97.神を無自覚に助ける
俺、飯山界人!
最近頭痛の種が消えたぜ! ひゃっはー!
「あー……静かな暮らし、さいこ~」
現実にて。
俺は婆さんの家の縁側に座ってのんびりしていた。
ふわふわの毛皮を持つフェリが、そばに座ってる。
もふもふのふわふわだった。
「ちょうどいいクッションもあるしな」
『くく……神獣をクッションにするなんて。さすがは山の神だのぉ』
「それやめてくれ……」
こないだの安曇野の病院で、けが人病人を全員治していらい、俺は特に表立ったことはしていない。
その結果、ネットの関心が少しずつ、別の物に移っていった。
『もうみな、山の神のことは忘れてるようだな』
「ま、そんなもんっしょ。今はネットに面白い物がごまんとあるしな。デジマスとか、ワインの兄貴とか」
『ふぅむ、そんなものか。ま、良かったではないか。主の望む展開なのだろう?』
「おうよ。静かな暮らし、さいこー。いやぁ、このままネットからも、山神なんていう、こっぱずかしいムーブが消えてくれるのを願うよ」
とまあ……のんびりしていたそのときだ。
「みゅ~……」
と、どこからか、動物の鳴き声がしたのだ。
『軒下だな』
「どれ」
俺は縁側から降りて、軒下を見やる。
「あらまあ、子猫じゃあねえか」
1匹だけの子猫が、そこにはいた。
がりがりで、ぼさぼさだ。
「どうしたおまえ、お母さんに置いてかれたか? ん?」
「みゅ~……」
フェリが縁側から顔だけを覗かせる。
『猫がなぜこんなところに?』
「よくあるんだよ。田舎だと。軒下や倉庫に、親猫がいついて、そこで子猫を産むってことが」
『ふーん……む? この猫……もしや……』
しかし猫か。
どうすっかなぁ。
ペットはもう1匹いるしよ。
かといって、保健所に連絡するのも忍びないし……。
「餌付けポイ……は、無責任だよな……よし、飼う」
『ほぅ、ペットは1匹いるのに?』
「もう1匹くらいならな。ま、おまえと違ってただの動物だしよ」
『く……くくく……ただのどうぶつ、ねえ……』
なんだフェリのやつ?
忍び笑いしてるけどよ。
「ほら、おいで。世話してやるよ」
「みゅ~……」
おっかなびっくり、俺に近づいてきた。
猫が、ちょん、と俺の手に触れる。
よし、気を許してくれたみたいだ。
俺は猫を抱えて軒下から出る。
「フェリ、俺は牛乳取ってくる。逃げないように見張っててくれ」
『承知したぞ』
キッチンへ行き、ただの牛乳を器に注ぐ。
そして、フェリのもとへ戻る。
『……ほう、そなたはこの土地の。ふぅむ……そうかそうか』
「みゅみゅーん」
フェリが子猫と会話していた。
動物同士、言葉が通じるのだろうか。
「おまたせー」
『おお、お帰り主よ。この御仁は大層、腹が減っているそうだぞ』
フェリが鼻先で猫をさして言う。
「ふーん。そう。ほら、たんとお飲み」
俺がそそいだミルクと、猫の前に置く。
ちろちろ……と猫がミルクを舐める。
ふふ……かわいい……。
「ペットを飼って育てるのも、スローライフっぽくていいなぁ」
『ペット……くくく!』
「だからなんだよ、さっきから」
『いやぁ、主はさすがだなぁって思ってなぁ』
気になる発言連発しよって。
「思わせぶりなわんころには、こうだ」
俺は首すじをわしゃわしゃしてやる。
『ふふはははは! や、やめるのだ我が主よ~!』
「ほらほらどうだ」
とまあ、猫が食べ終わるまで、下顎をなでてやっていたのだが……。
「あれ?」
『はふぅん……あぅん……どうした、主よ?』
ぜえはあ、とフェリが肩で息しながら俺に尋ねる。
さっきまでそこにいた猫が……。
「いない……」
「みゅー」
声のする方を見てみた。
そこには……。
「な!?」
黄金に輝く、デカい猫がいたのだ。
でかさ的にはフェリに匹敵するくらいか。
体から神々しい光を発してらっしゃる。
あ、明らかにただの猫じゃ……ねえ!
『馳走になった、礼を言う』
「しゃ、しゃべったぁああああああああああああああ!?」
ただの猫じゃねえと思ったら、しゃべった!?
『この恩は、いずれ』
『また遊びに来るが良い』
『うむ。では』
フェリに、そして俺に頭を下げて、猫が消える。
さっきまで猫がいた場所には、1枚の小判が落ちていた。
「フェリさんよ。あれはなんだい?」
『さぁ。ただ、吾輩に近いなにか、高位の存在であることはたしかだな』
「高位の存在って……」
『神みたいな』
「ああ……」
なんてこった
「なんで、そんなのが急に現れたんだ?」
『わからぬか? 先ほどのボロボロの子猫だよ、あの金の猫』
「そうなの!?」
『うむ。おぬしの力で体力を回復したのだろう』
「俺何かやっちゃいました!?」
『エサを与えたではないか。あのミルクに、おぬしの魔力が宿っていたぞ』
そんな……魔力が……。
「俺魔力なんてこめて……あ」
そ、そういえば俺って、魔力めちゃくちゃもってるから、何気ない動作が魔法になるんだった。
つ、つまり……。
「ミルクを注いで出した。その行動が……神を癒やしたってこと?」
『まあ、簡単に言えばそうなるな。あの猫が神かは定かではないが、ま、おそらくはそうだろう』
そんな……。
フェリが落ちてる小判を拾って、俺に投げてよこす。
「これなんだろうな」
『さあ、しかし礼をするといっていたのだ。なにか良いことが起きるのではないか? ん? 主の噂を聞いて、ほかの神がくるとかなぁ~』
「やめてまじで、そんなの、こなくていいから……」
ただでさえ、神問題が解決したばっかりなのに……。
まじでこないでほしい。
さっきの金の猫も、ほかの神も。
絶対来ないで、まじで。いいか、絶対にくんなよ。恩返しとかいらないからな!
【★読者の皆様へ お願いがあります】
ブクマ、評価はモチベーション維持向上につながります!
現時点でも構いませんので、
ページ下部↓の【☆☆☆☆☆】から評価して頂けると嬉しいです!
お好きな★を入れてください!
よろしくお願いします!