45.異世界で朝食を
掃除スライムを開発したその日の夜。
俺は異世界で一泊することにした。
理由は……まあ、エルフ奴隷のイージスが発情したからだ。
イージスは性奴隷であり、ご主人様(俺のこと)を喜ばせるため、定期的に強制発情するように呪いがかかっているのである。
「ふぁー……よく寝たぁ」
スマホで時刻を確かめると、10時。遅い起床だ。
社畜時代だったらもうとんでもなく怒られていただろう。
しかし俺は10時に起きようが問題ない。
会社に通わず、自由な暮らしをしているから、どれだけ寝坊してもいいのだ。
「楽だわ……」
俺の隣でイージスが死んでいる。いや、気絶している。
白目をむいて、体中をいろんな液体で汚してる。
『やっと起きたか主よ』
「フェリ」
部屋の隅で丸くなっていたフェリが、くわー……と大きなあくびをする。
『吾輩は腹が減ったぞ』
「わるいな。遅い朝食にしよう」
俺は服を身につける。その間に、掃除スライムがゆっくりと近づいてきて、イージスの身体にまとわりつく。
汚れたあれやれこれやを、食って、きれいにしている。
「便利だわー」
ルンバより便利かもしれない。汚れた洗濯物を食って、きれいにして、吐き出してくれる。
また汚れた身体にまとわりついて、きれいにしてくれる。
俺は食堂へと移動。
『毎度のことながら、主はベッドの上でも最強だな。あの気の強いエルフを、一発で発情期の雌猫にしてしまう』
「いや表現……別に普通だろ。なんか妙にイージスが弱いっていうか」
前にも考察したことがあるが、こっちの人は異世界より情報網が発達していない。
つまりは、ぐぐったりAVを見たりして、セックスのやり方を学ぶみたいなことができない。
ゆえに、いろいろ未熟なのだ。
前戯知らなかったしな。
『それと主のあそこがでかいのもあるだろうて』
どうやらこの異世界は、栄養状態が悪いからか、みんな男のあれがそんなにでかくないらしい。
それもまた、イージスをボコボコにできる秘訣といえた。
食堂へ行き、俺はアイテムボックスからカセットコンロとホットサンドプレスを取り出す。
食パンと野菜、ハムなどで、適当なホットサンドを作った。
がつがつ! とフェリが俺の作ったホットサンドを、猛烈な勢いでほおばっていく。
そこへ……。
「…………」
「よう、イージス。おはよう」
ふらふらとした足取りで、イージスが近づいてきた。
俺と目が合うと、かぁ……と顔を真っ赤にする。昨日のこともあって、照れてるんだろうな。可愛いとこあるよねこいつ。
「飯食うか?」
「……き、貴様の施しなど、だ、誰が受け……」
ぐぅ~~~~~~~~~~……………………。
さらに、イージスの顔が赤くなる。
まー、昨日あんだけやりまくったら、そら体力が消費されて、腹も減るわな。
「いいから食べな。ほら、ホットサンド」
適当に焼いて作ったホットサンドを、イージスの前に出す。
彼女は不審がりながらも、パンを一口……。
さくっ……!
「!?!?!??!?!?!?!?!?」
目玉が飛び出るんじゃないかってくらい、イージスが大きく目を見開く。
しゃくしゃくしゃく! と猛烈な勢いで掻き込む。
「げほげほ!」
「ほら、コーヒー」
向こうで作って、魔法瓶につっこみ、アイテムボックスに入れておいたのだ。
イージスはコーヒーを飲んで……。
「なんだこれはぁああああああああああああああああああ!?」
昨日の夜並に大きな声を出して、驚きを表現するイージス。
「なんだこれは!? こんなの生まれてはじめてだぞ!?」
「コーヒーって飲んだことない?」
「いや、あるが……こんな美味いコーヒーははじめてだ……というか! なんだこれは! この食べ物は!?」
「? 普通のホットサンドだけど……」
なにかおかしいだろうか……?
「こんな……柔らかく、甘いパンなど……人生で一度も食ったことない」
「え、そうなの?」
「ああ……普通パンといえば、堅くて苦いものだ。しかし……これは……うますぎる……なんだ……これは……」
じゅる……とイージスがよだれをたらす。
長く生きてるエルフが、そんな子供っぽい仕草をしてて、なんだかおかしかった。
「おかわりは?」
「ほ……!」
「ほ?」
うぐぐ……ぐぬぬ……とイージスが口ごもる。
にやーっとフェリが意地の悪い笑みを浮かべながら言う。
『どうやらこの長耳はいらぬようだ。吾輩が全部食べて……』
「いらぬとは言ってないだろ! ほ、ほしい……ほしい! もっと、食べたい……!」
ただのホットサンドで、こんだけ喜んでくれるんだ。作ったかいがあったってもんだな。