95.オブリビエイト
異世界でばあさんと再会し、話を聞いてきた。
そして、現実へ戻ってきた。
「た、大変っすよ! 界人さん!」
「おお、なぎ。どうした?」
同居人である南木曽なぎが、あわてて俺の下へやってきた。
「な、なんかとんでもないことになってるっす!」
「! まじか。すぐいく……」
嫌な予感を感じながら、俺は客間へと行く。
そこには……。
「「「きゃあああ! 神様~~~~~~~~~~~~~♡」」」
……なんかもう、とんでもない数の女どもがいた!
なんだこりゃ!
しかもみんなこっちを見て黄色い声を出しているし!
「神様、おまちしておりました」
「あ、県……」
前に宗教団体を潰したことがあった。
そのときの、トップの秘書的な存在、それが県。
スーツ女がニコニコしながら俺の下へやってきた。
この状況……どういうことだ?
なんで県が?
「おまえなにを……」
「「「神さま~~~~~~~~~~♡」」」
大量の若い女達が襲いかかってきた。
俺はあっという間にもみくちゃにされる!
あ、あまい匂いと、柔らかい感触に包まれて……ええい、なんだこれは!
「以前おっしゃったでしょう? うちのトップ権堂は、女どもを囲っていたと」
「それが……こいつらか!?」
「ええ。権堂を倒してくれた、救いの神……それがあなた! ということで、みなさんあなたに会いたいとのことで、つれてまいりました」
そういや、なんか前にタブレットごしでみたことあったな!
「なんでつれてくんだよ……」
「申し訳ありません。もう抑えが利かなくなってしまって……」
若い女たちはものすごいエネルギッシュだった。
俺にくっついてきゃあきゃあ言ってる。
「神様助けてくださりありがとう!」「あのクソエロ親父から救ってくれてとても感謝しております!」「ぜひお礼させてください!」
……なるほど。
あの権堂を倒したことで、俺は今この状況にいるってことか。
女に囲まれ、嫌な気分にはならない。
だが! 俺の平穏を乱すやからは……許してはおけない。
ということで、婆さんのところで使い方を教えてもらった、新魔法を試そう。
「あー、みなさんちゅうもーく」
女どもが一旦だまって、俺の方を見やる。
俺は指ぱちん、とならす。
「【忘却】」
……その瞬間、女達の目から光が消える。
そして一瞬、気を失うも、すぐに戻った。
「あ、あれ……?」「ここどこ?」「なんでこんなとこに……?」
やれやれ。
ちゃんと魔法は効いてくれたようだな。
「あー、ここ観光スポットなんすよ。でも立ち入り禁止なんで出てってもらえます?」
俺がそう言うと、女達は困惑しながらも、素直に従った。
ぞろぞろと出ていく。
その目にはさっきまでの、俺への崇拝の気持ちは消えていた。
ふぅ……。
「な、なんすか今の……?」
なぎは無事だ。
魔法がかからないようコントロールしたからな。
「【忘却】って魔法」
「忘却……?」
「記憶を一部消去する魔法だよ。これで、俺が権堂をやっつけて救った記憶を消したんだ」
それでみんな、態度を変えたってわけよ。
はぁ……やれやれ。
「なんで忘却なんてつかったんすか?」
「だって、めんどくさいじゃん」
俺は平穏を望んでいるんだ。
神とか、興味ないんだよ。
「なるほど……でも、記憶まで操作できるなんて、まじで神みたいっすね、界人さん。さすがっす」
「……神扱いしないでよな?」
わかってますよー、となぎが笑う。
まあこの子は例外だ。元担当作家だからだ。
「って、あれ? 県は……?」
「さぁ、あの連中と一緒に帰ったんでしょ、多分」
そっか。
まあそうだよな。ちゃんと忘却できてるよな、うん。大丈夫、絶対。
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
ページ下部↓にもリンクを用意してありますので、ぜひぜひ読んでみてください!
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