59.熱烈スカウトされても、ごめんなさい
俺の下にやってきた、公安の刑事、贄川無一郎君。
彼は能力を自覚的に使う超越者(※逆異世界転生者)……【練能力者】だった。
無一郎君が、俺をスカウトしてきたので、俺は断った。
「どど、どうしてどうしてぇ!? だって、官僚だよ? この国を影から守るかっこいい仕事だよ?」
「そういうのちょっと興味ないんで」
国を守るとか、そんな大きなこと、俺のようなぷらぷらしたやつが務まるわけがない。
「じゃ、じゃあお金! 高給取りだよエリート官僚!」
「いやだから、お金ももう十分もってるんだって」
異世界行って適当に狩りしたら、うん百万って金が一瞬で手に入るし。
異世界での金だって、こっちのビー玉とか便利グッズ持っていくだけで億万長者だ。
というか、もう現実でも異世界でも金稼ぎすぎて、お金に対する思いって、社畜時代より希薄になってるんだよね。
これが真の勝ち組の気持ちってやつだろうか。……自分で言ってはずいなそれ。
「やりがいも駄目、お金も駄目となると……ぼ、僕の体でのご奉仕はどうかなっ?」
「いらん」
つーか、一人称とキャラがぶれてるぞこいつ。
まあ、こいつは変身者。
見た目や服装に至るまで、完全に別人になる力がある。
だから、しゃべり方も見た目に合わせて変えてるのかも知れない。
どれが本当の贄川無一郎のキャラなのか、ぱんぴーである俺にはわかりようがないし、興味も無い。
「ど、どうしても……だめぇ?」
「どうしてもだめ」
「特別枠用意するけど……だめ?」
「特別枠なんていらない」
俺が望むのは、自由で気ままな生き方だからな。
組織に縛られるのはいやだし、仕事なんてまっぴらごめんなのだ。
「じゃ、じゃあわかった! こうしよう! 若い婦警さん何人か君の秘書に付けるよ! もちろん、何してもOK!」
「のーさんきゅー」
「あれだ、都会にあるすんごいマンションのワンフロアプレゼント! 一階がショッピングモールになってて便利!」
「転移魔法使えるので必要ないっすね」
というか異世界チート能力があれば、どこだろうと暮らしていける。
むしろ周りに誰も居ない、この長野の山奥に住んでいる方が気が楽だ。
「えーとえーと、車買ってあげる!」
「魔法があればいらない」
「プライベート船!」
「魔法が以下略」
「プライベート飛行機ならどうだ!?」
「魔以下略」
一瞬の静寂があった。
「お願いお願いお願ぁあああああああああああああああああい!」
無一郎君は俺の足にしがみついて、駄々っ子のようにすりすり頬ずりしてきたのだ!
「君ほどの逸材はもう1000年に一人レベルなんだ! そうそう出てくるもんじゃあないんだ! お願いしますから公安に入っておねがいぃいいいいい!」
「断固、断る!」
「そんなぁあああああああああああああああああああああああああ!」
俺のことを堅く掴んで離さない無一郎君。どんだけ俺が欲しいんだよ……。
「じゃあれだ、女の子紹介してあげるよ! うちの娘! 二人ともJKなんだけどこれがまた妻に似て美人で」
「は……?」
い、今不穏なワード言わなかったかこいつ?
「娘、いんの? あんた」
「息子も娘もいるよ。5人!」
「何才だよあんた!」
「そんなことどうでもいいんだよお! 公安に入ってくれるならどっちの娘もプレゼントふぉーゆーだよぉ!」
「娘売るとか最低だなあんた!」
「誰にもあげるわけないだろ! 僕のかわいいかわいいむすめを! どこぞの馬の骨に! でも君だけ特別だから! ね! ね! 入るだけでも良いからお願いぃいいいい!」
……その後も俺の足にしがみついて、お願いお願いされまくった。
めんどくさかったので眠りの魔法をかけて、警視庁の前に放り出しておいたのだった。
この感じだと……またきそうだよなぁ。だるすぎる……。
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