49.勇者、敗北から学ぶ
カイトとの勝負に負けた、勇者ブレイバ。
冒険者ギルドの練習場にて。
彼は膝をついて……己の無力さを痛感させられていた。
(負けた……完璧に……カイトさんに……負けた……!)
カイトとのバトルを思い返す。
彼の放つ剣の技は、明らかに達人のそれだった。
カイトの剣からは、いろんな物が伝わってきた。
そこに込められた武を極めたいという思い(※ない)。
長い修練(※ない)、辛く過酷な戦いの日々(※ない)。
それらが……すべて、あの短い戦いの間に、全部込められていた(※そんなものはない)。
(レベルが……次元が、違いすぎる……! あの人は、全然本気じゃなかった。遥かな高みから、見下ろされていた! 試されていたのだ……)
魔の物達を討つ部隊の、リーダーとして、悔しい思いを抱くブレイバ。
彼が戦う相手は、人間の力が及ばない怪物たち、そしてその親玉。
カイトに勝てないくらいでは、そのさらに上にいる彼らに勝てやしない。
(勇者は……あのお方だ……おれなんかが、勇者を名乗っては……はっ!)
そこで、ブレイバは気づく。
賢者の、言いたいことを。真の意図を(※ない)。
「すごいわ賢者様!」「ぜひ、我らとともに、魔王をたおすたびに参加していただけないかと!」
ブレイバの仲間、カリスとレンゲルが、カイトをスカウトする。
カイトは答えない。なんだか凄く嫌そうな顔をしてる気がするが、それは多分気のせい(※じゃない)。
「ふたりとも……スカウトは、しない。カイトさんは……おれらにこう言ってるんだ」
え? と【三人】が驚く。
「『その程度の実力でおれを仲間に入れるなんて笑止千万。魔王を倒すため、おれを仲間にいれたいんだったら、もっともっと強くなれ……』と!」
……ブレイバは、カイトが自分に、稽古をつけてくれたのだ。
……と、勘違いしたのである。
ほんとは彼の持つ装備一式をもらって、金が欲しかっただけなのだが。
「カイトさん。約束通り、おれの装備は持ってってください」
装備一式を、カイトに渡す。
「いいのか?」
「はい! おれは、あなたのいいつけどおり、ゼロから鍛え直します!」
「お、おう……?」
言いつけも何も、何も言っていないんだが……。
ブレイバのなかで、カイトはもう師匠的ポジションになってる。
勇者を育成する男……すなわち、師匠であると。
「カイトさん……いや師匠!」
「は?」
「ありがとうございました! おれ、頑張って鍛えます! また、会いに来ます! じゃ!」
ブレイバはやる気を取り戻し、その場から走り去る。
かならず、カイトのお眼鏡にかなう、すごい剣士になってやるんだ!
……と勝手にもりあがり、勝手に決意するブレイバなのだった。
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