39.勇者に100均ナイフをプレゼントする
森の中で、冒険者のパーティと出会った。
モンスターに襲われていたので、100均ナイフをペイッとなげた。
その結果、モンスターを倒すに至ったのだった。
「す、すごい……あのバジリスクを一撃で……」
リーダーらしき男が呆然とつぶやく。
俺はいちおう言っておく。
「すまなかったな」
「え?」
「ほら、おまえらの獲物を、横取りするような形になっちまったろ?」
まあ緊急事態だったとは言え、横から勝手に割って入ったのは事実だ。
すると男が慌てて首を振る。
「謝らないでください! むしろ、おれたちのほうこそすみませんでした! ご迷惑をおかけして」
「迷惑? いや、迷惑なんて全然感じていないんだが……」
適当にナイフをぶん投げたら倒しちゃっただけだし。
「あの……」
シスター服の女の子が、俺に近づいてくる。
その手には俺のナイフが乗っていた。
どうやら拾ってくれたようだ。
「あんがと」
「いえ……」
すると仲間の魔法使いらしき少女が、じっ、とナイフを見つめていた。
「ねえ、ブレイバ」
リーダーらしき剣士の彼が、ブレイバっていう名前らしい。
「このナイフ……やばいわ。伝説級の武器よ」
「なっ!? なんだって……!」
確かに俺の鑑定スキルで見たところ、Sランクくらいの価値はあったけれども。
「たしかに……バジリスクを一撃で倒した……ものすごい武器だ」
そういや実戦で使ったところを目の当たりにしてるんだよなこの子。
「まー、何はともあれ無事で良かった。じゃ、俺はここで」
「ま、待ってください! おじさん!」
ブレイバが俺を呼び止める。
おじさんて。まあ、この子よりは年上だろうけど。おじさんって……。
まあいいか。
「なんだい?」
「よろしければ、そのナイフ……売っていただけないでしょうか」
「お、欲しいの?」
「はい! ぜひ!」
ふぅむ……もともとは銀鳳の連中に売りつけようって思ったんだがな。
別に売るのはどこでも良い。つーか、別に儲けようなんてはなから思っちゃいないからな。
「別にいいけど、いくらくらい出せるの?」
「う……あまり手持ちに余裕はないんで……交渉できたらなと」
まあ、見たところ若そうだしな、こいつ。
若いのに冒険者なんてやってるんだ、さぞ苦労してるんだろう。
なんかかわいそうに思えたな。
「いいよ。あげる」
「は……!? い、い、今……なんて?」
「だから、やるよ。そのナイフ」
どうせ100均で買ったナイフで、適当に性能強化しただけの、お手軽な武器だしな。試作品だし、加減ができていないし。
「い、いやいや! 何言ってるんですか!? バジリスクを一撃で倒せる武器なんですよ!?」
「いいよ。別に」
てゆーか武器なんてなくても、あれくらいだったら一撃で倒せそうだったしな。
「苦労してるんだろ、おまえら」
「! わ、わかるんですか……」
「ああ、わかるよ」
俺もいろいろあって、若い頃から苦労していたからな。
親元を若くして離れて、こんな危ないことをやってる若者に、自分を重ねてしまったのだ。
「上手く使いな、それ」
「ああ……なんて……なんて……やさしいおかたなんだ! ありがとうございます!」
ばっ、と頭を下げるブレイバ。
後輩みたいで可愛いな。
「これもやるよ」
俺は状態異常無効化の魔法が付与された指輪を、シスターちゃんに。
魔法使いちゃんには、光魔法を付与したビー玉をプレゼントした。
「こ、これは……!」「す、すごいわ……!」
まあブレイバくん一人にあげると、不公平感あるからな。
「そんじゃ、頑張れ青少年たち」
俺はフェリの背中の上に乗って、ふわりと飛び上がる。
三人は俺に対して、深々と頭を下げていた。
「ありがとうございます! このご恩は、一生忘れません!」
いやいや、一生って。大げさだなぁ。ま、でも悪い気はしないな。
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