21.露天風呂作った
現実に戻ってきている俺、飯山界人。
異世界チートを手に入れ、もう働かなくて済むようになった俺は、のんびり余生を過ごすことにした。
この日は昼に起きて、露天風呂につかっている。
「ふぅ……」
俺がいるのは長野の山奥。別荘地帯、しかも過疎ってるからか、周りには人の気配が全くない。
ばあさんの所有するデカい館の庭にて、俺はゆっくりと風呂につかっていた。
「ありゃ? 界人サン」
「ん? おお、なぎ。どうした?」
マンガ編集時代に担当していた、漫画家の南木曽なぎがやってくる。
ホットパンツにタンクトップという、いつもラフな格好の女だ。
「露天風呂なんてありましたっけ?」
「いや、俺が作った」
「作った?」
「ああ。ばあさんの書庫にあった魔導書で修得した、【万物創造】って魔法で」
■万物創造(SSS):魔力を99%消費することで、あらゆる物を創造することが可能。
「な、なんすかそれ……! もう神じゃねーっすか!!!!」
「だよなぁ……」
俺が露天風呂欲しいなぁって念じただけで、庭にこんな立派な露天風呂が、苦労せず作ることができたんだから。
ゼロから物を創造する、まさに神の魔法といえた。
「はえ~……界人サン、それがあればマジなんでもできるじゃねーっすか。油田ほしいっていえば手に入るだろうし」
「だろうな。やらんけど」
「どうして?」
「前にも言ったろ、めんどくさいことは避けるって」
俺はばあさんの家で世界扉、そして異世界チートを手に入れて、誓ったのだ。
この力は悪用しない。そして、英雄にはならないって。
「油田なんて作った日には、確かに大金持ちになれるだろうけど、それを狙ってゴタゴタが絶対に発生するだろ?」
「まあ……そりゃ」
「だからやらない。悪用しない範囲で、俺が楽しめればいいかなって」
なるほど……となぎがうなずく。
「色々考えてるんすね」
「そりゃね。おまえは何しに来たんだ?」
「別に、愛する界人サンに会うのに理由なんていらねーっしょ♡」
うれしいこと言ってくれる。
この子はどうやら俺のこと好き、というかラブらしい。
でも俺はどうすればいいのか、答えが出ないままでいた。
好意に応えるのは簡単だ。俺もなぎのことを好ましく思ってるし。
でもここで付き合ってもいいものかと悩む自分がいる。
だってこの子はまだ18で、未来があって、将来有望だ。
俺のようなアーリーリタイアした世捨て人と一緒になってしまうのは、どうだろうかって。
彼女の作品を待ってる人たちを失望させてしまうんじゃあないかと。
「よいしょぬぎぬぎ」
「おまえなにやってんだ……?」
「混浴っす♡ とうっ!」
ぽんぽんと服を脱いで俺の隣にダイブしてくる。
スキル明鏡止水がなきゃ、動揺してたな。
「んぁ……♡ はぁあああ……♡」
なんか急になぎが色っぽくあえいでいた。
スキル明鏡止水のおかげで、動揺しなかったが。
「どうした?」
「界人さん、これまじ……やばい……♡ 天国にいるみたい……♡」
「そうか?」
「はいっすぅ~……♡ 体の疲れが一気に吹っ飛んで……♡ あれ? あれぇ!」
ぎょっ、となぎが目を剥く。
「どうした?」
「め、目が! 視力が回復してるっす!」
「視力が……ああ、おまえ眼鏡かけてたもんな」
漫画家は目を酷使するからか、なぎは最初にあったときから眼鏡をかけていた。
今は風呂に入ってて眼鏡を外してるが……。
「す、すげえ……! 視力まで回復するなんて! 界人サン! この温泉やばすぎっす!」
「ふーん」
「万物創造なんてゆーすげえ魔法で作ったからか、魔法の力が付与されてんすかね。それか賢者が魔法を使って、力がブーストされてるのかも……」
「へー」
じとーっとなぎが俺を半眼で見てくる。
「なに?」
「自分の力に興味ないんすか?」
「まあな。便利だなーってくらいにしか思ってない」
「……もっと、自分のやってること、すげえって自覚してくださいよ」
「なんで? 別に目立ちたいわけでも、活躍したいわけでもないんから、別にいらないだろ自覚とか」
なぎがハァ~……とため息をつく。
「てゆーか、万物創造まじでやばいっすね。こんな超チートアイテムばんばん作れるなら、世界のルールすら変えられるかも」
「でもやらねえよ」
「目立つから?」
「それもあるけど、万物創造って魔力を99%使うからな。魔力って減ると体だるくなるし、一気に減ると頭痛がやばいんだよ」
この温泉作ったとき、猛烈な頭痛にさいなまれた。
「便利ではあるんだが、あの頭痛はいかんともしがたい。使うたびにあんな痛い思いするなら、そんな頻繁に使う気もない」
いくら魔力が寝れば回復するからといって、あの痛い思いを何度もするのはちょっとな。
「はえー……もったいない」
「そうか?」
「そっすよぉ、こんだけの力があれば、現実でも異世界でも無双できるのにっ。うらやましいっす! あたしが欲しいくらいっす」
っていわれても、この力……というかまれびとの称号と世界扉は、世界でただ一人俺しか使えない(持てない)ものだから。
「はぁ~……いいなぁ~……」
「おまえ魔法の修得の方はどうなってんの?」
確かばあさんの魔導書を読んで、修得を頑張ってるはずだった。
「全然っす。結構頑張って読んでるのに、まだ1冊も読み切れないし」
「へえ、そりゃがんばれ」
「うう~……界人サンはてきとーにペラペラめくっただけであっさり覚えられてたのに~~~~~……はぁ~……いいなぁ~」
「まあまあ、焦らないこったな」
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