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【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子殿下から逃げ出したい~悪役令嬢は、絶世の美女にも関わらずオカメを被るが、独占しやすくなって皇太子にとって好都合でしかない~ (改訂版)   作者: うり北 うりこ@ざまされ2巻発売決定
第1章 前世を思い出した悪役令嬢は、皇太子の執着に気が付かない

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イザベルとミーア


 身支度の間、イザベルは色々と会えない理由をミーアにあげてみたが、その全てを却下された。


 そして、半ば引きずられるかのように応接間の前までやってきた。



「ねぇ、やっぱり……」

「なりません」


 ピシャリと言われてイザベルは首をすくめる。その光景につい昨日までのイザベルを知る使用人達は皆、自身の目を疑った。


「それは分かったのだけれど、やっぱり露出し過ぎだと思うのよ。それにもう少し地味なものが良いって言うか……」

「イザベル様自身でご確認された通り、それが一番華美ではありません。

 そんなに気になるのであれば、後でデザイナーを呼びましょう。今のご趣味に合うものを作ればよろしいのでは?

 とにかく、今は時間がありません。我慢なさってください」

「……はい」


 (はぁ、せめて面があれば少しは違ったものを)


 声には出さないもののイザベルは心の中で呟いた。


「では、私はこれで失礼致します」

「えっ! ミーアは一緒じゃないの?」

「私は皇家の方々の御前には出られません。中には私よりも優秀な先輩達がいますので、ご安心ください」

「そんなぁ……。私にはミーアが一番なのに」


 まさかの評価にミーアは目を瞬かせ、少し困ったように笑う。


「イザベル様がお望みならば、私もメイドとしてもっと学び、いつでもお側にいられるよう努めますよ」


 冗談っぽく言ったミーアの言葉にイザベルは目を輝かせた。


「絶対に、絶対よ。ミーア感謝するわ。ミーアの主人として誇ってもらえるように私も頑張るわ!」


「……あなたは誰ですか?」

「えっ? 何か言った?」


 思わずミーアは呟いたが、イザベルには届かなかったらしい。そのことにホッとしつつ、小さく首を振る。


「いえ、何でもありません。

 ほら、殿下がお待ちですよ」


 そう言いながら、ミーアは応接室の扉を叩く。

 すると、中から執事の声がし扉が開かれた。


「イザベル様、おかえりをお待ちしていますね」


 ミーアが微笑む。それは、イザベルの記憶が戻る前を含めて、初めての柔らかい表情だ。

 それに対し、イザベルもくしゃりと笑った。平安姫としてはこんなに表情を表に出すのは失格だろう。

 それでも、そんなことはどうでも良くなるくらい嬉しかったのだ。


「ミーア、貴女が私の専属メイドで良かったわ」


 去り際にそう言い残し、目の前の扉が閉まった。



 思わず、扉に背を預けてミーアはしゃがみ込む。


「イザベル様……」


 (今まではお給金が良ければよかったけど、信頼されるってこんなに嬉しいことだったんだ。一度この気持ちを知ったら、もう前のように接しられたら耐えられないかもしれない。

 もう、イザベル様が誰かなんてどうでもいい。どうか、このままのイザベル様でいて……)


 非現実的な思考なのは分かっていても、イザベルが別人になったのだとミーアは心のどこかで確信めいたものを感じた。

 そして、そんな主人に今度こそ誠心誠意お仕えしようと決意する。


 (まずは、イザベル様がお戻りになった時に一息つけるようなハーブティーを用意しよう。それで、お茶を()れるのが上手な先輩に教わらなくっちゃ!)


 ミーアは立ち上がり、駆け出した。本当はこんなに急ぐ必要はないのだけれど、イザベルのために何かしたいと思ったのだ。


「ミーア、走るんじゃありません」


 先輩メイドに注意され、慌てて走るのを止めたが、その足取りは軽かった。

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