87.限界エルフ
あくる日、俺はフェリと一緒に、異世界にやってきた。
異世界にある、万里ばあさんの屋敷にて。
「ふぅー……異世界なんか、久しぶりだなぁ」
『そうだな主よ。随分向こうにいたな』
たっくん事件とか、天導教会とか、ファンクラブとか、殺し屋とか。
なんか、色々あって、こっちに来るのがとても久しぶりだ。
『冒険するのか?』
「いや、しばらく屋敷でゆっくりする」
『ほぅ、珍しい。異世界には冒険のために来るのではなかったか?』
それな。
最初はそうだった。
でも今は現実の方も、いや、現実の方が厄介な状況になってる。
山神とか、なんだよ。
「その点、こっちの森の中は誰もいなくて、さいこーだね」
『役割が逆転しているなぁ。ま、主がいればどこでも、美味いメシが食えるから、吾輩はどこでもいいんだがな』
さて。
俺は屋敷に入る。
しばらく留守にしていたけれど、屋敷の中はだいぶ綺麗だった。
『あのエルフ奴隷、きちんと仕事してるようだな』
「イージスは口が悪いだけで、真面目なやつだぞ割と」
って、あれ?
「イージスどこいった?」
『変だな、主が帰ってきたのに。まさか敵に襲われたか?』
そのときだった。
どたたたたたっ! と激しい足音が奥の方からする。
現れたのは、美人で巨乳のエルフ奴隷、イージス。
「はぁ……はぁ……はぁ……♡」
イージスのやつ、すごい呼吸が荒い。
走ってきたからかな?
『すんすん……む? この匂いは……』
フェリは何かに気づいた様子。
『そうか、そういうことか……ふふふ。主もスキモノよのぉ』
「は? なんだよ……」
イージスが顔を上げる。
「悪いな、しばらく留守にしてて……」
「はぁー……! はぁー……! はぁー……!」
イージスが顔を真っ赤にしていた。
なんだ?
『飢えた獣の前に、丸腰で来たのが悪かったな』
「え?」
イージスが俺の正面からタックルしてきた。
そして、腹の上に載る。
「い、イージス? どうした?」
「す……まない……もう……げんかい……」
「え? わぷっ!」
イージスが、あの人間を見下してて、主の俺にもきつい口調だったイージスが。
情熱的にキスをしてきたのだ。
腰をくねらせながら、俺にキスの嵐を降らせる。
「ちょ、おま……やめ……どうなってんだこりゃ!」
『発情してるんだろう』
「は、発情?」
フェリがニヤニヤとしながら解説する。
『ほれ、この女、性奴隷だろう?』
確かにこいつは性奴隷として売られていた。
つまり、男に抱かれる用の奴隷だ。
『性奴隷は主人を楽しませるよう、一定時間経過すると強制発情するのだ。忘れたか?』
「そ、そういえ……そうだった……」
イージスが一心不乱にキスしてくる。
そりゃあもう、情熱的だった。
目には理性の光が宿っていない。
エルフとしてのプライドとかが、気にならなくなってるらしい。
それほど強く発情してるってことか。
『強制発情の呪いは、主人との性的行為をせねばなおらぬ。絶対にな』
あ、あれ?
俺、結構こっちに帰ってきてなかった。
つまり、発情の呪いがかかった状態で、ずっと放置してたってこと?
「も、もう……がまんできない……ごしゅじんさま……♡」
ぱら……とイージスが身につけてるメイド服を脱ぐ。
「だ、抱いて……♡ ください……♡」
こ、こびこびな声で、おねだりしてきた。
あ、あのイージスが……?
プライドの高いエルフ姫が……?
『さすが主。何もしなくても、このプライドの高い女の股を自ら開かせてしまうとは。こういうの、あれか。放置プレイってやつか。技巧派だのぉ』
……そんなことしてねえ、って言う暇すら与えてもらえなかった。
結局、理性を失った獣を、俺は拒むことができなかったのだった。
まあほら、普段ツンツンしてるやつが、甘い声でね、ないてたら……ね?
【★☆新連載スタート!】
先日の短編が好評のため、新連載はじめました!
タイトルは――
『伝説の鍛冶師は無自覚に伝説を作りまくる~弟に婚約者と店を奪われた俺、技を磨く旅に出る。実は副業で勇者の聖剣や町の結界をメンテする仕事も楽々こなしてたと、今更気づいて土下座されても戻りません』
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