88.Gとは?
久しぶりに異世界にやってきた俺。
だが待っていたのは、発情したエルフ姫さんだった。
「し、死ぬかと思った……」
場所は、寝室。
俺の隣では安らかな寝息を、エルフのイージスが立てていた。
「おお、やっと終わったか主よー」
「フェリ……」
人間の姿になったフェリが、ずるずるカップ麺をすすりながら、部屋に入ってくる。
「す、すまん……メシが作れなくて……こいつ、離してくれなくって……」
昨日襲われて、丸一日、俺はイージスにむさぼられていた。
この女、普段は俺に死ねだと嫌いだのいいやがるが、発情してるからか、ずっと甘くおねだりしてきやがった。
そのギャップに興奮してしまった俺である。くぅう……。
「吾輩は気にしない。常備してあったインスタント食品ですませてたからな」
食べ終えると、空いた容器を魔法で氷漬けにして砕く。
「しかしお盛んだなぁ主は」
「いやこいつだから、お盛んなのは……」
まさかイージスがあんなに乱れるなんてな……。
「う……」
「おお、起きたか痴女」
イージスが目を覚ます。
自分の格好を見て、かぁ……と顔を赤くした。
そそくさとシーツを身につけて立ち上がり、きっ……! と俺をにらみつけてきた。
「昨日のは、忘れろ」
「いや忘れろって……」
忘れようにも、あんなあんあんと甘く啼いてるイージスさんはちょっと忘れられないっすわ。
「あれは、気の迷いだ。呪いのせいだ。妾のせいじゃない……!」
「ははは! なにを馬鹿なことを言う」
フェリがにんまりと笑う。
「確かに発情は呪いの影響だがな、貴様があんなに乱れたのは、性欲が強いからで……」
「くたばれ駄犬!」
魔力を飛ばす、魔力撃を使うイージス。
「やめろって」
俺はそれを手で押さえる。
反魔法が無意識に発動し、魔力撃の塊を消し飛ばした。
「くそが……!」
悪態をついてイージスは出て行った。
やれやれ……昨日の甘えん坊美女はどこいったのやら……。
「しかし主よ、あの女厄介だな」
「前からな」
「いやそうではなくよ、やつは奴隷の首輪の効果で、一定期間相手してやらんと発情するだろう? で、放置すると性欲が暴走してって……」
言いたいことはわかる。
現実に返って、異世界に戻るたび、性欲を爆発させられては困るってことだ。
「そうだなぁ……適度に自分で性欲を解消してもらいたいんだが」
自慰とかしてな。
そこへ、イージスが帰ってきた。
着衣の乱れは直っている。
「なあイージス」
俺はふと気になったことをきいてみた。
「おまえ普段、性欲ってどうやって解消してるんだ?」
「なっ!? 死ね!」
二言目にはすーぐ死ねだよ……。
俺おまえの主だよいちおう。
「いや、変な意味じゃない。どうやってるんだ?」
すごい、すごい嫌そうな顔をしてきた。
絶対言いたくないんだ。
だが……。
「……そ、れは……」
多分奴隷の首輪の効果だろう。
俺の命令に、無理矢理従わされてるんだ。
「……エルフは、あまり性欲を感じない」
「え、そうなの?」
「ああ……。エルフは長命の種族だ。そもそも、子孫を他種よりも急いで作る必要は無い」
まあ確かに言われてみればそうか。
「じゃあおまえのあの性欲どうなってるの?」
「き、貴様のせいだろうが!」
「俺の?」
「貴様が、わらわに……あんな……気持ちの良いことを……お、教えるからだろうがっ!」
気持ちの良いこと……。
ああ、性行為か。
確かにこっちの世界は性行為をふくめて、いろんな技術が未熟だ。
またスマホもネットもない異世界では、安易に検索する手段はない。
結果知識の遅れを招いている。
「貴様が帰ってこない間、もう死ぬかと思ったぞ。体がバラバラになるかと思った……」
「そっか……おまえ、自慰行為とかってやらないの?」
「……じー?」
あ、これあかん。
知らないっぽい。
さすが異世界。
現実で当たり前の知識が、こっちでは通用しない。
「ええと……なんというか……こういう……」
俺はアイテムボックスからタブレットを取り出す。
ダウンロードしてあるAVを見せる。
くわ……! とイージスが目を見開く。
そして、食い入るようにそれを見ていた……。
「なんだ……これは……絵が、う、うごいてる……!?」
ああ、そっちに驚いてるのか……。
「よければそれ貸してあげるよ」
「いいのか!?」
「ああ。それ使って、現実の知識を仕入れておいてくれ」
まあこれなら、自慰も、俺が言わずとも学ぶだろうし。
帰ってくるたびに獣のように襲われることもないだろう。
「わ……これは……すごい……なんだ……」
さっそく食い入るように見てるイージス。
俺は服に着替えて、フェリと一緒に部屋を出たのだった。
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『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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