77.停止者は、恋する
【★おしらせ】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
界人が停止者の能力を強制解除してから、数時間後……。
停止者は、目を覚ます。
「……知らない天井」
むくりと身体を起こす。周囲を見渡しても、見覚えのない和室が広がってるだけだった。
「あ、起きた?」
「ひっ……!!!」
一瞬で身体が縮こまる。和室には入ってきたのは、平凡な見た目の男。
しかしその実態は、最強の練能力者(※逆異世界転生者のこと)、停止者を撃破した男……異次元者。
恐怖よりも……まず。
彼女の頭には疑問が浮かんだ。
「どうして……?」
どうして、自分は生きてるのだろうか、と。
停止者は異次元者の命を狙う殺し屋だった。
殺そうとした人間を、どうして、この男は生かしているのだろうか。
わからない。怖い……。一体これから、何をされるのだろうか。
「まさか……死よりも恐ろしい目に遭わせる……とか?」
だが……。
「はいどうぞ、召し上がれ」
「…………」「いただきまーす!」
和室のちゃぶ台には、カレーがのせられてる。
毒……が入ってるのだろうか。いやしかし、隣に座る女は、ガツガツと食べてる。
「うまい! 我が主の作るカレーは世界一だな!」
「そりゃ光栄だ」
異次元者本人も、停止者と同じカレーを食べている。
毒は入っていないのか……?
殺す意図は、ない?
「どうしたの、早く食べなよ」
「あ、いや……」
ぐぅうう……。
大きな音が、自分の腹から聞こえてきた。
とりあえず、これが毒だったとしても、腹を満たして死にたい。
停止者はカレーを食べる。普通に、おいしいカレーだった。
「うまい……」
「そりゃ良かった。おかわりもあるよ」
……不思議な男だった。
時間停止を真っ向から破るだけの、強大な力を持ち合わせているはず。
だというのに、命を狙ってきた人物を殺さず、生かしてる。
やろうと思えば、停止者なんぞ一瞬で殺せるだろうに。しない。
やろうと思えば、彼女はこの場から逃げることなんて簡単だろうに。しない。
やがて食事を終えた。
フェリと呼ばれた女はぐーすかぴーすかと寝息を立て出す。
異次元者は台所に立って、空いた食器をあらっている。
無防備に背中なんて向けて。
「…………」
停止者は、指をならそうとして、やめた。
どうせやっても、能力が効かないのだから。
「あの……さ」
悪い人間では、ないのかもしれない。そう思って、彼女は界人に尋ねてみる。
「あんた、どうしてあたし、殺さなかったの?」
組織の殺し屋なのに。
すると彼は振り向いて、穏やかな表情で言う。
「君を殺す理由なんて、ないだろ?」
最強の力を持ちながら、殺生をしない存在。
自分を殺す気できた人物を、許すほどの広い心の持ち主。
そんな男……はじめてだ。
なんて……なんて……。
「か、かぁっこいぃい~……♡」
「は? はあ……ど、どうも」
顔のことに全然気づいていなかったが、よく見ればとてもかっこいいではないか!
見た目だけじゃない、その心持ちも素敵だ。
強くて、かっこよくて、素敵!
「お、お兄さんっ。か、か、彼女とか……い、いますか!」
「は、はあ……いないけど」
「いない! やったー!」
停止者は、公安にマークされるほどの、強い練能力者。
そんな彼女は……。
「好きです! あたし、あなたのことが好きです!!!!!」
人生ではじめて、恋を知ったのだった。
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タイトルは――
『聖剣学園の特待生は真の力を隠してる(と思われてる)~聖剣を持たない無能と家を追放された俺、大賢者に拾われ魔法剣を極める。聖剣を使わない最強剣士として有名になるが、使わないけど舐めプはしてない』
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