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ムキムキマッチョはベビーピンク


 学園へと到着し、リリアンヌはちょうど良いサイズの制服へとお店で交換してもらう。


「ローゼンさ……、ゼン。後で制服代は支払うからね。ただ、今はお金がなくて……」


 気まずそうに下を向くリリアンヌにローゼンは小さく笑みをこぼす。


「大丈夫だ。リリの制服も上履きも教科書も、その他に慰謝料も全て相手に払わせるから心配ない。俺は立て替えているだけだから」


 その言葉にリリアンヌは安堵の息を吐いた。



 まだ始業まで時間があるので、ゆっくりと歩いて二人は校舎へと向かう。


 学園内は校舎やダンスホール、図書館、講堂、食堂という名のレストラン、カフェ、庭園、温室、大ホール、小ホール、運動場、そしてお店が並ぶ商店街のようなものなど様々な施設があり、高位貴族の中には学園内を馬車で移動する者もいるくらい広い。


 人は少ないものの、手を繋いで歩く二人を驚いた顔をして見ている者もいる。午後には学園中にリリアンヌとローゼンの噂は広がっていることだろう。

 だが、二人は周りを気にする余裕などない。


 (ゼンの手、おっきい。それになんかゴツゴツしてる。ああぁ……手までカッコいいとか。好きっ!! 大好き!!)


 (……手って、こんなに小さいのか? それに、柔らかい。力を少しでも入れたら折れてしまいそうじゃないか)


 時々、ポツリポツリと会話はするが、言葉少なく歩き、校舎へと着いた。

 そこで、大勢の注目を集めていることに気が付いたリリアンヌは、このままローゼンと手を繋いだままで良いのかと悩む。


 (ゼンは、このままでもいいのかな? 私は嬉しいけど)


 ローゼンの様子を見ようとリリアンヌがした時、その手は離れ、リリアンヌの前にローゼンが立った。

 不思議に思ったリリアンヌが、ローゼンの背中から顔を出して覗き見ると──。


 女生徒が全力で走り抜けていった。そして、その後ろを物凄い早さで追いかける般若(はんにゃ)


「逃げられるとでも思ってますの?その性根、叩き直して差し上げますわーーー!! おーほほほほほは……」


 般若の走るフォームの美しさと言ったら……。


「世界狙える?」

「……世界?」


 思わず呟いたリリアンヌの言葉にローゼンは小さく首を(ひね)る。


「短距離走を女性で競ったら、世界一になれそうだと思って」

「……くくっ。確かにな」


 肩を小さく震わせ、喉を鳴らしてローゼンは笑う。そんな仕草一つを取ってもリリアンヌの胸は高鳴る。


 (カッコい……じゃなくて、あれはベルリンよね。間違いなく)


 髪型は三つ編みではなくおだんごだが、声も、素晴らし過ぎるスタイルもイザベルのものだとリリアンヌは確信した。

 何より、般若というセンスがイザベルとしか考えられない。


「ゼン、どう言うこと?」


 (ベルリン達の作戦を教えてくれるんじゃなかったの? 善処するって、まさか本当に善処しただけじゃないでしょうね……)


 (けん)を帯びた声でリリアンヌは言うが、ローゼンは困ったように苦笑した。


「殿下にはお見通しだったらしい」

「どういうこと?」

「今回の件はリリにつくということが分かっていたようだ。俺には何も情報が来てない」

「嘘でしょ……」


 (今まで忠実すぎるくらい忠実だったゼンを疑うとか信じられない。だけど、ゼンは嘘をついたりしない。

 ルイスってまさか未来が見えてる? いやいや、そんな設定聞いたことない。(めぐむ)が知っていれば話題になってたはず。じゃあ、何で分かったの?)


 リリアンヌは爆走する般若を見る。相も変わらず高笑いを続けているが、息切れなど一切ない。むしろ、追いかけられている令嬢の方がふらふらで今にも倒れそうだ。

 そして、遂に令嬢は捕まった。むしろ、よくここまで逃れられたものだ。


 余程、追い付かれたく理由があったのか、単に般若が怖かったのか、はたまたその両方か。


「嫌っっ!! 離して!! やめてーー!!」


 最後の力を振り絞るかのように令嬢は叫びながら、新たに現れたムキムキマッチョな般若に抱えられて連れ去られて行った。


 リリアンヌに分かったことと言えば、般若の仲間は般若で、般若が複数人いるらしいということ。イザベルの般若はベージュでムキムキマッチョの般若がベビーピンクという謎の選色ということだけだ。



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