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世界樹の名の元に(仮)  作者: 風鈴草
3/5

三:痺れイチゴとラズベリー



しゃわわわー


ブリキのジョウロから柔らかに弧を描いて水が飛び出る。

鮮やかに咲き誇るペチュニアの群生地。


「綺麗だね」


思わずぽつりとつぶやくと、ペチュニア達は微かに嬉しそうに葉を揺らした。


「庭園の魔女、か。」


昨日の出来事を思い出す。




「あの、貴女が狼から僕を助けてくれたんですか?」


「まあ、直接的にはそうですね」


「直接的?」


きゅー!きゅー!

傍らでペシェが飛び跳ねた。


「ふふ、ペシェが教えてくれました」


きゅー!(えっへん)

桃色の鳥は誇らしげに胸を張った。

それが少し可笑しくて笑ってしまう。


「そうか、ありがとな」


よしよし、嘴の下を撫でてやるとペシェは気持ちよさそうにする。


「それと‥森が教えてくれたのです」


「…?」


「自己紹介がまだでしたね、この店《木漏れ日の住処》の店主、サラファンと申します。」


「サラファン‥さん」


「サラでいいですよ。あなたのお名前もお聞かせ願えますか?」


「あッ!すみません、リタといいます!助けて頂いてありがとうございました。」


「リタ‥」


じ‥っとエメラルド色の瞳に見つめられて心臓がどきりと跳ねた。

とてもきれいな女性だ。


「あなた、しばらくこのお店で働きませんか?」


「え?!」


「この店を探していたんでしょう?」


「あ‥それは‥え!?なんでそれを?」


なにかあればとにかくここに向かうように。そういわれて育った。

なぜこの人は知っているんだろう。怪訝な視線を送ってみたが、

ふふ、と彼女は微笑むだけだった。


「きっと気に入りますよ、あなたしかできない事も多いはずです」


たしかにもう帰る場所はない。

あの温かい我が家はもう‥


「でも僕、土をいじることしかできません」


「まあ大歓迎です!」


手のひらを合わせてサラは首を傾げ再度微笑んだ。


きゅー!!


「あら、ペシェ。嬉しいのね」


きゅっきゅるるる!!


「ぐえっ!ちょ‥!」


ペシェは再び僕に飛び乗り、頬ずりをする。


「部屋はこのまま使って下さい。明日は午前中に起きて中庭のペチュニアに水をやってくださいね」


「あ!あの!」


なんとか桃色のもこもこから這い出し、


「ありがとうございます!」


すでにドアを開けていた彼女は振り向いて、


「ええ、もう痺れイチゴなんて食べてはいけませんよ」



「あーーーーーーー!!」


僕の回想は唐突な大声によってかき消された。


「え?」


「いた!君が痺れイチゴの子ね!」


振り向くとラズベリー色の髪の毛をした女の子が立っていた。

束の間、彼女は跳ねると常人ならありえない距離をぴょんっと飛び跳ねる。

僕は唖然とした。


「ちょっと話、聞かせてもらえる!?」


気が付いたら視界がラズベリー色に染まり、目と鼻の先に深紅の瞳があった。

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