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86.いつの間にか俺のファンクラブができていた


 ある日のこと。俺の家に、来客があった。

 客間にて。


「おひさしぶりです、飯山いいやま様」


 眼鏡が似合うスーツ美女だ。

 こないだの、カルト教団騒ぎの時、首魁である権堂ごんどうについていた秘書の女だ。

 たしか……。


あがた、だっけか?」

「名前を憶えててくださり、とても光栄です。飯山様」


 県は俺を見てポッと頬を染めている。なんなんだ?


「で、なに?」

「今日はお礼にまいりました」

「はぁ……なんかお礼されることあったか?」

「はい。あなた様は、神を偽る愚者を討伐し、我ら教会員たちをお救いくださりました」


 権藤のあほが俺のところに、共同事業の提案にきたことがあった。

 山神(俺のこと)のネームバリューを使って商売しようってね。


 俺はむかついたのでぶっ飛ばしておいた。


「救うっておおげさな。俺はただ、むかついたからやっただけだよ」

「その結果、多くのものが救われました」

「? どういうことだ?」


 県はタブレットPCを俺に差し出してきた。

 それを受け取る。どうやらウェブ通話がONになってるようで……。


『『『きゃぁあああああああああ♡ 山神様だぁ♡ 素敵ぃいいい♡』』』


 ……画面には、なんか大量の若い女たちが映っていた!


『山神様ご本人よ!』『なんてかっこいいのかしら!』『強くて若くて優しくて!』『本当にかっこいいです!』


 きゃあきゃあきゃあ、と画面の向こうで女たちが黄色い声を上げてくる!

 しかもなんか、みんなめっちゃ俺に熱烈な視線を向けてくるし!


「お、おいあがた……いったいなんだよこれ? こいつら誰!?」

「ファンです」

「ファンぅ!?」

「ええ。山神こと、飯山界人さまの、ファンたちです」


 なにぃいい?

 どういうことだそりゃ!


「飯山様は先日、うちの教会の元トップ、権堂を成敗してくださりましたでしょう?」

「せ、成敗って……ぶん殴っただけだけど」

「あのあと、権堂は信者から巻き上げた金をすべて、返金したのです。そして、自分の過ちを告し、そののち警察に出頭しました」


 ま、まじか……。

 たしかに脅したけど、まさか素直に実行するなんて……。


「それほどまでに、飯山様の存在を恐れたのでしょう」

「な、なるほど……それとそこのファンたちは、どういう関係が?」


 あがたが説明したところによると……。

 権堂ごんどうのやつは、若い信者や、信者の家族の少女たちを囲っていたらしい。


 そして、力を使って恐喝し、無理やりご奉仕させてたんだそうだ。


「若い女の子らは、卑劣極まる権堂から、自分たちを救ってくださった救世主、飯山さまにみな惚れてしまったのです。100はくだらないですね」

「ぜ、全員俺のファンってことか……」

『『『そうでーーーーーーーーーーーす!』』』


 タブレットの向こうから、きゃあきゃあと歓声をあげる女たち。

 結構レベル高い女の子が多いな。


 たぶん顔とか体つきで、あのじじいが選んでいたのだろう。

 それが、そのままそっくり俺のファンになるなんて。


『山神様すてきぃ!』『ぜひ直接お会いしてお話ししたいですー!』『お礼させてください!』『山神様になら抱かれてもいい!』『むしろ抱いてくださいー!』


 な、なんてこったい……。どうしてこうなった! くそ!

 あがたはにこにこしながら、タブレットの電源を切る。


「どうなさります? このままだと彼女ら、ここに突撃してまいりますよ?」

「やめてくれまじで!」


 俺は平穏な生活を望んでいるの!


「そこで、ご提案がございます。私を、秘書として置いてくれませんか? 給金は一切いりません!」


 県が自分のでっけえ胸に手を添えて言う。

 秘書だぁ……?


「この先、面倒事が増えるかと思います。山神は今や、日本3大関心事のひとつとなっておりますので」

「なんだよ、三大関心事って」

「いま日本でバズリまくってる事柄のことです。デジマス、ワインの兄貴、そして山神」


 デジマスって……たしかちょー人気のラノベ作品だったな。

 ワインの兄貴……ああ、Vtuberか。なんかすんごい人気あるらしいな。


 って、その二つに並ぶの、俺!?


「取材や、あなた様の素性を探る馬鹿も現れるかと。そんなとき私が防波堤となって、あなた様の平穏な生活をお守りします。そのサポートをさせてください」


 取材……? え、めんど……。

 いやでも、ここまで有名になってるんだったら勘ぐられる機会も多くなるだろう。


 そういう面倒事全部やってくれるなら、まあ、助かる……か?


「てゆーか、あんたはなんで俺にそんな尽くそうとするんだよ?」

「わたしは、あなた様を敬愛しておりますのです」

「はい?」


 キラキラした目を、俺に向けてくる。


「強大な力を持ちながら、誇示することなく、人助けのタメに使う。悪をくじき、弱き者たちを助けるその姿に、感服いたしました」

「はぁ……」

「早い話が、わたしもあなた様のファンになったのです。なので、あなた様のために働かせてください。お代は、ファンクラブ1号の称号で結構です」

「ふぁ、ふぁんくらぶ……。そんなもんあるのかよ!」


 にこりと笑って、俺にカードを渡してくる。


【YFC 会員ナンバー0001 あがた 清美きよみ


「なんだこの、YFCって……」

「山神ファンクラブです。ナンバー1に、どうかこのあがためを置いてください」


 ああもう……!

 なんだってこんなんなってるんだよ!

 

 ファンなんていらないのにぃいいいいいい!

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― 新着の感想 ―
[一言] 山神様が飯山だと知った編集長や麗子の父親がざまあな目に合う気がするな〜。
[一言] 外堀がだんだん埋まる
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