75.世界規模の魔法すら解除してしまう
俺の家に、錬能力者の女がやってきた。
時の魔法を使って、世界の時間を止めた。
でも俺は無意識に魔法をキャンセルする魔法、反魔法を使っていたことで、時間停止に巻き込まれなかった、らしい。
「さて、どーっすかねこれ」
俺の家、客間には、この時間能力を使う女が眠っている。
時間は、まだ停止したままだ。
「魔法なんだから、魔力が尽きれば解除されるよな?」
フェリに尋ねるも、彼女は首をかしげる。
「いや、もうすでに魔法は発動している。発動した魔法を止める方法は、術者が任意で解除するか、術者が死ぬかの二択しかない」
「まじかよ」
魔力切れで魔法が解除されるって展開を望んだんだけどな。
殺すのは、却下だ。子供を殺すなんてありえない。
じゃあこの子に魔法を解除させる?
いうことを聞くかわからないしなぁ。
「どうする、主よ。術者が眠っている状態で、殺さずにこの、世界規模でかかってる時間停止魔法を、どうやって解除する?」
「え、そんなの簡単じゃん」
「まあ吾輩ならそこの女が起きるまで待ち、脅す……え?」
ぽかんとする、フェリ。
え、なんでそんな顔してるんだ?
「簡単じゃないか。反魔法を、かけりゃいいんだろ。俺やフェリんときみたいに」
反魔法。相手の魔法を打ち消す魔法だ。俺は無自覚に発動させたことで、時間停止から逃れられた。フェリには、俺が触れたことで、魔法がかかったらしい。
ならば、フェリにしたように、この世界に対して、反魔法をかけりゃいいじゃないか。
「ば、馬鹿な。ありえん。いったいどれほどの、膨大な魔力を必要とするかわかってるのか?」
「いや、わからないけど。まあやるだけやってみようぜ」
仮にこの試みが失敗したとしても、この喪服女が目を覚ませば、問題は解決するわけだし(目覚めて言うこと聞いてくれるかわからいけど)。
「ということで、【反魔法】!」
俺は頭上に手をかざして魔法を発動させる。
その瞬間、世界を、オーロラが包み込んだ。
キラキラと輝く光が、世界を包み込むと……。
「あれ、カイトさん。なにやってるんすかー?」
漫画家JKのなぎが、俺たちのもとへやってくる。スマホの電源をつけると、秒針が進んでいた。
「あ、なーんだ、結構簡単に解除できるじゃあないか」
フェリのやつが、すごい深刻そうな顔していたから、むりげーなのかと思ってたけども。
意外と簡単にできた。
魔力の消費も、うん、そんなでもないみたい。
フェリが唖然とした表情で、俺を見つめている。
「……世界規模にかかっていた魔法を、まさか、解除するとは。すごすぎる」
「え、そんなすごいことなの?」
「あ、当たり前だ! どれほど魔力がかかると思ってる! 伝説の魔獣である吾輩の、体内魔力の何万……何億倍の魔力が必要かと!」
そんなにいるのか?
っていわれても、フェリにどれだけの魔力が入ってるのか知らんしなぁ。
あと魔力量がなんでこんなにあるかなんだけど、たしかまれびとの効果で、成長速度めちゃくちゃ上がってるんだよね。
魔法使うたび総量が増えるうえ、なんか俺無自覚で魔法使うみたいだから、何もしなくてもガンガン魔力量が増える、みたい。
「ま、なんとかなったな」
「……いつもながら、主はやばすぎるな」
やばいだなんて、現実の言葉を達者に使うようになったなぁこいつ。
「やばすぎるって、何が?」
「主の魔法力と、内包魔力がだよ!!!!!」
ええー、なんか怒られてしまった。そんなにか?
すると、喪服女が目を覚ます。
「あ、起きた?」
「…………」
「君、錬能力者なんだよね。時を止める」
喪服女は俺とフェリ、そしてなぎを見て……。
ドサッ!
「ええ!? なんでまた気絶するの!?」
「主よ、それは当然だぞ……まさか、自分の最強の能力を、他者が解除した……真正面から打ち砕かれたのだからな」
「えー……だからそんな、気絶するほどのショックを受けるもんかなあ?」
「……ほんと、この男を敵に回した、錬能力者が、不憫すぎる……勝負にすらなってないんだからな」
フェリがあきれたように、ため息をついたのだった。
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