二:魔女との出会い(2)
「お兄ちゃーん!」
妹の声・・シーニュの声がする。
振り向くと緑がいっぱいな庭に赤い屋根の家。
僕の家だ。
「お兄ちゃん、ごはんだよー!」
「リタ、早くいらっしゃい」
母さんも僕を呼んでいる。
玄関の奥、少し軋む廊下の先から、シチューのいい匂いが漂っていた。
「遅いぞリタ、お前の分も父さんが食べちゃうぞ」
父さんはいつものいたずらっぽい笑顔を浮かべながら
もう席についていた。
「お兄ちゃん、遅いよ!またお庭のお花いじってたの?」
「母さんも助かるけど、もう少し時間も気にしてね」
ああ、僕の家族だ。
「・・?え、お兄ちゃんどうしたの?!」
「なにかあった?!」
心配そうに駆け寄ってくる妹と、見守ってくれる母。
「無理して言わなくていいぞ、泣きたい時は泣いておけ。」
先ほどとは打って変わってひだまりのような笑顔の父。
どうして。
……
きゅるるる?
「ぐえっ……!!?」
ぼすんっという音と共に結構な質量の何かが腹の上に落ちてきた。
「なん……!?ととと、鳥!!?」
視界いっぱいに薄桃色の羽毛、紅色の嘴、まんまるな水色の瞳が2つ。
あたりを見回すと見覚えのない部屋だった。
「さっきのは夢…か」
きゅー?
水色の瞳が心なしか心配そうにこちらを覗き込んでいるような。
ぺろり
「わあああ!な、舐め!!?」
一体何が起こっているのか全く分からず身動きも取れないが、このピンク色のもふもふに舐めまわされていることは理解できる。
「ちょ、、わっ、ひゃははは、こら!やめろぉ!」
あろうことか首まで舐め始めたため、慌てて嘴を押してみたがびくともしなかった。
「ふふ、ペシェ、貴方は本当に優しいですね。」
雪解け水のせせらぎのような、澄んだ声。
振り向くと絹糸に流れ星を落としたような美しい銀髪。
エメラルドの瞳にかかるまつ毛一本一本まで銀色だ。
まるで…
「天使…?」
「あら、お上手ですね」
ふふ、とすこし嬉しそうに目を細める彼女は一体?
「天使ならよかったのですが」
刹那、エメラルド色が寂しそうに揺れた。
…気がする。
すぐに先ほどと同じくやわらかに僕を見つめ、
「ようこそ、庭園の魔女の店へ」
キィィ…高い音と共に窓が開き、
温かい風が半透明のカーテンを揺らした。
どうやら僕は目的地に着くことが出来たらしい。