74.無自覚に大魔法をキャンセルしてた
俺は異世界から現実に戻ってきた。旅の途中だったが、まあ帰りたくなったのだ。
こう、帰りたいと思った時に帰宅できるのが、俺の固有スキル世界扉のいいとこだよね。
あのまま旅を続けてたら、多分また勇者ブレイバ君が追いかけてきた気がした。だから、ちょっと間を置きたかったんだよね。
「で、どうしてこうなった……」
俺の家の客間には、喪服を着た美人さんが気絶している。
彼女は、俺が現実から戻ってきたあと、玄関先で見かけたのだ。
声をかけたところ、ものすごいびっくりした表情をした、と思ったら逃げ出したのだ。
なんだったんだろうか……? お客さん? 誰に? 俺にか。
まあ用があるならまた来るだろう。そう思ってたら、その子が財布を落としていたのだ。
俺は世界扉を使って、彼女を追いかけた。財布を届けようとしたら、その子またすんごい驚いて、そのまま気絶した、という次第。
「うーん、なんだったんだろうか……って、あれ? フェリ?」
そういや、フェリがいないことに気づいた。
魔力を探知してみると、庭にいることが判明。
すると……。
「フェリ? 何してるんだ」
彼女は、フェンリルのまま固まっていた。固まる?
つん、とつつくと、フェリが動き出す。
「うぉお!? あ、主よ。無事だったか!」
珍しくフェリのやつが、焦っていた。人間の姿に戻って、俺の肩をゆすってくる。
「どうしたんだよ?」
急に焦っちゃってまあ。
するとフェリは俺の顔を見て、深々と安堵の息をついた。なんなん?
「主よ。今何が起きてるのか、理解しておらぬな?」
「何が起きてるんだよ」
何かが起きてるようにはまるで思えないんだが。てゆーか、なんでさっき固まってたんだろ。
フェリは俺の顔を見て、今度はあきれたようにため息をつく。
「ぬしよ。時計を見てみるがよい」
「時計?」
時計なんてしゃれたもん、つけてないので、スマホの電源をつける。特に変わったところはない……いやまて。
「時刻の表示が、止まってる!」
「やっとわかったか」
「スマホが壊れた!」
「違う違う、そうじゃない!」
え、違うの?
フェリは「なんというか、やはり規格外だなぬしは……」と、あきれたのか、感心したのか、それともどちらもなのか、複雑そうな顔をする。
「時間が止められておるのだよ」
「時間? なにそれ」
「時間停止、というすさまじい大魔法だ」
あー……そういや、ばあさんの魔導書のなかにも、あったなそれ。
「え、誰が使ってるの?」
「現実のやからだろう。ほれ、あの変な刑事が言っていたじゃないか。錬能力者」
「あー……逆異世界転生者、だっけ?」
公安の刑事である、たしか、無一郎くん? ってやつが、俺に前に説明してたっけ。
異世界から転生してきたやつらは、現地での記憶と、そして能力を持ってる場合があると。
「じゃあ世界の時間を止めているのも、現実の錬能力者のしわざってわけか」
「うむ、そうだ。しかし誰がやったのかわからぬな」
「うーん……あ」
いやでもおかしいぞ。
「時間が止められてるんだったら、誰も動けないはずだよな? なんで俺やフェリは動けてるんだ?」
「ぬしは、多分魔法を解除する魔法を展開してるのだろう。無意識に」
魔法を解除する魔法……?
「え、そんなの覚えてたっけ、俺?」
「まさかの習得したことすら自覚なし!?」
魔導書を読んで魔法を学習した。
そのとき、俺はスライムの分身を使って、一気に覚えたのだ。
数が多すぎて、いちいち覚えてられないんだよな、自分が何の魔法を習得してるかって。
「時の魔法を使った錬能力者は、不憫だな……。習得した自覚もない魔法で、おのれの特異魔法を打ち破られたのだから……」
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