47.勇者たちから感謝され注目を浴びる
俺は館で朝食を作り、世界扉を使って、王都にやってきた。
フェリを連れて、俺は銀鳳商会のもとへ向かう。
『主よ、何をするのだ?』
「洋式便所作ろうかなって」
『ようしき?』
「現実にあったろ、トイレだよ」
洋館のなかにあるトイレはくみ取り式、しかも和式便所だ。
別にトイレしにいきたいなら、現実へ戻ってすりゃ全然いいんだが。
こっちにいるときその都度、現実に返って便所ってのもめんどうだしな。
「こっちの世界で洋式便所が流行ったら良いなーって思って。掃除スライムと併せて」
『ふーむ……なぜそんなことを?』
「暇つぶし」
俺は現実でも異世界でも、働かなくて全然いい立場にある。
やることがないのだ。だからまあ、やることを自分で見つけて、暇を潰しているのである。
『働かず自分のしたいことをして過ごすなんて、贅沢な暮らしをしてるなぁ、主は』
「まあなー。でもおまえもそんなもんだろ」
『それはたしかに……む?』
ぴくっ、とフェリが耳を動かす。
「どうした?」
『銀鳳のとこで、なにやら騒ぎが起きてるようだな』
「騒ぎ? ケンカか?」
『いや……そういう類いではなさそうだ。なにか有名人でもいるのか、きゃーきゃーとうるさい』
まあケンカじゃないならいいか。
有名人がいようがいまいが、俺には関係ないし。
商業ギルド、銀鳳商会の立派なギルド会館へと到着したのだ……。
「な、なんだぁ……この人混み?」
思った以上に、ギルド会館前には人だかりができていた。
「勇者様がいるらしい!」「ええー!? うそー!」「握手してくれないかしらー!?」
……勇者?
「そんなのいるのか?」
『しらん』
「おまえ知ってることと知らないことの差がはげしいな」
『吾輩は主と同様、真の強者だからな。自分の興味あることしかしらんし、やらん』
フェリは生きていくうえで、情報収集を必要としない立場にいるのだろう。
まあ今の俺もそうなんだけども。
「勇者かーどんなんだろう。やっぱ魔王とかたおしたりするのかな」
ほんのちょっと興味が出てきた。
……が、この人だかりは少々邪魔だなぁ。
「偉大なる賢者様! 賢者様ではございませんかっ!」
誰かがそう言う。賢者ぁ……?
勇者の次は賢者か。
そんなやつまでいるのか。まるでロープレみたいだな。
「賢者様ーーーーーーー!」
「って、うぉお!」
民衆の頭を飛び越えて……そいつはやってきた。
俺に抱きついてくるその子は……。
「君は、いつぞやの……」
「ブレイバです! 覚えててくれて光栄です!」
ああ、あれだ。
百均ナイフ(魔法付与)をあげた、駆け出し冒険者だ。
「元気やってるかい?」
「はい! 賢者様のおかげで!」
そうかそうか……って、え?
「賢者……? 誰?」
「あなた様を置いてほかにいないかと!」
はぁー……? 俺が賢者だぁ……?
ブレイバ君は俺から降りて、その場で頭を深々と下げる。
「こないだは命を助けてくれてありがとうございました! また、あのような素晴らしい武器を譲っていただき、感謝しております!」
ブレイバ君が頭を下げる。
そういや、あのときなんかモンスターから彼らを守ったな。
「どういうこと?」「勇者様が頭を下げてるだと?」「勇者様が敬意を払う賢者とはいったい……?」
……え?
「ぶ、ブレイバ君?」
「はい!」
「君……勇者だったの?」
「はいっ!!!!!」
え、ええー……まじ……。
「あんな弱いのに……?」
蛇ごときに負けようとしていたもんな。 すると周りの人たちが……ざわつく。
「勇者様を弱いですって?」「最強の勇者様が弱いわけないだろっ!」「そうだふざけんな!」
オーディエンスが怒り出す。
え、ええー……なにこれ。
するとブレイバ君が、必要ないのに反論する。
「おれは弱いです! 賢者様はおれの、何百倍も強くて凄いです!」
「「「なにぃいいいいいいいいい!?」」」
ああ……やめてくれ……。
注目なんてあびたくないのに。
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