78.庭で肉を焼いて食う
俺、飯山界人。財布を届けたら美少女から告られた。
「なんだったんだよあれは……」
諸々の騒動が収まった後、俺は現実の庭でひとり、肉を焼いていた。
キャンプギアである、折りたためる椅子と、バーベキューセット。
適当に肉を焼いて、適当にビールを飲む。
「あるじよ! やばいなこのにく! うっまうまうっまうまだぞ!」
人間姿のフェリが、ぶんぶんと尻尾を振りながら、肉にかぶりついてる。
「なんという肉だ! 美味すぎるぞ!」
「シャトーブリアンだってさ」
「気に入った! 気に入ったぞシャトーブリアン! 柔らかくて美味すぎてやばいぞ!」
美味すぎるのか、語彙力が解けていた。
さて。
どうしてシャトーブリアンなんて高い肉があるのか。
話は少し戻る。
『あたしと付き合って!』
喪服女はそう言ってきた。返事する前に……。
『ちっ! 公安の犬が。じゃあねダーリン♡ また来るよ~!』
ぱちんと喪服女が指を鳴らすと、一瞬で消えた。多分時間を止めたんだろう。
そこへ、白髪トレンチコートの、公安の刑事、無一郎君がきた。
いろいろと説明してくれた。どうやらさっきの子は、公安がマークしていた練能力者(※逆異世界転生者)で、凄腕の殺し屋だったらしい。
殺し屋がなんで俺んちに……? 目的は俺を殺すことだと無一郎君は言っていた。
けど、別に俺は何かされた訳じゃあないし、何かしたわけでもない。
だからあの子に対して殺意とか、害意は覚えない。ああそうって感じ。
てゆーか、前の分断者? とかいうやつもそうだけど、敵の殺し屋に命を狙われたことないんだけどな(困惑)。いつ狙われてたの? みたいな。
『このたびは僕が見張っていながら、殺し屋の侵入を許してしまいました。これはお詫びです、お収めください』
といって、最高級牛のシャトーブリアンを、山ほどもらった次第。
「どっちかっつーと、公安が勝手に近くをうろついてたほうがいやだったんだけどな……」
シャトーブリアンを適当に焼いていく。
フェリはものすごい勢いで食べていく。
「こんなおいしい肉を、毎日たくさん食べれるなんて! 主の下僕になってよかったー!」
「はあそう……」
「む、なんだ元気ないな。どうしたのだ?」
「いや……なんか知らないうちに、面倒ごとに巻き込まれてるなって」
なんだよ組織の殺し屋って。なんだよ能力者って。
ここ令和の日本ですよ? 小説やアニメの世界じゃあないんですよ?
「そんなものに、平穏を乱されたくないんだよなぁ……」
異世界でも、ブレイバ君たちにマークされてるし、こっちでも、なんか知らぬ間に公安と殺し屋にマークされてる。
「のんびりさせてくれよ。俺は平凡な男だぜ?」
「ふはは!」
「え、なに?」
「いや、主が珍しく面白いギャグをかましてるなぁと」
「ええー……ギャグじゃないんだけど?」
まあいいや。のんびり肉を焼いて食べる。うん、おいしい。
そうだよ、これでいいんだよ。異世界で楽に大金を稼いで、おいしいものを現実で食べる。美味い。こういう生活を老後までずうっとしていきたいんだよ。
殺し屋とか、練能力者とか、なんとかかんとか、って、そういうのはお呼びじゃあないんだよ。
「はーあ。せめて殺し屋組織、潰れないかなぁ」
日本警察は無理だろうけども、そのよくわからん組織は、日本社会に不必要なもんだもんな。
「お、なんだ、潰すか?」
「いやいや……そんな物騒なことしないよ」
「主なら、隕石魔法で一発ではないか?」
「日本で魔法なんて撃てるわけないだろ。余波で大変なことになる」
「ふむ……めんどうだな」
ねー、めんどうなのよ。ったく。
【★新作の短編、投稿しました!】
タイトルは――
『聖剣学園の特待生は真の力を隠してる(と思われてる)~聖剣を持たない無能と家を追放された俺、大賢者に拾われ魔法剣を極める。聖剣を使わない最強剣士として有名になるが、使わないけど舐めプはしてない』
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