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たった六ヶ月のラプソディ  作者: ライトさん
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女の子とご馳走

いつも御拝読ありがとうございます

常にバタバタを繰り返していてここにも何を書き込んだら良いのか上手く考えられずに、ずるずると同じ文章を載せ続けていました。

そんな最中あちこちいじっていると、Ptが付いていたりブックマークがつけられていたり、読んで下さっている方が居られるのだなと、感動と共に感謝。

そんなに大きな山がある物語ではありませんが、一時でも皆さんの胸のうちに優しい時間が流れたら・・・そう願っております

「目が覚めた?」と亮子さん。


 山の合間から差し込んできている夕日が部屋の奥深くにまで入り込み、亮子さんの顔を真っ赤に染め上げていた。


「はい。ちょっと目を瞑るだけのつもりだったのに、ずいぶん寝てしまったみたいです」


僕は掛けてもらっていた布団を畳みながらそう言った。


「無邪気な顔して寝ているんだから・・・」


 亮子さんにそんな風に言われて僕は思わず顔を赤らめてしまった。でもこの夕日のお陰で彼女には多分分からなかっただろう。


「おなかの具合はどう?」


「そろそろ空いてきました」


 山陰に徐々に日が隠れていく。赤く輝いていた日の光が徐々にその強さを無くし、下の方からゆっくりとかじりとられていく。


「あと三十分くらいで食事だって言っていたわ」


 最後の光の矢が亮子さんの顔をかすめ、消えていった。するとみるみるうちに闇が迫ってくる。


「山間の日没はあっという間、すぐに闇が迫ってくる・・・」


そう言うと亮子さんは立ち上がって壁のそばに行き、部屋の明かりを灯した。


「でもね、その分早く星達と会えるの、ここから見る夜の空は圧倒的なんだから。私がこの地を大好きな理由の一つかな?」


彼女はそう言いながら僕のためにお茶を入れてくれた。


「はいどうぞ」


「ありがとうございます」


僕は礼を言うとそっと茶碗を唇に当て、静かにすすった。


「美味しい」


亮子さんは嬉しそうに微笑んだ。


「まだまだ母にはかなわないんだけど、私もお茶が好きだったからいつの間にか入れ上手になったかもね」


山向こうの残照も少しずつ絶え、次第に濃い紺の空が広がっていった。


「亮子さん・・・」


「良美ちゃん・・・」


二人が言葉にするのは同時だった。顔を見合わせて二人して笑う。


「お先にどうぞ良美ちゃん」


「いえ、亮子さんこそお先に」


「だぁーめ、妹はお姉ちゃんの言うことを聞くの」


僕は思わず苦笑いをした。


「いつから私は亮子さんの妹になったんですか?」


「うふふ、もうずっとよ、出会ったときからかしら?」


そう笑う亮子さんは本当に楽しそうだった。


「そう言えば亮子さんの本当の妹さんは?」


 僕は何気なしに彼女の本当の妹さんについて聞こうとした。すると亮子さんの顔が一瞬曇った。彼女のお母さんの時の反応と言い、どうしてだろう?


「それは明日、明日のこと」


そう言うと彼女は再びいつもの表情に戻った。いや、戻したと言うべきか?


「さあ、そろそろご飯出来たのじゃないかな?」


 亮子さんがそう言うか否かの最中、部屋の引き戸がするりと開いて、彼女のお母さんが入ってきた。


「お待たせしました、おなか空いたでしょう?」


彼女はそう言うと運んできた膳を僕と亮子さんの前に置いた。


「ああもう母さんたら、これから二人で下の食堂に行こうと思っていたのに」


僕も言い添える。


「そうですよ、わざわざお部屋まで・・・」


すると彼女は満面の笑みでにっこりとしながら言った。


「今はお客さんもほとんどいらっしゃらないし、亮子ちゃんの大切なお客様なんだから、これくらいのもてなしくらいさせてくださいな」


 見事なまでに母性を顕現させる彼女の笑みには否応がなかった。

僕が申し訳無く思いながら頭を下げていると、もう一人今度は年配の男性が入ってきた。


「亮子の父です、こんな遠いところまでよく来てくださいましたね」


そう言うとその男性は手に持っていた二の膳をさらに僕達の前に置いた。


「あ、佐山良美といいます。いつも亮子さんにお世話になっております」


 僕は頭を下げてそう言うのが精一杯だった。

そんな僕の顔を見た亮子さんのお父さんは、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をした。


「いや驚いた、本当に葵にそっくりな方だね。全く瓜二つって言っても良いくらいだなあ」


 そう言って僕のことを見つめるまなざしにふと涙が浮かぶ。それはいったい?

目聡くそれを見つけた亮子さんが鞄からハンカチを出して渡す。


「やだな父さんたら、何でこんなところで泣いているんだか」


 そう言うと彼女はそっと父親の肩を抱き、耳元で何かささやくと彼を部屋の外へと連れ出した。

そんな二人の姿を追う僕の視線。何故だか分からないのだが、心の奥底がしくしく痛む。


「あの・・・私、何かお気に障るようなことをしてしまったのでしょうか?」


すると亮子さんのお母さんは包み込むような暖かい笑みを浮かべながら言った。


「あなたが本当に下の娘に似ているから、きっとびっくりしたんだと思いますよ。あれは見かけは厳ついですが妙に涙もろいところが有りますから・・・」


 そう言うと彼女はつと部屋の外を見つめ、かすかに困ったなという表情を浮かべた。しかしそれは瞬きの間ほどのこと。

そうこうしているうちに亮子さんが部屋の外から帰ってきた。


「あーおなか空いた。後は自分達でやるから母さんは良いわよ」


亮子さんは全くいつもの亮子さんだ。


「そうかい?ならお前に任せるけど、何かあったら電話してね」


「はぁーい」


するとお母さんは丁寧に辞儀をした後部屋から出て行った。


「さあ食べよ食べよ」


 山女魚の焼き物からぷんとよい香りが立ち上っている。その香りが見事なまでに食欲を刺激する。しかし気になってどうしても聞かずにはいられなかった。


「お父さんはどうかされたのですか?私の顔を見るなり急に・・・」


 そう聞くと亮子さんはしばらく僕の顔を見つめていた。何事かが彼女の脳裏を駆けめぐっている、そんな風だった。


「心配?」


彼女は一言僕にそう聞いた。


「うん」


「そっか、でも今日は気にしないで、明日ちゃんと教えてあげるから。ね?」


 そう言うと彼女はお母さんに負けないような笑みで僕の質問を終わらせた。

シュポンと小気味の良い音でビールの栓を抜くと、僕にグラスを持たせ、とくとくと注ぎ始めた。


「あ、亮子さん私は・・・」


「よい、今日は姉が許す」


 僕は彼女の言い方が何とも面白かったので思わず吹き出してしまった。笑いながら僕も彼女のグラスにビールを満たす。


「乾杯!」


おなかの中に冷たいビールが染み渡っていく。でも矢っ張りお付き合いの一杯だけ。


「ああ美味しい」


 そう言う亮子さんの言葉に僕は心から同意した。箸を手に持つと先ほどの山女魚に手をつける。何とも香ばしい匂いが馥郁とする。

 それ以外にも山菜の天ぷらや和え物、猪鍋など豪華な料理が目白押しだった。

そしてそのどれもが絶品の味わいを持っていた。なので僕は夢中になって料理をパクついた。


「お気に召した?」


僕がもりもり食べていると、亮子さんはそんな僕のことを嬉しそうに見つめている。


「本当にとっても美味しいです。亮子さんが帰りたくなるわけも分かるなあ」


「確かにこれも理由かも知れないわね」


 そう言うと彼女は料理を一つ口に運び、美味しそうにビールを飲んだ。

それから小一時間を掛けてのんびり飲み食いをした僕達のところへ、再びお母さんがデザートを持ってやってきた。


「これは去年近くで取れた桑の実のシャーベットなんですよ。召し上がれ」


 一口食べた僕はすっかりファンになってしまった。濃い紫色したシャーベットは口に含むととても濃厚な味わいで、それでいてちっともしつこくなく、豊かな甘みが広がる最高の味わいだった。

食べている間にお母さんが手際よく膳のものを下げる。そして


「ごゆっくり」と一言言いながら丁寧に頭を下げ、部屋を出て行った。


 僕が名残惜しそうに最後の最後までシャーベットをすくっていると、亮子さんが自分のを差し出してくれた。


「なんだかとっても気に入ってくれているみたいね、よかったら私のも食べてくれる?」


「え?でもせっかく美味しいのに亮子さんも食べた方が良いですよ」


彼女は軽く手を振りながら答えた。


「良いの良いの、まず第一にもうおなかいっぱいで入らないし、それに私は毎年食べ慣れているから」


「本当に?」


「本当に!」


 そこで僕は遠慮無く彼女のシャーベットをいただくことにした。実際それほど桑の実のシャーベットは美味しく、もしかすると二個目を食べてなお、僕は物欲しそうな顔をしていたかも知れない。


「うふふ、満足した?」


亮子さんが笑いながら聞いた。


「はい、もう最高に幸せ、大満足です」と僕。


「少しのんびりしてお腹がこなれたら、またあの温泉に行かない?」


 僕は一も二も無くうなずいた。

窓の向こう、夜の闇の中から微かに谷川のせせらぎの音が聞こえてくる。


「ん?」


その中に口笛のような音を聞きつけて僕は耳をそばだてた。


「どうかした?」


「なんだか口笛のような音が聞こえてくるんです」


「ああ、それはね、カジカガエルっていう蛙が鳴いているの」


「蛙がですか?」


驚いた僕は目を丸くしてしまった。


「蛙ってげろげろ鳴くあの蛙ですよね?」


そう言うと亮子さんはくすくすと笑い始めた。


「そうね、ふつうはそう鳴くわね。でもここの蛙は違うの。近くまで行って聞いたらもの悲しいまでに美しい声なのよ」


「ふ~ん、そんな蛙もいるんだなあ」


僕は初めて聞くその蛙の声に改めて感心してしまった。


 部屋にはテレビも置いてあったけれども、そのスイッチを入れる気持ちは全く湧かなかった。都会の喧噪を離れて、こうして自然の中に来るというのは本当に良いものだった。



前書きであんなことを書きながら、はたして私はどこいら辺まで来ることが出来て居るのだろうか?千里の道も一歩から、とにかくボチボチ行こか。

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