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リリアンヌと取り巻きーズ


「フォーカス嬢、俺のことを名で呼ぶのは止めてくれ」

「えっ? でも、ルイス様はルイス様ですよね。私のこともリリーって呼んでください。ルイス様と仲良くなりたいんです!!」


 キラキラと目を輝かせて言うリリアンヌ。取り巻き達(取り巻きーズ)は心に嫉妬の炎を燃やしながらも、リリアンヌに優しい目を向ける。


「貴女と仲良くする気は微塵もないと既に伝えたはずだが。

 フォーカス嬢を名で呼ぶことも、愛称で呼ぶことも断る。俺のことは皇太子殿下と呼ぶように」


 ルイスの言葉に、みるみるうちにリリアンヌの大きな瞳は涙が溜まっていき、今にも溢れてしまいそうだ。

 そんなリリアンヌを見て、取り巻きーズが黙っているわけがない。



「そんな言い方はないのではありませんか?」

「ルイス、リリアンヌにそんなことを言うなんて見損なったよ」

「リリちゃんが可哀想だろぉ」

「リリアンヌさん、貴女の気持ちは必ず殿下に届く日がやってきますよ。泣かないでください」


 上からヒューラック、メイス、カミン、シュナイが言う。


「皆、ありがとう。

 でも違うの! 心を閉ざさなくてはならなかったルイス様が可哀想で、私……」


 うつむいた瞬間にポロリと零れた一粒の涙に取り巻きーズのシュナイを除いたヒューラック、メイス、カミンは我先にとリリアンヌを慰め、ルイスに敵意を向ける。


 

 (何やら愛憎劇でも始まりそうじゃな)


 イザベルは自分には関係がないと、6人の姿を眺めながら呑気(のんき)なことを考えていた。

 だが、イザベルは巻き込まれる運命(星の元)に生まれてきたと言っても過言ではなく、変な面をした可哀想な令嬢として巻き込まれていくこととなる。



「イザベル、行こう」


 相手にするだけ時間の無駄だとでも言いたげに盛大な溜め息を堪えることなく吐き出したルイスは、リリアンヌ達に背を向けた。だが──。


「イザベル様!!」


 リリアンヌはイザベルを呼び止めた。そして、お面姿のイザベルが振り向けば驚きで見開いた瞳からは溜まっていた涙がまた一滴落ちていく。


「本当に、本当にイザベル様ですか!?」

「ええ、そうですわ。私に何かご用でしょうか、リリアンヌさん」


 お面の下からは静かだが凛とした声が響く。思わず溜め息が出そうな程の美しい声なのだが、何せイザベルの顔にはお面。


 それも、仮面ではなく、お面。

 オカメのお面が堂々と付けられているのである。


 ((((何で、そんな変なものをつけてるんだよ(ですか)!!))))


 取り巻きーズの心の声は一致した。


「えっと……その、お顔につけているオカ……おかしな物はなんですか?」

「オカメですわ」


 ((((オカメって何 (ですか)!!))))


「なぜ、オカメを?」

「オカメはこの世の美だからですわ」

「はい!?」


 リリアンヌは呆然とした表情でイザベルを見たが、すぐに(あわ)れむような視線を向け、両手で顔を(おお)い泣き始めた。



「ごめんなさい、イザベル様……」

「えっ?」

「全部私が悪いんです。私が赤いドレスしかなかったからって……。もっと貸しドレス店をまわれば良かったのに……ううん、パーティーに出なければこんなことには……」


 周囲はリリアンヌに同情的で、オカメなイザベルには冷たい視線を投げつけた。


 ルイスがリリアンヌに殺気立ったのを感じ、イザベルは小さく(そで)を引く。


「ルイス様、これは私に売られた喧嘩ですわ」


 (……イザベルがそう言うなら仕方がない。少し見守るか)


 少しの間をおいてルイスは殺気をしまった。そのことにイザベルは小さく息をはいた。


 (しかし、この(わらわ)は殺気にも気がつかないとはのう。阿保(あほう)じゃな。

 はてさて、われも悪かったところはあれど、わざと(あお)られたからには、黙ってやられるわけにもいかぬ。何せ、放っておいたが最後。前世では何もせんかったら、嫌がらせは悪化の一途(いっと)辿(たど)ったからのう。

 それに、ルイス様にもああ言った手前、何もせぬわけにもいかんしな。

 ふむ。折角の機会じゃ、これを期に周りからの評価を変えていくかのう)



 イザベルはオカメの下で小さく笑い、リリアンヌを上手く利用する算段をつけはじめた。

 


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