58.エリート官僚になりませんか?(なりません)
俺の家にやってきたのは、ばあさんの弟子という男の娘、贄川無一郎。
無一郎くんはどう見ても女、しかも、十代前半くらいの見た目をしている。
……公安特務課に所属してるって、警察官ってことだろ?
しかも公安ってことは……エリート警察官だ(小並感)。
こんな若い見た目で……すごいな。
俺の家の居間へとやってきた無一郎君。
「改めまして、あたしは公安局公安特務課 贄川 無一郎君です★」
「はあ……どうも。万里ばあちゃんの孫の飯田界人です」
「界人君って、呼んでいい?」
きゃぴきゃぴしたしゃべり方と、キラキラした見た目からだまされそうになる。
だが、男だ。
「コードネームは【変身者】だよ★」
「コードネーム……あー……なんだっけ。分断者みたいな。能力者のあだ名か」
「そうそう★ あたしは変身が得意なの~★ いえーい」
彼が自分の頬に手を触れる。
先ほどまでは、小柄で可愛らしい見た目。
しかし一瞬で、背の高い、白髪の青年へと変身した。
黒スーツにサングラス、そしてトレンチコートを着ている。
……顔、体つき、そして服装に至るまで、彼は一瞬で変身することができるらしい。
こんなとんでも能力を一般人が使えるわけが無い。つまり無一郎君も逆異世界転生者ってことだ。
無一郎君は最初の、男の娘の姿に戻る。
「これが一番きゃわいいもんね★」
「はあそう……で、無一郎君は何しにきたの?」
「そりゃ、もちろん優秀な【練能力者】をスカウトにきたんだよ!」
「れん……のうりょくしゃ……?」
初めて聞く単語だ。
「超越者には二種類存在するの。能力を自覚してる人、能力に無自覚な人」
「能力の……自覚?」
こくんとうなずいて無一郎君が説明する。
「逆異世界転生者って、前世の記憶があるひとと無い人がいるの。記憶がある人は、自分の立場、能力を正確に把握できてる。だから、能力を自在に、自発的に使うことができる。これが【練能力者】。分断者やあたしみたいなタイプね」
逆に……と無一郎君が続ける。
「自分が異世界人の生まれ変わりだって気づいていないで、自分の能力を無自覚に使っている超越者もいるの。そっちは【無能力者】」
「無能力者ってきくと、能力が無いって意味に聞こえるな」
「能力が本当の意味で無いひとは、一般人だから」
なるほど。
「つまり、逆異世界転生者には、転生前の記憶のある練能力者と、記憶の無い無能力者がいるってことか」
「そのとおり! さっすが界人ちゃん! レートSSSの能力者は飲み込みも桁違いね!」
しかし能力者ねえ……。
なんだか世界観が急にファンタジーから離れて来たな。まあでも、元を正せば異世界の能力なんだけどもさ。
「公安としては、君のような超優秀な人材をほっとけないのよ」
「超優秀って……俺が?」
「ええ。なにせ分断者を撃破したんですもの。それに、変身者の変身を見抜いた。すごいことよ」
そう言われてもいまいちピンとこないな……。
まあその分断者さんってやつを見かけたことが無いからだろうけども。
「そこで! 公安のお姉さんから君に提案があります!」
お姉さんって。無一郎君男の子でしょうが。
「君も、高給取りのエリート官僚に、ならないかい!」
「ならん」
「だよね! 官僚って給料はいいし、安定した職業……って、えええええええええええええええええええええええ★」
無一郎君が絶叫する。うるせえ。しかし叫んでるとこ、完全に女の声だな。
変身者の能力だろうけども。
「か、官僚だよ? 試験なしでなれるんだよ?」
「興味ないんでそういうの」
「国家公務員だよ? 安定してるよ?」
「国家権力に縛られたくないんだよね、俺」
そんなぁ~……と無一郎君が半泣きになる。う、だまされんぞ。見た目がいかに可憐でも、だが、男だ。
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