどころではない。

でも、だからといってまた家で大人しくしていなくてはならないのか?僕にはそれが何とも悔しくて仕方がなかった。


 これを解決するには・・・、たった一つの方法しかない。僕はその一つの方法を実現するために少し離れたところにある大きなスーパーに向かった。

そのスーパーなら女性用の衣類などは一つのフロアに皆そろっている。


 とてもじゃないけど、僕には女性用のランジェリー専門店に行く勇気はなかった。

心の中の僕は自分が男だって知っているから、そんな風に女性ものばかりで成り立っている店に行くのはどうにも気が引けたのだ。


 あくまで普段の僕はノーマルだし、(もちろん人はそれぞれなんだろうけれども)僕自身には女装の趣味はなかった。だから例え何処で品物を買おうとも、僕には後ろめたさをぬぐい去ることが出来なかった。


 しかし今はそうも言っていられない。実際今の僕は正真正銘の女なんだし・・・、止む終えない事情と言うことで僕は自分自身の心を納得させて、多少のことには目を瞑ることにした。


 普段意識していないときには、そう言う女性用のフロアを通ったりするのは何でもないことだった。


 だが一端意識し始めるとなんとも妙な気分で落ち着かない。

他の下着はともかくブラと来たら一体どうしたら良いんだ?AだのBだのって言われてもさっぱり分からないし、アンダーバストって何だ?


 それこそ赤くなったり青くなったりしながら売り場の前で立ち往生していると、普段の僕と(つまり男の)同じくらい?もしくは少し上かな?近くにいた店員が手助けに来てくれた。


 とても綺麗な人なのだけれど、営業スマイルと言うには少し優しすぎる笑みを浮かべている。


「ブラをお探しですか?もし良かったらお計りしましょうか?」


 僕は顔を真っ赤にしながら下を向いてしまった。今の僕には彼女の顔を見ることが出来なかった。でも辛うじて頷いてみせる。


 僕は彼女に引き連れられるがままに試着室の方に向かった。計るのに少し邪魔になると言うことなのでジャケットを脱ぐ。


 おやっという感じて見たので、彼女には僕がノーブラであることが分かったに違いない。

でもそれ以上は何の表情も見せずに、優しい笑顔のままサイズを測ってくれた。


「お客様のサイズは・・・、ですのであちらのコーナーの物などが良いかと」


 彼女の指し示す方に行き、またそこで立ちつくす。一体こんなに沢山の中からどうやって選べばいいのだ?


 すると側に控えていてくれた彼女は、これとこれはどうかといくつかシンプルな物を選んでくれた。


 僕には彼女が僕のことをどう思っているのかは分からない。でも少なくともとっても親切に応対してくれていることだけは良く分かった。


 僕は彼女の出してくれた物の中から二つを選ぶとそれをかごに入れた。

しかし他にも買う物がある。下着やスカートその他諸々の物。そんなに沢山買うわけにも行かないけれど、せめて二三組はないといずれ困るのは目に見えている。

で、またおたおたしていると、再び彼女が助けてくれた。


 たっぷり二時間はうろうろしただろうか?僕にとってはそれこそ一生分の時間をかけたような気がしていた。


 数点の衣類やら下着やらを抱えてレジの前に立つ。俯きながら今まで世話になっている店員にそっとカードを差し出す。僕はこの時ほど自分の名前に感謝したことはない。


 子供の頃には女の名前みたいと言われて、時々嫌な思いをしたこともあったのだけど、今はその名前のお陰で助かっている。


「合わせて・・・円になります」


 そう言うと彼女は素早く売上げ処理をし、てきぱきと買い上げたものを包んでくれた。

僕は彼女から手渡された袋を持つと、小さな声でようやっと言った。


「あの・・・今日はありがとうございました」


すると彼女はにこやかに微笑んで見せながら言った。


「なんだかね、あなた、私の田舎にいる妹によく似ていたの。だからちょっと気になっちゃって・・・」


 なるほどそうか、僕は彼女の視線の優しさの意味を理解した気がした。

僕はもう一度ぺこりと頭を下げるとその場を去った。


 家に帰り着いた僕は早速包みを解いた。

すっかり汗をかいていたので一度シャワーを浴びる。バスタオルで綺麗に水分を拭い、いざ衣類を身につけてみる訳なのだが、心臓の動悸が大きくて気分が悪くなりそうな気がした。


「静まれ、静まれ、心臓・・・」


 ようやっとの事で全ての衣類を着け終わった。

薄いベージュのキュロットスカートに薄い青とオフホワイトのボーダーのティーシャツ。鏡の中からこちらを見る女の子は、何とも素朴で可愛かった。

 買い物の途中に気がついて、肩から提げる小さなポーチも買ったのだけれど、それもよく似合っていた。


 僕がほぅっとため息をつくとその子もため息をつく。頬に触れるとその子も触れる。何とも不思議な感覚だった。


 しかしこうしていても仕方がない。僕は最初の思い通りに散歩に出かけることにした。

さっき買ったばかりの新品のスニーカーに足を入れる。

デジカメ片手にそっと玄関から顔を出す。誰もいない。


 僕は軽やかに通りに駆け出していった。近所の緑地公園まではあっという間だった。

日差しは少しきついけれども風が爽やかでとっても気持ちが良い。


 あちらこちらで色々な草木が花を付けている。そのどれをとってみてもとっても綺麗なのだけど、でもいざカメラを構えると色々な物が見えてくる。


 ほんの少し花びらが虫にかじられていたり、左右が対称でなかったり、盛りを過ぎていたり。


 だからこれって思う物を撮る時には、僕にとってこれしかないって思うものを必死になって探す。


 でもそうやって撮っても大抵は満足できるような物は撮れない。少し良いかなって思うのが数十枚に一枚もあれば良い方だ。


 だから良い写真を沢山撮ろうと思ったら、数を沢山撮るしかなかった。

夢中になって撮っている内にふと気がつくと、背後に誰かが立っていた。


「お嬢さん・・・」


びっくりした僕は振り返りざま、危うくこけてしまいそうになった。


「おっとっと、大丈夫ですか?」


 そう言ってこけかけた僕を受け止めてくれたのは、まだまだ健在と言った感じのするの一人の老人だった。


「ごめんなさい・・・」


僕は彼の手を離れると、慌てて消え入るような声で非礼をわびた。


「いやいや、謝るとしたら私の方だよ、急に声をかけてしまってごめんね」


「いえ、そんな」


すると彼はにっこり微笑みながら聞いてきた。


「ところであなたは何を撮っていたのですか?」


 そこで僕は乱雑に生えそろっている雑草の中に、ひょっこりを顔を出しているアザミの花を指さした。


「なるほど、その花でしたか。私の方からは何も見えなかったものですから、一体何を撮られているのだろうと、勝手ながら興味を持ってしまいました」


そう言いながら彼はアザミの前にしゃがみ込んだ。


「こんな雑草の中に一輪だけ有るアザミの花を愛でるとは、お嬢さんも目の良い方ですな」


 そう言うと彼は目を細めて可憐に咲く紫の花を眺めていた。


 一陣の風が吹く、日の光に暖められて醸し出されていた草いきれが、さっと吹き払われて心地よい。


「私もこの公園で咲く、様々な花々達を見るのが大好きなのですよ」


そう言うと彼はその場で立ち上がり、僕の方を向いた。


「ああ、失礼。名前も未だ名乗っておりませんでしたな。吉崎浩二と申します。ま、こんなおじいさんが名乗ったとて何の興味も湧かないでしょうがな」


そう言うと彼は涼しげに笑った。


 再び風が吹き、僕の髪を吹き散らす。思わず僕は手を挙げ、乱れた髪を指で梳きながら耳の後にまとめた。

そんな僕の仕草をその吉崎と名乗った男は見つめ、つと首をかしげた。


「どうかされました?」


 僕は最低限、男言葉にならないように気遣いながら問いかけた。

すると彼は苦笑しながら言った。


「いえね、記憶の奥底にある何かがふっと甦りそうになったのですが、結局それが何なのか思い出せずじまいでした。だめですな、年を取るとこんなことばかりが増えてしまう」


そこで僕は自己紹介していないことに気がついて名乗った。


「ぼ・・・私は、佐山良美と言います」


 本名をそのまま名乗ったが、別にかまわないだろう。

すると彼は僕に向かって軽く会釈した。


「これはこれは、ありがとうございます。しかしよくわきまえたお嬢さんですな。わざわざ名乗ってくださるとは」


 僕はまさか礼を言われるとは思っていなかったので少し慌ててしまった。


「いえ、そんな、そちらはちゃんと名乗られたのですからそれは・・・」


「しかし最近の若い方には、そう言う方は少ないですからな」


そう言うと彼はにっこりと微笑んだ。


「さて、これ以上あなたの楽しみをじゃましても申し訳無い、私はそろそろ失礼するとします」


 彼は軽く会釈をするとゆっくりとした足取りで立ち去っていった。

僕はと言うと、突然見ず知らずの人から話しかけられた当惑と、それが決して不快なものではなかったことに対する不思議な思いを胸に抱えた。


 元々僕は人付き合いが上手な方ではなかったので、その思いは殊更のものがあった。

吹いては止まり、また吹いては止まる風になぶられてアザミの花がゆらゆらと揺れる。


 僕は気を取り直して再び何枚かその花の写真を撮った。何故かその紫の色が目にしみる、そんな思いを感じながら・・・。


 それからものの三時間ぐらいは公園にいただろうか?下手の横好きとはよく言ったものだ。多分ほとんど破棄しなくてはならないであろう写真が二百枚ほどになった時点で、僕はその日の撮影を終えることにした。


 本当はもう少し撮っていたかったのだが、露出した肌が日に焼けて痛かったのだ。

僕は首をかしげた。この程度の日差しなら半日位あたっていても全然平気なのに、どうしてだろう?


 そこで思い出した、自分が今女の子なんだってことを。

吉崎氏に会っている時は意識して女の子であることを気に留めていたのだが、写真を撮ることに夢中になっている間に、すっかりそのことを忘れてしまっていた。


 この女の子・・・って自分のことなのだけど、男である僕よりも大分肌が弱いみたいだ。

そう言えば母がよく言っていたっけ。女性はどんなところに言っても余り肌を焼かないようにしてないと、後で染みになって大変だって。

そのくせ自分はインドのような南の国にどんどん出かけていたのだけれど。


 果たしてそれが今の僕に当てはまることなのかどうか分からないのだけど、肌の痛みを考えると留意しておかなくてはならないことなんだろう。

僕は頭の片隅でそのことを忘れないようにしておこうと思った。


 公園を後にして家に帰り着いた僕は、早速カメラのデータをパソコンに落とし込み、一つずつチェックを始めた。

面倒くさいけれどもここが肝心だ。その日見たものをその記憶が新しい内にやって置かなくてはならない。


 僕の写真を撮る腕がへぼだってこともあるけど、いくら気をつけて撮っても大抵写真は目で見たとおりには撮れていない。大概どこか違うところがある。


 だから僕はその時自分が見たと思った状態になるように、写真を色々いじってコントロールするのだ。もちろんそれは写真を撮る本来の行為から言うと、とっても邪道なことなのかも知れない。


 でも僕は、写真を撮る行為そのものよりも、自分がこんなのを見たのだよって言う思いをこそ伝えたいから、敢えてその心のイメージの方を大切にすることにしている。


 時々良いものが撮れるとネットのサイトにアップしている。でもアップできるほど良い写真が撮れることは滅多にない。


 だからこそアップ出来た時は本当に嬉しい。そして何よりも嬉しいのが、時折その写真を見たと言ってメールを貰えることだった。


 きっとその瞬間は、その人と僕、どんなに遠く離れていても心の奥底どこかで繋がっているに違いない。そんな風に思えるのだった。


 そう言えば最近よくメールをくれる女の子はどうしているのだろう?

どこの誰なのか未だ全くそう言うことも話していないのだけど、僕の撮った写真のどれとどれにどう感じたって詳しく書いたメールをくれていた。


 僕は彼女の書いたその文章の中に、自分でも上手く表現できないようなことが巧に言葉として表現されていることに驚き、そして感動した。

だからその思いを少しでも伝えたくて、舌足らずながらもいつも出来るだけ丁寧な文章でメールをしたためていた。


 不思議なものでそうやって見てくれる人が居るって言うことが実感できると、ますます写真を撮ることに熱が入っていった。


 たった一枚の写真を介して繋がる人と人の思い。うん、だから人間て不思議だし、面白い。

さすがに二百枚からの写真を整理するのには暇がかかった。もちろんその多くのものがごくありふれた写真で、加工するにもあたわないようなものだった。(それ以外にも全然だめって言う写真もあったのだけど、こいつ等は即消去。)


 そう言った写真は日にちと通し番号を付けて、どんどんそれ用のファイルに落とし込んでいく。


 残った写真を今度はゆっくりと丁寧に見ていく。レタッチソフトを使いながら、そして自分がその日見た光景をしっかりと思い出しながら、心の中に残る情景にしっかりとマッチしていくよう少しずつ加工を加えていく。


 結局撮ってきた写真を全て加工し終わったのは翌日の昼頃だった。その中で最高のお気に入りをネットの自分のサイトに上げる。


 昨日あれだけ撮って、結局そのレベルにあったのは一枚だけだった。

吉崎氏と巡り会った時に撮っていたアザミ、その中の一枚が唯一のものだった。


 少し陰になった深い緑の雑草の中に鮮やかなアザミの紫が映える、そんな作品だった。こうしてみてみると雑草だってちゃんと役に立っている、そんな気がした。



前書きであんなことを書きながら、はたして私はどこいら辺まで来ることが出来て居るのだろうか?千里の道も一歩から、とにかくボチボチ行こか。

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