56.流しそうめんで驚かれる
俺は朝起きて、ご飯の準備をする。
「主よー、今日の飯はなんだ~? 吾輩はもう空腹だぞ」
人間姿のフェリが、後ろから台所の様子を見てくる。
「今の時期うまいものだよ。まあお楽しみに」
「ほぅ! ほぅほぅ、たのしみだのー!」
女子高生はまあ寝てるので、今はフェリの分だけで良いか。
俺は台所でそれをゆでる……。まあ、そーめんなんだけども。
ただ食わせるだけだと芸がないか。でも準備するのめんどうだ……っと、そうか。魔法で代わりをすればいいか。
「できたぞー」
俺は台所へ行くと、フェリが正座して待っていた。
「む? なんだ、おけなど用意して」
俺は居間の畳の上に桶を置く。
「これから流しそうめんをする」
「ながしそうめん……なんだそれは?」
「やりゃわかるよ」
空中に水の玉を作る。ふわふわと空中に浮かせて、それを床に置いた桶まで伸ばす。
「フェリ、今からメンをながすからそれを掬って、このつゆにつけて食べろ」
「ぱすたみたいなものか?」
「まあそんなもんだ」
俺はゆでた麺を、水の玉の中に突っ込む。水流を魔法で操作すると、水の橋を通って、メンが落ちていく。
「む! メンが! メンがながれていくぞ!」
「それを取るんだよ」
「ぬわぁあ!」
フェリはまだ箸の使い方に慣れていない。メンはそのまま流れていき、桶の中に入ってしまう。
通常の流しそうめんはこれで終わり。しかし……。しゅん、と桶の中のメンが消えて、水の玉のなかに転移する。
転移魔法を応用したのだ。こうすれば、とれなかったメンが上に戻って、また流れていく。
「またくるぞ!」
「ほらがんばれがんばれ」
流れてくるメンを、フェリがたどたどしくも、箸でキャッチ。
「とれたっ!」
「おー、やるじゃん。それをつゆにつけてちゅるんっと食べるんだ」
「よしよし! ちゅるんだな」
フェリがつゆにめんをいれて、すする。
「ぬぉおおおおおお! 冷たくて、ちゅるんとしてて、おいしぃいい!」
フェリが感激してるのか、尻尾をぶんぶかと振り回す。
「なんだなんだこのおいしすぎる食べ物は!? 冷たくてちゅるんてして、でもでも、たのしくって! こんな不思議な食べ物生まれ初めてだっ!」
「そりゃよかった。ほら、もっと食えー」
「うぉおお!」
魔法を使えば、流しそうめんも楽にできるんだな。
フェリは何度もながしたメンを掴んで、ちゅるちゅると食べては、「うまいー!」と感激してる。
「いやぁ、現実は良いな! 特にめし! 吾輩、この世界、これほどまでに、バリエーションの多い、おいしいものがあふれてるとは!」
にこーっと笑顔を、フェリが俺に向けてきて言う。
「この世界に連れてきてくれて、ありがとうな! 我が主よ!」
まあ喜んでもらえて何よりだし。たかがそーめんにこれだけ驚いてもらえるのは、やって良かったと思ったね。
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