64.荒野でキャンプ
俺はしばらく人の居ない場所で、活動することにした。
七獄と呼ばれる場所らしい。
カイ・パゴスと呼ばれる国にそれはあるらしい。
俺たちが暮らしていた場所からは、また結構距離があるんだそうだ。
ま、飛べるから距離とかあんまり関係ないんだけどね。
カイ・パゴスはどうやら、普段俺が住んでいる王国から、船や馬車を使って、数ヶ月とかかかる距離らしい。
かなり辺境の土地にあるみたいだ。よきよき。
結構な距離を飛んだ俺たちは、荒野を訪れていた。
「主よ。現実にもどらんのか?」
何もない荒野のなか、俺たちは野営の準備をしていた。
そう、野営なんて、世界扉のある俺には必要ないこと。しかし。
「ま、たまにはいいだろ。キャンプって一度やってみたかったしね」
長野にあるキャンプ用品店で買ったテントだ。
「ほぅ……変わった道具だな。なんだこれは?」
「テントだ」
「ほぅ……天幕か? しかしそれにしては小さい……むむむ……」
フェリがズボッ、とテントの中に体をツッコむ。
『おお! なんだこれは!』
ずぼっ、とフェリが顔だけ出す。
「すごい温かいぞ!」
「冬用のテントだからな」
何もない荒野は、夜になるとものすごく寒くなる。
だがそこはさすが日本の冬用テント。かなり温かいのだ。
しかも……。
「主よ主よ! なんだこれは!」
「寝袋」
フェリは寝袋に体をズボッといれる。尺取り虫のように動かしながら顔を出す。
「これも凄い温かいぞー! すごいなぁ!」
「ああ、現実様々だな」
キャンプグッズって地味に結構高いんだよな。
まあでも、異世界での稼ぎがあるから、あまり金は気にせず使っている。
将来のために貯蓄してるけど、ま、使わなすぎるのももったいないしね。
ってことで、前から興味のあった、キャンプ用品を買ったわけだ。
「現実の連中は色々なものを作るのだなぁ」
「まあこっちと違って争いもなく、平和でやることがないからな」
「ふぅむ……む? 主よ。誰か近づいてくるぞ」
尺取り虫状態のフェリが、ぴんっ、と耳を立てる。
「こんな荒野にか?」
「うむ……三人だな。どうする?」
俺は索敵の力を発動させる。
確かに人を示す点が、マップ上に3つ表示されていた。
だが敵意のない青色の点である。
「敵意はなさそうだし、攻撃はしない」
「ふむ……まあ来たとしても、並の人間は主には手も足も出ぬだろうけどな」
……並の人間ならねえ。
「あーーーーーーーーーーーーー!」
荒野に、少年の声が響き渡る。
フェリがくくくっ、と笑っていた。……俺は、とても嫌な予感がした。
「ししょーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
どどどっ、と足音を立てながら……。
俺に近づいてくるやつがいた。
「なんで君、ここにいるの……? ブレイバ君」
荒野にやってきたのは、今一番会いたくない少年……
勇者ブレイバ君だった。